【コラム】ジャカルタ州、レジ袋禁止へ

インドネシアの首都ジャカルタでは、2019年12月31日に交付されたレジ袋利用禁止について定める州知事令2019年142号に基づき、2020年7月1日よりスーパーマーケットなど小売り店でのプラスチック製レジ袋の配布が禁止となりました。

インドネシア国内でのレジ袋配布を禁止する取り組みについては、ここ数年でバリのデンパサールやスマトラのジャンビ、西ジャワのボゴールなど一部の地域が導入し始めており、2019年1月よりジャカルタ州庁内でのプラスチック製レジ袋やプラスチック製ストローなどのプラスチック製品の使用を禁止する取り組みを行っていましたが、ついにジャカルタ州全体でプラスチック製のレジ袋が使用禁止されることになりました。

 

今回の施策の背景として、インドネシアで排出されるプラスチック廃棄物の量は2019年時点で中国に次ぐ世界第二位となっており、その量は1年で約320万トンでした。

ジャカルタ州環境局によると、ジャカルタでは毎日約7,000トン以上の廃棄物が発生しており、その廃棄物は西ジャワ州の最終処分場に運ばれますが、西ジャワ州の最終処分場の収容能力が残り約1,000万トン程度となっており、2021年頃には収容能力限界を迎えると見られています。

インドネシア全体ではもちろん、ジャカルタ州の廃棄物問題も、政府が解決急務とする課題の一つとなっており、従来使用してきたプラスチック製のレジ袋を禁止する今回の規制によってジャカルタにおけるプラスチック廃棄物の排出を削減したい意向です。

参考コラム:

 

「ジャカルタ州知事令142/2019」で定められている主な内容は以下の通りです。

1 義務付けられる事項

・ 乾燥した葉、紙、布、ポリエルテル、その他生物由来、リサイクルされた素材など、環境に優しい素材の買い物袋を使用する。

・ 十分な厚みがあり、繰り返し使えるように設計されている。

・ リサイクルできる。

 

2 禁止される事項

・ プラスチック製、またはプラスチックを含む素材の使い捨てのビニール袋の使用を禁止する。

・ 持ち手つきのビニール袋を禁止する。

・ 商品を持ち上げたり運んだりする際に使用することも禁止する。

 

3 許可される事項

・ 生鮮品(肉や魚など)を包装するための透明な袋は許可する。

・ 環境に優しい代替品が見つかるまで使用を許可する。

・ 消費者が生鮮品を購入する際は、持参した容器に詰めても良い。

 

1 ~3の対象事業者:

中小零細事業者を含むョッピングセンターやモール、スーパーマーケット、伝統市場

 

この規則に違反した場合、書面による警告、5,000,000ルピア~25,000,000ルピアの罰金、業務停止、ライセンスの取り消しなど処罰の対象となります。

参考:インドネシア環境省WEBサイト

 

この規則を受け、ジャカルタの小売店はプラスチック製レジ袋の代わりとなる紙袋などの確保や切換を行いつつ、消費者へのマイバッグの持参を呼びかけています。

該当のジャカルタ州知事令内では、環境に優しい買い物袋の利用について州政府からの財政的なサポートを行う旨の記載がされてはいるものの、インドネシアの小売店は大多数が「影響を受ける」と回答しました。(対象:ジャカルタ市内の1,162件の小売業者)

出典:Katadata WEBサイトより弊社作成(閲覧日:2020年7月2日)
https://katadata.co.id/infografik/2020/06/26/larangan-kantong-plastik-di-tengah-pandemi

 

また、回答者の90%以上が、この規制によって「利益が減少する」と答え、回答者の半数以上が「利益が30%以上減少する」と回答しています。

出典:Katadata WEBサイトより弊社作成(閲覧日:2020年7月2日)
https://katadata.co.id/infografik/2020/06/26/larangan-kantong-plastik-di-tengah-pandemi

 

現在、インドネシアでは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、様々な業界、事業者が経済の打撃を受けており、このようなタイミングでのプラスチック製レジ袋の利用禁止に対し、小売店からは反対の声が多く挙がっているのも事実です。

プラスチック製レジ袋の利用を継続したい理由については以下のような回答が挙がっています。

出典:KatadataWEBサイトより弊社作成(閲覧日:2020年7月2日)
https://katadata.co.id/infografik/2020/06/26/larangan-kantong-plastik-di-tengah-pandemi

 

プラスチック製レジ袋の継続を希望する理由については、代替品となる紙袋などは比較的に①費用がかさむ、②入手するのが難しい、③壊れやすい、といった理由が挙げられました。

 

また、消費者はプラスチック製レジ袋に慣れているため、紙袋などの代替品にした場合に消費者が気に入らない可能性があることも懸念点として挙げられました。

インドネシアでは、90%以上の中小企業が新型コロナウイルスによって売上が減少していると報じられており、このタイミングでのプラスチック製レジ袋の禁止は事業者への更なる負担となると見られています。

本調査に回答した中小の小売業者の95.5%6月末時点でプラスチック製レジ袋を使用しており、回答者の約6割は、「プラスチック製レジ袋を禁止する規制の導入については新型コロナウイルスのパンデミックが終了した後、もしくは経済が通常通りに戻ってからの導入を希望する」旨回答しています。

 

なお、2016年に、インドネシア政府主導でスーパーや小売店でのプラスチック製レジ袋の有料化が行われましたが、最初の3か月間でレジ袋の使用量が従来の使用量より約25-30%程度減少したと報告されています。

しかし、正式な規則として導入されたものではなく、あくまで試験的な取り組みだったため、消費者からの批判によってこの取り組みは数か月で終了しました。

小売店などは消費者に対してマイバッグを持参するよう事前に周知活動を行ってきていましたが、プラスチック製レジ袋が配布禁止になったことを知らない消費者もまだまだ多くいるため、ジャカルタ環境局は引き続き消費者に対する周知活動を行い、更にジャカルタ州内のショッピングモールなどいくつかの店舗でプラスチック製レジ袋を使わないよう見回り監督を行うなど、業者に対しての周知活動も行っていく意向です。

参考:ジャカルタ環境局WEBサイトより

弊社は、4年程前よりインドネシアの廃棄物関連の調査などを行うようになり、インドネシア環境局とのネットワークもございます。

インドネシアの最新状況に関するセミナーの実施や、オンラインでの調査代行なども承っておりますので、ご興味がある方は是非お気軽にお問い合わせ下さい。

 

参考コラム:

 

株式会社インドネシア総合研究所
お問い合わせフォーム
Tel: 03-5302-1260

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