【コラム】インドネシアにおける化粧品業界の動向

日本では、新型コロナウイルスの影響を受けて外出の自粛や在宅ワークが多くなったことや外出時にもマスクを着用することが必要不可欠となっていることから、化粧品、特に口紅やチークなどマスクで覆われる部分に使用される化粧品の販売が低迷傾向にあると報じられています。

インドネシアでもこの状況は例外ではないでしょう。

今回のコラムでは、インドネシアにおける化粧品業界の動向を新型コロナウイルス、近年のインドネシアにおける経済成長などといった側面を踏まえながら、ご紹介いたします。

 

インドネシアの化粧品業界

インドネシアは美容新興国といわれており、2019年現在、インドネシアにおける女性の人口は約1.34億人となっています。

また、インドネシアは近年の著しい経済成長により国内における中間所得層が増加しています。

それに伴い、彼らのライフスタイルが大きく変化・向上し、その結果様々な商品の国内消費が活発化しており、その中に化粧品も含まれます。

インドネシアの中間層の方々は消費選択の際に、とにかく安いものから「より質のいいものや自分に似合うもの」を選ぶように徐々に思考が変化する傾向にあります。

それは化粧品を購入する際にも同様で、特に働く女性の割合がここ数年で増加したことにより、化粧品業界はより活気付いています。

出典:World Bank TRADING ECONOMICS“Indonesia – Employees, Industry, Female(% of Female Employment)”を元に弊社作成https://tradingeconomics.com/indonesia/employees-industry-female-percent-of-female-employment-wb-data.html

 

このグラフからも読み取れるように、インドネシアの女性の就業率は増加傾向にあり、2020年にはインドネシアにおける女性の就業率は17.08%となっています。

その他にも、インドネシアにおいて化粧品市場はここ数年でめざましい成長を見せており、2017年には化粧品市場の成長率が前年比11.99%という高い成長率を記録しました。

2018年以降も毎年7.2%ほどの成長率を記録しています。

新型コロナウイルスの影響を受け、今年はそれほどの成長率にはならないかもしれませんが、コロナ禍以前の予測では、2021年には77兆3000億ルピア(日本円にして約5550億円)ほどの規模にまでインドネシアの化粧品市場は成長すると予測されていました。

 

また、近年のインドネシアにおいてはスマートフォンなどのモバイル端末所有率の高さ、SNSやインターネットの利用率の高さといった影響からEC市場が活発化しているのに加えて、新型コロナウイルスの影響からECサイトを利用して食品などを調達する人も増えています。

コンサルティング会社のCekindoによれば2021年までには化粧品部門の総売上の7%がオンライン販売によるものになるだろうとされています。

また、新型コロナウイルスの影響でオンライン販売の割合は更に後押しされ増加するとも予測されています。

日本のEC化率と比較してみると、化粧品全般、医薬品および美容・健康関連器具におけるEC化率は現在6%程度と言われていますので、インドネシアが化粧品部門のみでEC化率が7%となると、日本と同等程度、もしくは日本よりも化粧品部門でのEC利用率が今後高くなってくると考えられます

参考WEBサイト:
https://www.cekindo.com/sectors/cosmetics
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf

上記のような現状から、インドネシアの化粧品市場には将来性があると考えたユニリーバ、P&G、ロレアルといった世界的化粧品メーカーもインドネシアに参入をしています。

ただ、最近ではインドネシア発のローカル化粧品ブランドも多く登場しており、その質も高いため、インドネシアへ参入する海外ブランドの手強いライバルとなっているでしょう。

以前弊社のコラムにて、現地で人気のローカル化粧品ブランドの紹介をさせていただきましたので、各々の化粧品ブランドやその概要についてはこちらをご覧ください。

参考コラム:

 

ハラル化粧品

Marcksと呼ばれるインドネシアのハラル化粧品ブランドのルースパウダー

 

また日本とは違った化粧品の部類として、インドネシアには「ハラル化粧品」と呼ばれるものがあります。

以前からインドネシア国内においてハラル化粧品の人気は一定数あり、化粧品がハラルであるか否かを重要視する敬虔なイスラム教徒も数多くいます。

国民の約9割がイスラム教徒のインドネシアでは、ハラル化粧品は人気且つ必要不可欠な需要を持ち合わせていると言えます。

また、2019年にはインドネシア国民の利用する製品のハラル性の保護、および保証をする目的でハラル製品保証法が施行されました。

インドネシアにおいてイスラム教徒全員が化粧品にハラル認証を求めるわけではありませんが、特に海外からの商品などはどういうものが入っているかわからないため、ハラル認証を通じて安全性を認識できるといった利点もあると考えられます。

インドネシアで有名なハラル化粧品ブランドとしては「ワルダ(WARDAH)」が挙げられます。

ワルダは1995年に設立し、1999年にインドネシアウラマ評議会からハラル認証を取得しました。

 

新型コロナウイルス感染拡大におけるインドネシアの化粧品業界の変化

新型コロナウイルスの感染拡大はインドネシアの化粧品業界にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

まず1つ目に、消費行動全体に変化が見られるようになりました。

これは化粧品業界に限った話ではないのですが、新型コロナウイルスの影響を受けて所得の減少や雇用の喪失といった様々な問題が起こっています。

その結果、消費者は食品や健康に関する商品以外のいわゆる「緊急性の低い商品」の購買に対して、保守的になっています。

それに付随して製品やサービスの価格よりも、安全性を重要視する人が増加する傾向にあると言われています。

具体的にはハラル認証を取得した化粧品を好んで買う人が増えたり、自分に合った化粧品をAIが判別して提案してくれるECサイトの利用が増加していることが挙げられます。

 

2つ目に、大規模な社会規制である「PSBB」発令によって国民が外出を自粛するようになりました。

そのため、外出せずに化粧品を購入することのできるECサイトやSNSを使用した化粧品の販売が好調となっています。

こういった非接触型のリテールは今後のウィズコロナやニューノーマルといった生活により一層根付いていくのではと推測できます。

また、インドネシアでも日本と同様多くの人がマスクをして外出しています。

マスクをすることで顔が隠れることから、この新型コロナウイルス感染拡大期間には化粧品の中でも眉毛やスキンケアの売上が例年と比較すると上昇傾向にあります。

世界的な化粧品ブランドであるL'Oreal Indonesia(ロレアルインドネシア)は、インドネシア国民のマスク使用頻度の増加に伴い、アイメイクの化粧品消費量が増加するだろうと述べています。

参考WEBサイト:
https://www.cosmeticsdesign-asia.com/Article/2020/05/11/L-Oreal-Indonesia-continues-to-be-optimistic-about-market-potential-despite-COVID-19

 

ただその一方で、6月中旬にマッキンゼーが実施した調査では、化粧品を含む「衣食住」「娯楽」といった多くのカテゴリーで、インドネシアの消費者は支出を削減しようとする傾向が指摘されました。

スキンケア&メイクアップのカテゴリーでは、38%の人が以前よりも支出を減らそうとしているそうです。

考えられる理由としては、外に出る機会が減ったことや、収入が減少してしまったことから化粧品を購入するお金がないこと、PSBBによってモールが閉まっているため購入する手段が少なくなってしまったことなどが挙げられます。

参考WEBサイト:
https://www.mckinsey.com/business-functions/marketing-and-sales/our-insights/survey-indonesian-consumer-sentiment-during-the-coronavirus-crisis

新型コロナウイルス感染拡大における各インドネシアローカル化粧品ブランドの変化

インドネシアの化粧品業界全体で見ると上記のような変化がありましたが、インドネシアのローカルな化粧品ブランドにおいては一体どのような変化があったのでしょうか。

今回は様々あるブランドの中でも4つのブランドを抜粋してご説明させていただきます。

 

1 ワルダ(WARDAH)

Wardah 公式WEBサイト:https://www.wardahbeauty.com/

CEOのSalmanSubakat氏は従業員の健康を第一に考えた行動をとっていくと述べ、PSBBなどの影響により販売店での対面販売が難しくなったことから、販売媒体をオンラインプラットフォームに切替える必要があると述べました。

上記に加えて、既にいくつかオフラインでのイベントも実施予定だったようなのですが、それに関してもオンラインに切り替える必要があると述べました。

ワルダのCEOは、既存のやり方から変更することを余儀なくされているこの現状を踏まえて、今後は「デジタル体験」といったものに焦点を当てた事業を行っていく必要があると話していました。現在ワルダは、ECサイトなどを使用したショッピングシステムに慣れていない消費者が簡単に製品を購入できるようなオンラインチャネルの作成に取り組んでいるようです。

参考WEBサイト:https://www.liputan6.com/bisnis/read/4260285/tengok-strategi-ceo-wardah-pertahankan-bisnis-di-tengah-pandemi-corona

 

2 サリアユ(Sariayu)

Sariayu 公式WEBサイト:https://www.sariayu.com/

2019年頃から様々種類のある化粧品の中でもスキンケアとベース製品のデジタルチャネルには力を入れていましたが、今後さらにデジタルマーケティングの強化を行っていくと取締役社長B. Kunto W.Widarto氏は述べています。

具体的にはウェブサイトやソーシャルメディア、YouTubeといった様々なオンラインツールを活用し、インフルエンサーと様々なオンラインツールとの連携に取り組んでいます。

参考WEBサイト:https://entrepreneur.bisnis.com/read/20200326/88/1218577/sariayu-pakai-digital-marketing-dongkrak-penjualan-

 

3 イネズ(Inez)

Inez 公式WEBサイト:https://inez.co.id/

イネズはハンドサニタイザーの製造を行い、インドネシアの32の自治体に配布するといった支援活動を行っています。

イネズは工場があり薬剤師がいることを活かし、アルコールに加えて保湿剤も入った独自のハンドサニタイザーを製造しています。

参考WEBサイト:https://suryamalang.tribunnews.com/2020/04/28/lawan-corona-inez-cosmetics-sumbang-ratusan-ribu-hand-sanitizer-ke-berbagai-instansi-di-indonesia

4 ムスティカ・ラトゥ(Mustika Ratu)

Mustika Ratu 公式WEBサイト:https://mustika-ratu.co.id/

様々なハーブを組み合わせた薬のようなもので、免疫調節や体の冷え・吐き気・鼓腸・めまい・咳といった症状を和らげるのに役立つHerbamuno+という商品を発売しはじめました。

参考WEBサイト:https://www.beritasatu.com/feri-awan-hidayat/ekonomi/639127/strategi-mustika-ratu-bertahan-di-tengah-pandemi-covid19

 

このようにインドネシア化粧品ブランドは新型コロナウイルスの影響を受けて様々な動きを見せています。

過去のコラムも併せてご覧ください。

 

 

まとめ

ここ数年で継続して成長し続けているインドネシアの化粧品市場ですが、新型コロナウイルスの影響を受けてその伸び率には多少の変化が見られると推測されます。

しかしながら、新型コロナウイルスをマイナスに捉えるのではなく、多くのブランドがデジタルマーケティングや新製品の開発などの方面に舵を切り、今後の「ウィズコロナ・ニューノーマル」な生活に向けたビジネス展開を行っています。

今後もさらにインドネシアの化粧品業界におけるECの成長からは目が離せないでしょう。

弊社では、インドネシアの新型コロナウイルスに関する最新情報や様々なトレンド、オンラインでの視察代行、調査代行なども承っております。

ご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

 

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