【コラム】インドネシアにおける鶏肉の流通とその特徴

依然として鶏肉の消費量、生産量が高いインドネシアにおいて、今回のコラムでは「鶏肉の流通経路」についてご説明します。

なかなかイメージしづらい部分もあるため、日本における鶏肉流通との比較をしながら、インドネシアの鶏肉の流通にはどのような特徴があるのかについて、特に鶏肉の中でもブロイラーに焦点を当てていきます。

 

インドネシアにおけるブロイラーの位置付け

以下はインドネシアにおける鶏肉の生産量の推移です。グラフの通り、生産量は年々増加傾向にあります。

出典;インドネシア中央統計庁”Broiler Meat Production by Province (Tons), 2008-2010””Native Chicken Meat Production by Province (Tons),
2008-2010”を基に弊社作成(閲覧日:2020年11月5日)
https://www.bps.go.id/indicator/24/488/1/broiler-meat-production-by-province.html
https://www.bps.go.id/indicator/24/486/1/native-chicken-meat-production-by-province.html

2019年におけるインドネシアの家禽生産量はブロイラーが約3.5億トン、地鶏が約3,000万トンとなっており、割合で表すとおよそ91.5%がブロイラー、8.5%が地鶏となっています。

ブロイラーの生産量は年々増加傾向にあり、その背景にはインドネシアの人口増加や国民所得の拡大などが考えられます。

その他インドネシアの鶏肉に関する情報は以下のコラムでも紹介していますので、ぜひご覧ください。

 

インドネシアにおける鶏肉流通

インドネシアにおいて、鶏肉は一般的に以下のような流通経路で消費者の元に届けられています。

出典;インドネシアのブロイラー産業の動向〜日本への輸出の可能性〜、Indonesia’s Poultry Value Chainを基に弊社作成(閲覧日:2020年11月5日)
https://pdf.usaid.gov/pdf_docs/pbaaa047.pdf
https://www.alic.go.jp/content/000150762.pdf

イスラム教徒が国民の約9割を占めるインドネシアでは鶏の屠殺方法に以下のような特徴があります。

・イスラム教徒ないし啓典の民と呼ばれるユダヤ教徒、キリスト教徒が屠殺すること

・鋭利なナイフを使用し、可能な限り鶏に苦しみを与えない屠殺方法をとること

・「ビスミッラー(アッラーの御名において)」と唱えながら屠殺すること

・食道、喉、2本の血管(頸動脈、頸静脈)の全てを切断またはそのうち3つを切断すること

高温のお湯に鶏をくぐらせることでその後の羽をとる工程が簡単になるそうです。

また、インドネシア国民は多くの場合パサール(Pasar)と呼ばれる伝統的な市場で鶏肉を購入することが多く、新鮮さを重要視する彼らはパサールにおいてその場で生きている鶏を屠殺してもらい、丸鶏のまま購入することも多くあるようです。

コールドチェーンを使用した物流は徐々にインドネシアでも普及し始めていますが、その需給バランスはまだまだ整っていません。

またスーパーマーケットなどの例外はありますが、パサールでは鶏肉が常温で販売されていることがよくあります。詳しくは下記のコラムを参照ください。

日本における鶏肉流通

日本において鶏肉は一般的に以下のように私たちの元に届けられています。

出典;財団法人日本食肉消費総合センター「養鶏農家から食卓まで〜発見!お肉の安全・安心〜」を基に弊社作成(閲覧日:2020年11月5日)
http://www.jmi.or.jp/common/download.php/Chicken%20養鶏農家から食卓まで.pdf?id=OTU%3D

 

衛生管理に厳しい日本では、新しくヒナを入れる前に農場内全体に石灰を散布し消毒を行います。

鶏舎もおよそ半月何度も消毒・乾燥を繰り返して衛生的な状態に整えることが必要となっています。

これにより、感染症などといった病に鶏が感染すること、そしてその感染が拡大することを防ぎます。

また、ヒナを育成する鶏舎はヒナを育てるのに適切な温度に管理されており、細菌やウイルスが持ち込まれないように鶏舎には部外者立ち入り禁止となっています。

育成期間には家畜保健衛生所などの第三者視点の検査も定期的に行われています。

日本では、鶏の解体時には人の手ではなく、ロボットや機械などを使用することが主流となっています。

殺菌には次亜塩素酸ソーダが使用されており、鶏肉を部位ごとに包装する際にはロットごとに番号をつけることで出荷後もロット番号を辿ればどこから搬入された鶏なのかが分かる仕組みを導入しています。

 

インテグレーション流通

日本のみならず、インドネシアにおいても、近年では従来の流通方法と比較して生産性の高さや資本回転率の高さからインテグレーション流通が主流となっています。インテグレーションとは、直営農場を経営したり、販売も大手スーパーと販売契約するなど、生産、解体、販売の各段階の一部または全部を、同一資本が系列化し統合している状態を指します。

日本ではブロイラーの飼料を供給する飼料会社がブロイラーの生産・流通の新しい担い手として生産から加工、販売までを一貫して行っていることが多く、インドネシアではインテグレーター自らがブロイラー農場を所有し、ブロイラー農家と契約を行い、農家への技術的なアドバイスとともに、飼料や資材などの供給や成長した鶏肉の捕獲、市場への配送などを手配することで総合的にブロイラーの生産・流通を行っています。インドネシアで有名なインテグレーターとしては飼料会社のCharoen Pokphand IndonesiaやJapfa Comfeed、MALINDOが挙げられます。

 

インドネシアと日本の相違点

①ブロイラーの相場に関して

日本とインドネシアはそもそも物価が異なるという点も考慮が必要ではありますが、全国食鳥新聞社の日本経済新聞掲載荷受相場表(東京)によれば、2020年10月19日〜24日における週間平均相場はもも肉635.6円/キロ、むね肉293.2円/キロとなっています。(https://www.shokucho.co.jp/original4.html

一方インドネシアは2018年時点、鶏肉の相場は34,638ルピア/キロ(日本円で約250円弱)となっています。

また、日本とインドネシア双方においてブロイラーよりも地鶏の方が高価となっており、ブロイラーと比較して地鶏の価格は日本では約3〜4倍、インドネシアでは約2倍となっています。

 

②養鶏用飼料に関して

飼料に関してですが、1羽の鶏が出荷される大きさに育つまでに必要な飼料の量としては日本で約6kg、インドネシアで約2.4kgとインドネシアの鶏の方がかなり少ない量となっています。

後ほど触れさせていただきますが、この差は出荷時の重量差にも現れています。

また、1kgの増体を得るのに必要な飼料の量を示すFCR(飼料要求率)は日本2.1:1(1kg増体するのに約2.1kgの飼料が必要)、インドネシア1.6〜1.7:1となっており、日本のブロイラーの方がインドネシアよりも多くの飼料を摂取していることがわかります。

飼料の価格に関しては、日本の養鶏用飼料(ブロイラー用配合・混合飼料及び単体飼料用とうもろこしの工場渡価格)は1トンあたり約73,000円、インドネシアのブロイラー飼料の価格は1トンあたり約450〜470米ドル(日本円で約47,000〜49,000円)となっています。

日本のデータ(2020年);https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/attach/pdf/index-535.pdf
インドネシアのデータ(2018年);
http://www.blackseagrain.net/novosti/feed-prices-in-indonesia-increase-over-currency-depreciation

 

③育成日数と重量に関して

出荷までの育成日数は日本とインドネシアで10~20日ほど異なります。

日本ではヒナが養鶏場に搬入されてからおよそ40〜50日後に3kg弱の重さになったところで出荷されることが多いのに対し、インドネシアではひなが搬入されてからおよそ30日後に約1.5kgの重さになったところで出荷されます。

インドネシアの方が出荷までの育成の日数が少ない理由としては、インドネシアでは鶏肉を1羽丸ごと消費する傾向にあるためではないかと一般的には考えられています。

インドネシアでは伝統的な市場でも丸鶏のまま売られていることが多いのが特徴です。

 

④温度管理に関して

日本では食品衛生法において食肉は10度未満で流通、保管しなければならないという規則があります。

また、食鶏取引規格・食鶏小売規格においても『「生鮮品」とは鮮度が良く凍結していないと体、中ぬき及び解体品(輸送中の鮮度保持のために表面のみが氷結状態になっているものを含む)をいい、「凍結品」とは生鮮品を速やかに凍結し、その中心温度をマイナス15度以下に下げ、以後平均品温をマイナス18度以下に保持するように凍結貯蔵したものをいう』といった明記があり、温度管理に関してはかなり厳しく決まりがあります。

一方、インドネシアでは明確な温度管理基準はなく、特に伝統市場などでは常温でカットされた鶏肉が販売されている光景も珍しくありません。

 

まとめ

今回のコラムでは、鶏肉に焦点をあててその流通経路についてご紹介しました。

流通の面では日本と大きく異なる点も多くありますが、インドネシアは依然として鶏肉の消費量、生産量が高く、とても人気であります。

まだまだ温度管理やコールドチェーンといった面では不十分なところも見受けられましたので、将来的にそういった面への参画はニーズがあるのではないでしょうか。

弊社では鶏肉を使用したクラウドキッチンの運営や、コールドチェーン、鶏肉に関する最新事情や、オンラインでの視察代行・調査代行などを承っております。

ご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

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