【コラム】インドネシアでのビジネスシーンで覚えておくべきイスラム教の豆知識

インドネシアと日本でビジネスを行う上で注意しなければいけない点の1つに「宗教」が挙げられます。

インドネシアでは宗教の信仰が義務付けられており、更にインドネシアは人口の約8~9割がイスラム教徒と言われており、世界最大のイスラム教徒の人口を抱える国です。

インドネシアでビジネスを行うにあたり、宗教について必要となってくる知識や気をつけた方がよい事項は多数あるのですが、日本人はどちらかというと宗教との関わりが薄く、特にイスラム教についてはなかなかイメージがつかないことも多くあるのではないでしょうか。

今回はインドネシアでマジョリティーを占めるイスラム教に焦点を絞って紹介をしていきたいと思います。

インドネシアの宗教全般に関しては以前、他のコラムにて紹介させていただきましたのでぜひ併せてご覧ください。

参考コラム:

 

6つの宗教

インドネシアでは、国民の身分証明書(KTP)に自身の信仰宗教を記載することが必須となっており、6つの宗教(下記参照)の中から選択しなければなりません。

インドネシアの国是であるパンチャシラには、「唯一神への信仰」が掲げられており、インドネシアの人々にとって宗教の存在は大きなものとなっています。

以下はインドネシアの国章ですが、盾の真ん中にある星が宗教を持つ義務、つまり「唯一神への信仰」を意味しています。

インドネシア共和国憲法の中で認められている6つの宗教は、イスラム教、プロテスタント、カトリック、ヒンドゥー教、仏教、儒教です。2016年のインドネシア宗教省のデータによれば、インドネシア国民の9割弱のイスラム教を信仰しており、他の宗教と比べても圧倒的に多いことが分かります。

しかし、インドネシアは全ての宗教を平等に扱うことを掲げているため、宗教間の優劣などは存在しません。

また、イスラム教徒が人口の大半を占めますが、政教分離となっており、イスラム教は国の宗教ではありません。

 

インドネシア国内で認められている宗教と教徒の数

宗教 人数 割合
イスラム教 207,176,162人 87.21%
プロテスタント 16,528,513人 6.96%
カトリック 6,907,873人 2.91%
ヒンドゥー教 4,012,116人 1.69%
仏教 1,703,254人 0.72%
儒教 117,091人 0.05%
その他 1,196,317人 0.50%

出典;インドネシア宗教省、Kementrian Agama Dalam Angka Tahun 2016 を基に弊社作成(閲覧日:2020年7月27日)
https://kemenag.go.id/myadmin/public/data/files/users/3/KEMENAG%20DALAM%20ANGKA%202016—OK%20(1).pdf

イスラム教とは

イスラム教は7世紀にアラビア半島のメッカで発祥した宗教となっており、預言者ムハンマドが創始者、唯一神アッラーを信仰する一神教です。

世界的に見ても信仰者数の多い宗教となっており、現在はキリスト教についで2位、将来的にはキリスト教を超えて世界1位になるという予測もされています。

現在、世界人口の4人に1人ほどがイスラム教を信仰しており、彼らは生きていく上で必要なあらゆる事柄が網羅された生活の指針である聖典「クルアーン」などに基づき、生活をしています。

 

イスラム教の規範

前述の通りイスラム教には様々な規範が存在します。

その中でもビジネスをする上で必要となってくる知識や気をつけた方がよい事項について「食」「礼拝」「服装」「祝日・行事」という観点からお伝えします。

※あくまで一般論であり、イスラム教の教えにどれだけ忠実に従うかは個人によって異なりますので、あくまで一般的な知識としてお読みください。

 

1 覚えておくと良い知識や留意事項〜食〜

イスラム教徒が食すことを禁じられている食べ物として豚やお酒は有名なのではないでしょうか。

その他にもクルアーンに書かれているものとして、死肉、血、豚肉、決められた方法以外で殺されたもの、酒などの人を酩酊させるものなどが挙げられます。

 

これらは勿論のこと、上記の成分が含まれたものも口にしてはいけないとされています。

例えば、豚由来のゼラチンやアミノ酸などが挙げられますが、これらはぱっと目にしただけではなかなか判別することができません。

そのため、イスラム教徒の方と会食などを行う際や、日本からのお土産を渡す際にはこれらの点にも注意する必要があります。

基本的にインドネシアではお酒を飲みながら宴会をする“飲み会”の風習はありませんので、現地での食事会や、インドネシアの方が日本に来日された際のレストラン等のアレンジには配慮が大切です。

食関連のビジネスを考えていらっしゃる場合においても、知らないでは済ませられないため、正しい知識を持ち合わせておくことは必要不可欠でしょう。

参考コラム:

 

2 覚えておくと良い知識や留意事項〜礼拝〜

イスラム教では、日や場所によって時間は違うものの1日に5回メッカの方角を向いて礼拝を行います。

夜明け前・正午・午後・日没・夜の5回となっており、礼拝の時間になるとインドネシアではアザーンと呼ばれる音楽が鳴り響き、それを合図にイスラム教徒は礼拝を行います。

1回の礼拝時間はそれほど長くはありません。

毎日の礼拝の中でも、金曜日の礼拝は特に重要とされています。

成人男性は金曜正午過ぎの礼拝はモスクで集団礼拝をすることが義務となっているなど、金曜日の礼拝はイスラム教徒にとって特別な存在となっています。

インドネシアにおいてイスラム教徒の方と会議などがある際には、礼拝の時間に留意し、時間に余裕を持って予定を組む必要があります。

特に、インドネシア現地を視察する際、金曜の午後は礼拝のためアポイントメントがとりづらくなる傾向があります。

また、日本で彼らとビジネスを行う場合においても時間や場所の配慮は忘れてはいけないでしょう。

 

3 覚えておくと良い知識や留意事項〜服装〜

イスラム教というと、服装に特徴がある宗教だと捉えている方も多くいるのではないでしょうか。

男性の普段の服装にはそれほど珍しさはないものの、女性はヒジャブやジルバブといったヴェールを身に纏い、露出の少ない衣服を身につけています。

女性がこのような服装をするのにはきちんとした理由があります。

一説によれば、男性たちが女性たちの姿に誘惑されないため、女性の魅力的な美しい部分を他の男性に見せないためとされています。

郷に入っては郷に従えという言葉もあるように、特に女性はインドネシアなどのイスラム圏に訪れる際には、露出が多すぎる服装は避けるなど、服装にも気をつけることが大切です。

参考コラム:

 

4 覚えておくと良い知識や留意事項〜祝日・行事〜

宗教の暦に合わせてインドネシアでは年間を通じて様々な祝祭日や行事が行われています。

イスラム教の祝日としては以下のものが挙げられます。(全て2020年の日程)

日程 祝祭日の名称
3月22日 ムハンマド昇天祭
5月24日〜25日 イドゥル・フィトリ(1441年断食明け大祭)
7月31日 イドゥル・アドハ(犠牲祭)
8月20日 イスラム暦1442年新年
10月29日 ムハンマド降誕祭

出典;通信情報技術省、Inilah Jadwal Libur Nasional dan Cuti Bersama Tahun 2020を基に弊社作成
https://www.kominfo.go.id/content/detail/20922/inilah-jadwal-libur-nasional-dan-cuti-bersama-tahun-2020/0/berita

 

インドネシアの祝日は日本の祝日とは異なり固定ではなく、年やその時々の状況により変更されます。

2020年7月現在、既に3度も祝祭日の変更が政府より発表されています。そのため、ビジネスなどで現地を訪れる際には祝祭日を把握した上で予定を組むことが大切になってきます。

参考コラム:

 

中でも、イスラム教徒にとってとても大事な期間であるラマダンと1ヶ月間のラマダン明けをお祝いする「イドゥル・フィトリ」は彼らにとって特別な時期とも言えます。

ラマダンについてはこちらで詳しく紹介していますので、こちらをご覧ください。

1ヶ月間のラマダンと2日間のイドゥル・フィトリに付随して、例年インドネシアでは数日間イドゥル・フィトリ後に政令指定休日が設定されています。

日本で言う年末年始のような雰囲気で、大型連休を利用して里帰りを行う人も多くいるため、調査や視察、商談などを行う際はラマダンやその後の祝日も考慮したスケジュール組みが必要です。

参考コラム:

 

また、ラマダンの時期に注意しなければならない点として夕方の交通渋滞が挙げられます。

インドネシアの渋滞は世界的にも有名ですが、ラマダンの時期は日の入り後にようやく食べ物を口にすることができるため、日の入りの30分〜1時間前には家路を急ぐ人たちで溢れています。

この時期に現地で予定を組む際には、こういった点にも十分留意する必要があります。

また、インドネシアの祝日には振替休日という制度がありません。

そのため、インドネシアの方と予定を組む際にはその点も考慮に入れておくと良いでしょう。

弊社では、インドネシアの文化に関するセミナー、講師派遣、また現地での視察サポートなども実績が多数ございます。

ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

関連コラム:

 

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260

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