【コラム】インドネシアの高齢化の現状と課題
近年、世界的に高齢化が進み世界人口の7%以上が高齢者と言われています。
この「7%」という数字は高齢化社会を示す一つの目安となっており、「高齢化社会」とは人口のうち高齢者が占める割合が7%を超えている状態であるとWHO(世界保健機構)によって定義づけられています。
現在インドネシアは人口ボーナス期で、少子高齢化社会となるのは2040年以降と予測されています。まだまだ子供や若い世代が多く、平均年齢は2020年時点で約30歳程度と言われていますが、医療の発展や寿命が長くなっていることから徐々に高齢者の割合も増加しつつあります。
では、インドネシアにおける高齢者の割合や、高齢者の現状はどうなっているのでしょうか。
今回のコラムでは、インドネシアの高齢者についてご紹介します。
1998年にインドネシアで制定された法律で示されている通り、60歳以上の人を高齢者として定義して紹介していきます。
本コラムの出典は全て以下のインドネシア中央統計局(BPS)の報告書からとなります。
出典:インドネシア中央統計局(BPS)、Statistik Penduduk Lanjut Usia 2020 (インドネシアの高齢者人口統計2020)
より弊社作成(閲覧日:2021年3月8日)
https://www.bps.go.id/publication/2020/12/21/0fc023221965624a644c1111/statistik-penduduk-lanjut-usia-2020.html
インドネシアにおける高齢者の割合
インドネシアにおける高齢者の割合は、年々増加し続けています。
下図は、2010年から現在までのインドネシアにおける高齢者と5歳以上の子供の割合の推移と今後の予想です。
上図から分かる通り、高齢者が増える一方で5歳以上の子供の割合は減っており、今後高齢化が進んでいくことが予想されます。
上述の通り、WHOの定義では高齢者は65歳以上とされていますが、インドネシア国内では高齢者は「60歳以上」と定義されています。そのため、インドネシアの65歳以上の高齢者の数となるとこのグラフから数字が変わってはきますが、このグラフよりインドネシア全体で今後の高齢者の割合は増加傾向にあるということが読み取れます。
また、インドネシアにおける高齢者の男女の割合は下図の通りです。
女性の割合が男性より若干多いですが、男女比の差は殆どありません。
また、高齢者の年齢層別の割合を見てみると、60〜69歳の若い層が多く、80歳以上の層が少ないことが分かります。
現段階では80歳以下の層が多いですが、今後、寿命が伸び、後期高齢者が増えていくことが予想されます。
インドネシアにおける高齢者扶養率
高齢者扶養率とは、生産年齢人口(15歳〜59歳)に対する60歳以上の人口の比率を示しており、高齢者人口の増加に比例します。
インドネシアにおける高齢者扶養率は年々増加傾向にあります。
下図は2010年〜2020年のインドネシアにおける高齢者扶養率の推移です。
2010年から徐々に増加し2020年には15.54%となりました。100人の生産年齢の人々が約15人の高齢者を扶養するということを表しています。
ご存知の通り、日本は2019年時点で、高齢者扶養率が47.12%と世界一位になり、日本政府は年金、社会、保障制度において様々な対策に頭を悩まされています。
今後、インドネシア政府は少子化を防ぐための、子育て制度を長期的な視点で考えていく必要があります。
インドネシアの高齢者の健康状態
インドネシアにおいて、1ヶ月の間で4人に1人の高齢者が病気にかかっていますが、ここ5年間で病気にかかった高齢者の割合は減少傾向にあることが分かっています。
下図はインドネシアにおける高齢者の罹患率(病気にかかった人の割合)の推移です。
2015年から2020年にかけて罹患率が約4%下がっていることが分かります。
また、高齢者が掛かる病気としては、心臓病・糖尿病・脳卒・リウマチなどが挙げられ、原因は加齢によるものが殆どです。
前述の病気以外には肺に病気を患う人も多く、高齢者の喫煙率が約20%を越えるインドネシア特有の問題もあります。
インドネシアの高齢者の就業率
インドネシアの高齢者のうち2人に1人は未だ就業しています。
就業している高齢者のうち、85%の人々が経済活動が行政の元に行われていないインフォーマルセクターに属し、労働基準や社会保障によって保護されていない状況にあります。
インドネシアの高齢者の就業率が高い理由として、働く元気があるというだけではなく、福祉の水準が低く働かざるを得ない状況であるということが背景の一つとして挙げられます。
インドネシアの高齢者の貧困
現在、インドネシアの高齢者のうち約36%は貧困状態にありますが、高齢化が進むにつれて貧困状態にある高齢者の割合が増えると予想されています。
世界銀行は高齢者の貧困問題を克服するために、インドネシア政府が行う社会扶助プログラムのうち非現金食料支援プログラム(BPNT)と希望ある家族プログラム(PKH)を更に拡大するよう推奨しています。
参照:https://kbr.id/nasional/12-2019/bank_dunia__perlindungan_lansia_di_indonesia_lemah/101649.html
非現金食料支援(BPNT)とは、貧困層に対してキャッシュレスで米・食糧の援助を行なうプログラムです。高齢者で非現金食料支援プログラム(BPNT)を受けた割合は、約19%となっています。
また、希望ある家族プログラム(PKH)とは、教育・保険サービスを条件に現金給付を行うプログラムのことです。
インドネシアの高齢者で家族プログラム(PKH)を受けた割合は、約11%となっています。
非現金食料支援プログラム(BPNT)、家族プログラム(PKH)どちらのプログラムにおいてもIT化が進み、ATMの使い方がわからないなどの問題で給付を受ける資格があるのにも関わらず受けられない高齢者がいるのが現状です。
これらのプログラムによって支援された人々の満足度は大変高いことが分かっていますが、給付資格があるにも関わらずサービスを享受できていない高齢者向けに受給方法についての周知の徹底を行うことや、場合によっては受給方法の見直しをすること等が今後の課題として挙げられるでしょう。
今回のコラムでは、インドネシアの高齢者について様々な視点から紹介しました。
弊社では様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。
セミナーの開催や講師派遣なども行っておりますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。
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