【コラム】インドネシアにおける自転車の需要の高まり

新型コロナウイルス感染拡大の影響で現在、世界的に自転車の需要が急増しています。

インドネシアも例外ではなく、近年自転車の需要が高まりつつあったのが、コロナ禍で更に需要が高まり、最近では自転車を求める人々が自転車販売店の前に開店前から長蛇の列をつくる姿が見受けられるようにもなりました。

今回のコラムでは、インドネシアにおいてなぜそれほど自転車の需要が高まったのか、インドネシアにおける自転車需要の現状と今後についてご紹介します。

 

コロナ禍以前のインドネシアにおける自転車の需要

新型コロナウイルスが拡大する以前から、インドネシアの中でも特にジャカルタなどといった大都市において自転車の需要は高まりつつありました。

インドネシアでは特に、折り畳み自転車の需要が急増しています。

折り畳み自転車は2017年頃からインドネシアで徐々に人気が出始め、中には1台数千万ルピア(日本円でおよそ数十万円)もするハイブランド商品も、ジャカルタなどの大都市で多く販売されるようになりました。

特に人気なブランドとしてはイギリスの高級折り畳み自転車ブランド「ブロンプトン」などが挙げられます。

折り畳み自転車が人気な理由としては、持ち運びがしやすいという点です。

レクリエーションツールとしての自転車利用ももちろんですが、MRTやトランスジャカルタなどといった公共交通機関を利用する場合には車内に持ち運び可能な折り畳み自転車が好まれるようです。

コロナ禍以前から自転車が人気となっていた背景

コロナ以前に自転車が人気となった背景としては、インドネシア国民の健康に対する意識の変化や国内における慢性的な交通渋滞が挙げられます。

そのほか、運動不足解消や、通勤、日常の買い物などのための交通手段として自転車を使用している方が多いようです。

以前にも弊社のコラムにて何度かご紹介いたしましたが、インドネシアでは不健康な生活習慣から生じる疾患などのリスクに対する意識の高まりから、より健康的な生活習慣や食事を取り入れ始めている人が増えている傾向にあります。

インドネシアの人々の交通手段といえば、バイクやバス、電車といった公共交通機関や車が主流でしたが、そういったものを使用して外出をしてしまうと、どうしても運動不足になってしまうため、近年では利用する交通手段にも変化がでています。

関連コラム:

公共交通機関の利用による運動不足が直接関係していると断言することはできませんが、インドネシアにおける三大死因は生活習慣病である「脳卒中」「虚血性心疾患」「糖尿病」となっています。

インドネシアを含む東南アジアの国々では、元々砂糖や油を多く摂取する傾向にあり、更に近年の経済的な急発展により人々の所得が増加し、ライフスタイルも大きく変化しています。

近年めざましい経済成長を遂げているインドネシアでは、中間層と呼ばれる人々が多く台頭しており、所得増の影響から高血圧や高コレステロー ル、糖尿病予備軍の人口がかなり高く、高コレステロール人口の割合はアジア・オセアニア地域で最も高く57.1%となっています。

2018年のデータ、JETRO「-Jakarta Edition- HEALTHY LIFESTYLE」https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/ff9bb182691f5f50/hls-jkt.pdf

しかし、近年では「健康に対する意識の変化」により健康に注意した食事であったり、運動をするように心がけている人が増加しています。以下のグラフは、YCP Southeast Asia社が2017年12月にジャカルタに住む男女400名を対象に実施したアンケートの結果となります。

出典: 日本貿易振興機構(JETRO)「-Jakarta Edition- HEALTHY LIFESTYLE」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/ff9bb182691f5f50/hls-jkt.pdf)より弊社作成

出典: 日本貿易振興機構(JETRO)「-Jakarta Edition- HEALTHY LIFESTYLE」https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/ff9bb182691f5f50/hls-jkt.pdfより弊社作成

 

関連コラム:

 

このグラフからも読み取れるように、現在インドネシアの多くの人々が健康に配慮した生活を送るように心がけています。

また、その割合は歳をとるにつれて上昇する傾向にあります。インドネシアでは健康な身体を手に入れるために、運動のひとつとしてサイクリングを行う人もいるようです。

ジャカルタ では毎週日曜日に目抜き通りを歩行者天国にする「カーフリーデー」が実施されています。

ここ最近は自転車でカーフリーデーのイベントに参加してサイクリングを楽しむ人も急増しているそうです。

新型コロナウイルスの影響を受けて発令されたPSBBで中止されていた「カーフリーデー」でしたが、6月下旬に再開された際には自転車で多くの人が押し寄せました。

現在は、6月下旬に緩和されたPSBBがインドネシア国内の感染者拡大の影響で再度導入されたことにより、9月13日からカーフリーデーの実施は禁止されています。

インドネシア政府としても、国民の自転車利用を推進しており、自転車専用道路の整備を行い、渋滞緩和や大気汚染軽減を目指して国民への声かけなども行われています。

また、インドネシアで自転車が人気となった理由の2つ目である「慢性的な交通渋滞」に関しては、日本でもニュースで取り上げられるほど渋滞のひどいジャカルタなどの地域において、特に折り畳み自転車が人気となっています。

車やバイクの量に対して道路や鉄道といった交通インフラの整備が未だ追いついていないインドネシアでは、自転車の利用した方が早く仕事場や目的地にたどり着けるといった理由から、自転車を利用する人が増えているようです。

 

新型コロナウイルス感染拡大最中のインドネシアにおける自転車需要とその背景

新型コロナウイルス感染拡大以前より、自転車の需要が増加していたインドネシアでしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、その需要はさらに増加していると言えます。

新型コロナウイルス感染拡大当初は、ジャカルタや東ジャワ州など様々な自治体が「大規模な社会的規制」を意味するPSBBが発令され、多くの人が外出自粛を余儀なくされました。

また、インドネシア政府としてもインドネシア全体に外出自粛要請やソーシャルディスタンスなどの呼びかけをしており、インドネシアの人々は人ごみを避けるため、公共交通機関の利用を控えるようになり、代わりの移動手段として自転車の需要が高まっているのです。

現在はジャカルタとその近辺の一部エリアでは一度緩和されたPSBBが再度規制強化されてしまったため、再び外出自粛をする人が増加する見込みですが、今後、PSBBが徐々に緩和されて多くの人々が外に出る機会が増えた際、自転車はかなり重宝する移動手段となるでしょう。

関連コラム:

インドネシアのオンラインショッピングサイト「トコペディア(Tokopedia)」では2020年5月の自転車購入者が前月から40%増加したと述べています。

また、同じようなオンラインショッピングサイトの「ブリブリ(Blibli)」では新型コロナウイルス感染拡大前の期間と比較して自転車関連の販売が2.5倍増加したと述べていました。

「ブカラパク(Bukalapak)」では自転車販売の取引が3月から6月にかけて最大156%増加したと述べています。

参考webサイト:
https://www.kompas.com/tren/read/2020/06/27/154500965/booming-di-seluruh-dunia-karena-corona-ini-tren-penjualan-sepeda-saat-ini?page=all

オンラインのみに止まらず、インドネシアでは自転車を求める多くの人々が自転車店が開店する前から店前に列をつくる光景が見受けられるようになりました。

ここからも分かるように新型コロナウイルスの影響を大きく受け、インドネシアでは自転車を利用する人が増大しています。利用理由としては、新型コロナウイルス流行以前からあった健康面や渋滞緩和に加えてレクリエーション的な要素と公共交通機関の代替要素などが考えられます。

 

コロナ禍における自転車利用のメリットとデメリット

メリットとしては、三密を回避できるために新型コロナウイルス感染の確率を低めることができるということです。

どうしても超満員の電車やバスといった車内ではクラスター感染が起きる可能性が高くなってしまいます。自転車を使えば、レクリエーションと交通代替手段のどちらにおいても家族以外の人とソーシャルディスタンスを保つことができます。

コロナ前のMRT車内の様子

デメリットとしては、自転車をレクリエーションとして楽しむ人々が適切な距離を保たずに密集して集まることや、マスクを着用しないことでコロナウイルス感染のリスクが非常に高まることです。

現在、レクリエーションとしてサイクリングを楽しむ人々のコミュニティが増加しており、それによって上記のようなデメリットが生じています。

 

インドネシアにおける自転車需要の将来性

現在は新型コロナウイルスの影響を受けて自転車を利用する人が増えていますが、果たして新型コロナウイルス収束後にも自転車に対する需要は存続するのでしょうか。

インドネシアのメディアは、このコロナ期間を通じてインドネシアの人々が自転車に乗ることはライフスタイルの一部となってきていると予想できるため、中長期的にみればインドネシア国民の自転車利用者は減少することはなく、むしろ増加するのではないかと報じています。

ただインドネシアにおける自転車需要の将来性を考えていく上で、現状すでに需要に対して生産が追いついていないといった問題点が起こっています。

インドネシアでは自転車部品の多くを輸入に頼っていたため、部品の輸入と自転車の製造が追いついておらず、それによって自転車の価格高騰なども起きているようです。

また、部品を輸入したいのにもかかわらず、世界的にも自転車需要が増加しているために、なかなか部品を入手することができずに苦労しているようです。

しかし、こういった背景を受けて徐々にインドネシア国内でも電気自転車の開発や部品の自国生産が奨励され、進められています。

政府としても、以下のような政策を予定しており、国内における自転車需要のさらなる拡大に力を入れているようです。

 

インドネシア政府が打ち出している政策(2020年7月14日時点)

・自転車インフラの予算増加

・レクリエーションルートとしての自転車道への投資

・通勤自転車へのインセンティブ

・自転車を購入して働く労働者に割引を与えるための政策スキーム提案

・自転車専用道路の増設

 

弊社では、インドネシアの新型コロナウイルスに関する最新情報や様々なトレンド、オンラインでの視察代行、調査代行なども承っております。

インドネシアの市場調査にご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次