【コラム】インドネシアにおけるキャッシュレス決済アプリの盛り上がり
インドネシアのみならず日本を含む多くの国々では、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて学校や職場(在宅勤務)が多くのオンラインシステムを使用するようになりました。
また、ウイルスから身を守るために多くの人々は非接触を好むようになり、オンラインショッピングや非接触型決済(キャッシュレス決済)の使用が増加しているのが現状です。
その中でもインドネシアは東南アジアの中で最もホットなキャッシュレス決済アプリ市場となっているようです。
参照:https://e27.co/why-indonesia-is-the-hottest-payments-battleground-in-southeast-asia-20200701/
今回のコラムではキャッシュレス決済アプリに焦点を置きながら、インドネシアにおいてスマートフォンやインターネットがどれほど普及しているのか、またそれらを使用してキャッシュレス決済を行うアプリにはどういったものがあるのか、インドネシアでは国としてどういった指針のもとキャッシュレス決済の推進や導入が行われているのかなどといった点についてご紹介いたします。
インドネシア国民のスマホ・インターネット利用事情
インドネシアでは現在約6割強の人々が携帯電話を所持しています。その数は年々増加しており、以下のグラフからもわかるように、ここ10年で大幅に増加しました。
出典;インドネシア中央統計庁、STATISTIK E-COMMERCE 2019のデータを元に弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/download.htmlnrbvfeve=ZmQxZTk2YjA1MzQyZTQ3OWE4MzkxN2M2&xzmn=aHR0cHM6Ly93d3cuYnBzLmdvLmlkL3B1YmxpY2F0aW9uLzIwMTkvMTIvMTgvZmQxZTk2YjA1MzQyZTQ3OWE4MzkxN2M2L3N0YXRpc3Rpay1lLWNvbW1lcmNlLTIwMTkuaHRtbA%3D%3D&twoadfnoarfeauf=MjAyMC0xMi0wOSAxMzozNjoxNg%3D%3D
中でも、以前弊社のコラムでもご紹介いたしましたが、インドネシアにおいては携帯電話所持率の増加のみならずスマートフォン所持の割合も高くなっています。
Googleによる調査では、インドネシアのスマートフォン使用率は2013年にはわずか14%でしたが、2017年には60%にまで達し、わずか4年の間に4倍以上になりました。
インドネシアでよく見られるGojekやGrabのドライバーはスマートフォンで依頼を受けて仕事をおこないます。
今やスマートフォンは国民が仕事をしていく上でも必要不可欠なものとなってきているのです。
また、インドネシアでは電波の強さに差はあるものの9割以上の地域で携帯電話信号を受信することが可能となっています。
インドネシアにおける携帯電話インターネット信号の受信可能村数とその種類(2019)
信号の種類 | 村数 |
4G/LTE | 46,301 |
3G/H/H+/EVDO | 20,011 |
2.5G/GPRS | 6,307 |
信号なし | 5,346 |
インドネシアにおける携帯電話インターネット信号の受信可能村数とその割合(2019)
年 | 村数とパーセンテージ | ||
強い信号 | 弱い信号 | 信号なし | |
2014 | 55,870(67.98%) | 18,603(22.63%) | 7,717(9.39%) |
2018 | 55,575(66.22%) | 21,597(25.73%) | 6,759(8.05%) |
2019 | 58,194(69.33%) | 19,771(23.56%) | 5,972(7.11%) |
出典;インドネシア中央統計庁、STATISTIK TELEKOMUNIKASI INDONESIA 2019のデータを元に弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/download.html?nrbvfeve=YmU5OTk3MjViN2FlZWU2MmQ4NGM2NjYw&xzmn=aHR0cHM6Ly93d3cuYnBzLmdvLmlkL3B1YmxpY2F0aW9uLzIwMjAvMTIvMDIvYmU5OTk3MjViN2FlZWU2MmQ4NGM2NjYwL3N0YXRpc3Rpay10ZWxla29tdW5pa2FzaS1pbmRvbmVzaWEtMjAxOS5odG1s&twoadfnoarfeauf=MjAyMC0xMi0wOSAxNToxNDoxNA%3D%3D
インドネシア全体のインターネット普及率の平均は70%ほどの高水準となっています。
地域別に見てみると以下のようになっており、1番高い地域は首都ジャカルタの93.33%で、1番低い地域はパプアの31.31%となっています。
多くの地域で約65%以上の普及率となっておりますが、普及率には未だバラつきがあることが分かります。
出典;インドネシア中央統計庁、STATISTIK TELEKOMUNIKASI INDONESIA 2019のデータを元に弊社作成
https://www.bps.go.id/publication/download.html?nrbvfeve=YmU5OTk3MjViN2FlZWU2MmQ4NGM2NjYw&xzmn=aHR0cHM6Ly93d3cuYnBzLmdvLmlkL3B1YmxpY2F0aW9uLzIwMjAvMTIvMDIvYmU5OTk3MjViN2FlZWU2MmQ4NGM2NjYwL3N0YXRpc3Rpay10ZWxla29tdW5pa2FzaS1pbmRvbmVzaWEtMjAxOS5odG1s&twoadfnoarfeauf=MjAyMC0xMi0wOSAxNToxNDoxNA%3D%3D
インドネシアのスマホは大半がSIMフリーとなっており、基本的にはプリペイド式となっています。
SIMカードはコンビニや街中の露店で簡単に購入することができ、プリペイド式の場合は通信料やインターネット接続料金の引き落としにプルサなどと呼ばれるものをチャージします。
チャージはアプリからクレジットカードなどを使って行なったり、コンビニ支払い、後ほど説明するOVOなどといったキャッシュレス決済サービスを使用するなどといった方法があります。
インドネシアは人口の多さもさながら、全人口に占める若者の割合が非常に高いため、急速なキャッシュレス決済の普及とその成長は、今後も安定的に続くと見られています。
インドネシアのキャッシュレス決済アプリ市場
年々インターネットやスマートフォンの普及が広がってきたインドネシアにおいて、新たに使用され始め急速に普及したサービスにキャッシュレス決済があります。
日本でもPayPayやLINE Pay、楽天Payなどといったアプリが最近人気となっていると思いますが、インドネシアでもGoPay、OVO、 DANA、Linkaja、Go Mobile By CIMB、i.saku、JakOne Mobile– Bank DKI、DOKU、Sakuku、Paytrenなど様々な種類のキャッシュレス決済アプリが台頭しています。
2020年2月にグローバルマーケティング調査会社のIpsosが行なった調査によれば、インドネシアにおける回答者の58%が最も身近な電子マネーとしてGOPAYを選択しました。
続いてOvoが29%、Danaが9%となっています。
また、調査対象のインドネシア消費者のうち、68%は少なくとも週に1度はクレジットカードやキャッシュレス決済アプリといった電子マネーを通じて支払いを行なっているようです。
インドネシアでの金融アプリ(キャッシュレス決済アプリを含む)の使用は、前年比で70%増加しました。
参照:https://www.ipsos.com/en-id/ipsos-media-conference-strategi-menang-tanpa-bakar-uang
また、Rapydが2020年3〜4月に行なった調査によれば、インドネシアの消費者はカードや現金よりも電子マネーを強く好み、33.8%が3つの電子マネー(Go-Pay、OVO、DANA)のうちの1つを優先的な決済手段として選んでいるようです。
参照:https://e27.co/herere-the-most-used-digital-payments-across-apac-in-mar-apr-2020-20200611/
ここからは、GoPay、OVO、DANAの上位3つのキャッシュレス決済アプリに焦点をあてて詳しく見ていきたいと思います。
1 GoPay
・GoPayはインドネシアにおける新規電子マネーユーザーの60%にとって最初の選択肢となっている
・Gojek(東南アジアを代表するスーパーアプリ)独自の決済システム
参照;https://iprice.co.id/trend/insights/top-e-wallet-di-indonesia-2020/
2 OVO
・東南アジア最大の配車サービス企業GrabとオンラインEコマースを代表するプレイヤーであるTokopediaの傘下
・2016年導入
・新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、全体的なダウンロードと新規ユーザーは276%増加
3 DANA
・Alibaba Group(阿里巴巴集団)と直接的な関係あり
・2018年導入
・オンラインEコマースBukapalak内で使用するキャッシュレス決済アプリとして有名なOVOとDANAですが、実は、2020年6月12日に合併したと報道されました。
多くの記事で、この合併の目的は、キャッシュレス決済アプリで不動の1位として君臨しているGoPayの人気に立ち向かうためと報じられています。
またここ最近は新型コロナウイルスの影響もあり、ECサイトShopeeが展開するShopeePayという新たなキャッシュレス決済サービスも人気を伸ばしています。
Snapcartが2020年9月から12月にかけて1,000人のインドネシア国民に行なった調査の結果によると、50%の国民が「ShopeePayを最も頻繁に使用している」と回答しました。
一方、上記で説明したGoPayは12%、OVOは23%、DANAは12%とShopeePayと比較するとあまり振るわない結果となっており、ShopeePayが急速に需要が拡大していることが分かる結果となりました。
ShopeePayが人気となってきた背景には、様々なプロモーションや割引に対して非常に積極的であること、様々な店舗でのオフライン取引に使用することが可能といった点が挙げられます。
参照;https://investor.id/it-and-telecommunication/penggunaan-dompet-digital-semakin-disukai
インドネシアでキャッシュレス決済アプリがよく使用される理由
先ほど述べた新型コロナウイルス感染拡大の影響などもインドネシアでキャッシュレス決済アプリがよく使用される理由の一つではありますが、それ以外にもインドネシア特有の理由として「銀行口座を持っている人が少なく、クレジットカードを持てない」また、「クレジットカード決済を利用する機会が少ない」といった点が挙げられます。
BAIN AND COMPANYのレポートによれば、成人しているインドネシア国民の70%以上がUnderbanked(銀行口座を持つことができない層)、または、Unbanked(銀行口座を持っていない層)であり、金融サービスへのアクセスが制限されている人が多く存在しているのが現状です。
参照;https://www.bain.com/globalassets/noindex/2019/bain-report-fulfilling-its-promise.pdf
銀行口座を持たなければクレジットカードを持つことは難しい点、かつ、非接触が推奨される今日において、キャッシュレス決済アプリが人気となっています。
インドネシア政府や省庁の意向
インドネシアには未だに銀行口座を持つことができないUnbankable層が多くおり、国民の4分の3が十分な金融サービスを利用できないため、インドネシア金融サービス庁(OJK)はインドネシアの経済発展を促進する上で電子マネーの利用を奨励しています。
参照;https://www.trade.gov/market-intelligence/indonesia-e-wallet-market
インドネシア中央銀行もキャッシュレス決済を行うようインドネシア国民に求めています。
また、世界保健機関(WHO)では新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、できるだけ非接触で決済ができる可能な場合はキャッシュレス決済を使用することを提案していますしました。
お金は多くの人を介するものであるために菌が付きやすく、ウイルスのついた手でお金に触れることでウイルスが拡散するのではないかという考えもあります。
世界各国で、新型コロナウイルス感染拡大を背景にキャッシュレスがますます普及していると言われていますが、のことは、今後インドネシア国内においてもでもますますキャッシュレス決済の更なる普及を後押しする要因の一つとなると考えられるでしょう。
今回のコラムでは、インドネシアにおいてキャッシュレス決済がどれほど国民の生活に根付いているのかについてご説明させていただきました。
国としてもキャッシュレスや電子マネーを積極的に活用していこうと考えているインドネシアですので、今後もより一層そういった風潮が高まるのではないかと推測できます。
弊社では、インドネシアにおける金融関連、デジタル関連フィンテック関連のの最新情報や様々なテーマに関する調査、オンラインでのインタビュー手配なども承っております。
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