【コラム】インドネシアにおける飲料水へのアクセス状況と課題

日本は世界的に見ても降水量が多く水が豊かな国と言われており、水道水の安全性も高く安心して水道水を飲むことができます。

一方、インドネシアではまだまだ安全な水へのアクセスには課題があり、水道水や井戸水などに大腸菌などの細菌が入っていることもあり水の安全性が高いとは言い難く、多くの人がボトルやウォーターサーバーなどを利用しています。

今回のコラムではインドネシアの水事情についてご紹介していきます。

 

インドネシアにおける飲料水の供給元

厚生労働省のデータによると、日本の水道普及率は約98%と、殆どの家庭で水道水が利用されています。

参考: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/database/kihon/index.html

 

しかしインドネシアでは、水道会社から供給される水の利用は僅か26%と非常に少なく、その他の飲料水源として、地下水・井戸水・ボトル水などが挙げられます。

下図は、インドネシアにおける飲料水の供給源比率を示しています。

日本とは異なり、水道管・地下水・ボトル水(ウォーターサーバーやガロンで販売されているイシウラン水などを含む)・井戸水と供給源の割合が分散していることが分かります。

 

出典:Persentase Rumah Tangga Menurut Sumber Air Minumを基に弊社作成(閲覧日:2021年3月4日)
https://brebeskab.bps.go.id/indicator/29/283/1/persentase-rumah-tangga-menurut-sumber-air-minum-.html

 

2016年に東ジャワのモジョクルト地区では井戸水の60%が廃棄物で汚染されていたことが明らかになるなど、日常的にインドネシアの人々が生活水として利用している井戸水や地下水にも安全性に疑問があるケースも多いのが現状です。

実際、ボトル水以外の水は大腸菌などの菌が入っていることも多く、井戸水や地下水などを利用する人々は一度煮沸してから利用するのが一般的です。

参照:https://www.alodokter.com/belum-cukup-hanya-dengan-merebus-air

インドネシアにおける飲用に適切な水の供給

インドネシアにおける安全な飲料水の供給は、1945年に発令された憲法第33条で保障されており、インドネシア政府が取り組むべき公共サービスのひとつとして定められています。

本コラムでは、”適切な飲料水”とは、廃棄物処理場より10m以上離れた場所にある水道管、地下水、井戸水、雨水から得られる飲料水と定義し紹介していきます(インドネシア中央統計局による定義)。

インドネシアで適切な飲料水にアクセスできる世帯の割合の推移は下図の通りです。

出典:Persentase Rumah Tangga Yang Memiliki Akses Terhadap Layanan Sumber Air Minum Layakを基に弊社作成(閲覧日:2021年3月3日)
https://www.bps.go.id/indicator/23/1554/1/persentase-rumah-tangga-yang-memiliki-akses-terhadap-layanan-sumber-air-minum-layak-dan-berkelanjutan-40-bawah-menurut-provinsi.html

 

2016年時点で適切な飲料水へアクセスできる世帯の割合は、全世帯の61%に過ぎませんでしたが、2019年には84%の人々がアクセスできるようになりました。

下図は、適切な飲料水にアクセスできる世帯の割合の上位5地域を示しています。

出典:Persentase Rumah Tangga Yang Memiliki Akses Terhadap Layanan Sumber Air Minum Layak Dan Berkelanjutan
(40% Bawah), Menurut Provinsi (Persen), 2017-2019を基に弊社作成
(閲覧日:2021年3月3日)
https://www.bps.go.id/indicator/23/1554/1/persentase-rumah-tangga-yang-memiliki-akses-terhadap-layanan-sumber-air-minum-layak-dan-berkelanjutan-40-bawah-menurut-provinsi.html

 

地域別に見てみると、ジャカルタでは2019年時点で99%と殆どの世帯が適切な飲料水にアクセスできることが分かります。

ジャカルタに続き、バリ・東ヌサトゥンガラ・東ジャワ・ジョグジャカルタにおいても90%以上の割合で安全な飲料水にアクセスが可能となっています。

また、大都市や観光地が上位に入っている傾向にあることも分かります。

一方で、適切な飲料水にアクセスできる世帯の割合の下位5地域は下図の通りです。

 

出典:Persentase Rumah Tangga Yang Memiliki Akses Terhadap Layanan Sumber Air Minum Layak Dan Berkelanjutan
(40% Bawah), Menurut Provinsi (Persen), 2017-2019を基に弊社作成(閲覧日:2021年3月3日)
https://www.bps.go.id/indicator/23/1554/1/persentase-rumah-tangga-yang-memiliki-akses-terhadap-layanan-sumber-air-minum-layak-dan-berkelanjutan-40-bawah-menurut-provinsi.html

 

上位地域に比べ、比較的発展が進んでいない地域が多く最下位のブンクルにおいては50%を切っていることが分かります。

2つの図から、インドネシア国内でも地域によって大きな差があることが読み取れます。

参考: https://tirto.id/bagaimana-mutu-dan-akses-air-bersih-di-indonesia-cGrk

インドネシアにおける河川の水質汚染の問題

インドネシアでは、近年の急速な経済発展に伴い河川の水質汚染が問題になっています。

インドネシアにある450の河川のうち118の河川が汚染されており、その中でも52の河川の汚染が特に酷いことが明らかになっています。

2013年〜2015年の間、ジャカルタの中心部を流れるチリウン(Ciliwung)川が特に酷く汚染され、井戸水を利用するジャカルタの人々の生活に影響を及ぼしました。

また、西ジャワ州のチタムル(Citarum)川とカリマンタン州のカリマンタン(Kalimantan)川に至っては、家庭ゴミや有害薬品、動物の糞などが川に捨てられ、「世界で最も汚染された川」とも呼ばれ、川の周辺に住む人々の健康を脅かしています。

安全な飲料水にアクセスできる世帯の割合は年々増加しているものの、河川の水質汚染という根本的な問題があることが分かります。

河川の水質汚染が進むと、飲料水の供給源として井戸水や地下水を利用していた人々は供給源を失い、ボトル水・水道管からの飲料水の供給が必要になります。

今後、水の供給源不足にならないためにも、インドネシア政府は水道インフラを整え農村部と都市部の両方で水道会社を通して水を提供できるよう取り組みを行なっています。

参考:https://www.suara.com/health/2018/11/23/162639/ada-334-juta-penduduk-indonesia-kekurangan-air-bersih?page=all

 

インドネシアにおいて“適切な飲料水”と定義されていても大腸菌やバクテリアが混入しているケースも珍しくなく、日本の基準からすると決して安全、適切と言い難い状況です。

水道インフラが整うことで、インドネシアの人々の健康や安心に繋がると考えられますが、まだまだ課題は多く、日本のように煮沸せず全ての人が安全なボトル水や水道水を利用できるようになるまでには長い歳月が掛かりそうです。

弊社では様々な分野で調査やオンラインでのインタビューなどを行なっております。

ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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