【コラム】新型コロナウイルスのインドネシア企業への打撃と雇用状況
インドネシアでは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、各自治体で「大規模な社会的規制(PSBB)」と発動し、人々や企業の活動を制限しました。
参考コラム:
PSBBには“職場の休止”も含まれ、PSBB導入地域の多く企業はテレワークを導入しました(但し、国軍、食料品、石油燃料関係、医療サービス、金融関係、通信、製造業、輸出入、輸送及びその他の社会的サービスは除外されます)。
これにより、インドネシアの人々個人はもちろん、企業も新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。
コロナの影響でインドネシアの経済パフォーマンスは低下しており、2020年第一四半期の経済成長率は2.97%、第二四半期の経済成長率は前年比マイナス5.32%と報じられています。
インドネシア中央統計局(BPS)が今年7月に実施した調査によると、インドネシア国内の80%以上の企業が、コロナ感染拡大によって売上が減少したと回答しています。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
企業の規模別でみると、大企業よりも中小企業の方が業績が悪化したと回答した企業が多いですが、それでも大企業・中小企業のいずれも80%以上がコロナにより業績悪化しています。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
また、インドネシアの大企業、中小企業のいずれも、半数以上がコロナにより財政面で困難に陥っていると回答しました。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
また、コロナにより業績が悪化したと回答した企業の割合を業界別でみると以下の通りです。
最も影響が大きい | 最も影響が少ない | ||
宿泊、飲食 | 92.47% | 水道・廃棄物処理 | 68.00% |
その他サービス | 90.90% | 電力・ガス | 67.85% |
交通、倉庫 | 90.34% | 不動産 | 59.15% |
インドネシアでは宿泊、飲食業が最もコロナにより打撃を受けていることが分かります。
「業績が悪化した」と回答した企業の割合が最も少なかった不動産業でも、6割近くが売上減となっています。
以下は、コロナ禍で業績が悪化したと回答した企業の割合が最も多い州です。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
バリは世界的にも有数の観光地であるため、コロナにより観光業が大変な打撃を受けています。
バリに次いで、ジャワ島内のジョグジャカルタ、首都ジャカルタ、ジャカルタに隣接するバンテン州が業績悪化した企業が多い州となっています。
インドネシアの企業の稼働状態と雇用
では、インドネシアの企業はこのようなコロナによる業績悪化に陥る中、雇用や営業でどのような調整や対策を行っているのでしょうか?
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
コロナ禍でインドネシアの1割程度の企業が営業停止を与儀なくされていますが、それ以外の企業は、労働時間や雇用の調整を行いながらコロナ禍でも営業を継続しています。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
(※各州のコロナ感染者数は2020年8月14日時点の人数です)
インドネシアの首都ジャカルタは、PSBBの適用期間が長かったため、通常営業を行う企業の割合が特に少なくなっていると考えられます。
では、業界別にみると、コロナ禍で通常営業を続けた企業はどのくらいの割合だったのでしょうか?
インドネシアの業界別にみたコロナ禍でも通常営業を続ける企業の割合
業界 | 割合 | 業界 | 割合 |
水道・廃棄物処理 | 77.86% | サービス | 49.45% |
農業・畜産業 | 76.63% | 交通・倉庫 | 58.75% |
不動産業 | 76.54% | 情報通信 | 58.29% |
電機・ガス | 73.56% | 宿泊、飲食 | 51.91% |
貿易、自動車修理 | 69.06% | その他サービス | 50.50% |
鉱業・掘削 | 66.91% | 加工業 | 49.42% |
金融 | 66.33% | 建設 | 47.81% |
医療・保険 | 64.53% | 教育 | 27.29% |
インドネシアでコロナ禍でも通常営業を行っていた業界は水道・廃棄物処理関係でした。
一方教育関連の企業は、コロナ禍によってなんらかの調整を行いながら対応した企業の割合が最も多いという結果となりました。
コロナ禍でも通常営業を続けていると回答した企業の従業員数の増減は以下の通りです。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」
より弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
また、コロナ禍でも通常通り営業していると回答したインドネシア企業は、従業員の雇用について以下のような調整を行っています。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
上述の通り、インドネシアでは従業員を短期で一時解雇したという企業も少なくなく、そのような対策をとったと答えた企業は以下の通りでした。
従業員の一時解雇を行った業界
最も多い | 最も少ない | ||
加工業 | 18.69% | 水道・廃棄物処理 | 6.51% |
建設 | 18.59% | 金融 | 5.69% |
宿泊、飲食 | 17.63% | 電力・ガス | 4.96% |
インドネシアでは、新型コロナウイルスのパンデミックは長く続かないという楽観的な見方から、解雇ではなく一時解雇をした企業が多いと見られています。
従業員の総数は変わらない企業が多数でしたが、実際に勤務する人数(勤務体制)についてはどうでしょうか?
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
グラフの通り、勤務人数についても、コロナ以前と変わりないと回答した企業が過半数以上でした。
しかしながら、約36%の企業が、労働時間を少なくしたり、自宅待機などによって実際に勤務する人数はコロナ以前より少なくなっていると回答しています。
企業の規模で比較すると、中小企業よりも大企業の方がコロナ禍での勤務人数を調整して少なくしている割合が多くなっています。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、「Analisis Hasil Survei Dampak COVID-19 terhadap Pelaku Usaha(企業へのCOVID-19の影響」より
弊社作成(閲覧日:2020年9月16日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/09/15/9efe2fbda7d674c09ffd0978/analisis-hasil-survei-dampak-covid-19-terhadap-pelaku-usaha.html
業界別でみると以下の通りです。
コロナ禍で勤務人数を減らした業界とその割合
最も多い | 最も少ない | ||
加工業 | 52.23% | 水道・廃棄物処理 | 18.79% |
建設 | 51.37% | 金融 | 18.26% |
宿泊、飲食 | 50.52% | 電力・ガス | 15.30% |
いかがでしょうか。
多くの企業がコロナによる打撃を受けながらも、インドネシアの企業は従業員の雇用を守る努力をしているところも多く、できるだけ解雇をしないよう以下のような対策を行っています。
しかしながら、インドネシア労働省によると、コロナ感染拡大の影響により今年7月時点で350万人以上が解雇(一時解雇含む)もしくは自宅待機を与儀なくされているのが現状です。
インドネシアの首都ジャカルタでは、コロナ感染者数が一向に減少せず、医療崩壊が起きつつあることから、すでに規制を緩和していたPSBBを再度厳しく導入さることとなりました。
実施期間は9月14日から2週間の予定ですが、1日当たりの感染者数が増加傾向にあるため2週間のPSBBで急激に感染者数を減少させるのは難しいと見られており、場合によっては延長の可能性も多いにあると考えられます。
インドネシア財務省は、このPSBBの再導入により、2020年の経済成長率は縮小の可能性が大きくなるとみています。
また、PSBBの継続により、引き続きインドネシア現地への渡航は制限されますので、調査やヒアリングについてもオンラインでの実施をおすすめしております。
弊社では、コロナ禍でのオンラインヒアリング代行や調査を承っておりますので、ご興味がある方はぜひ
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