【CO2見える化レポート】③インドネシアにおける石炭利用と今後のエネルギー政策
様々なエネルギー源の中でも二酸化炭素の排出量が多い石炭ですが、インドネシアは世界有数の石炭産出国であることをご存じでしょうか。世界各国への輸出のみならず、国内でも石炭の消費が盛んです。また、世界有数の石炭輸入国である日本にとっては、インドネシアはオーストラリアに次ぐ石炭輸入相手国となっています。世界的に二酸化炭素の排出量削減が呼びかけられている中、石炭などの化石燃料の使用は厳しく見られています。今回のレポートでは、世界における石炭の動向を俯瞰しながら、インドネシアにおける石炭の消費と今後のエネルギー政策に関してお伝えします。
世界の石炭消費・産出について
(出典:国際エネルギー機関「World coal consumption, 1978-2020」より弊社作成)
世界の石炭消費量は、2000年代前半以降上昇を続けていましたが、現在は横ばいとなっています。中国が世界第1位の石炭消費国であり、インド、アメリカに次いで第4位の日本は世界有数の石炭消費国です。自国で石炭が大量に産出されるインドネシアも世界第7位の石炭消費国です。
※単位PJとは、国際単位系のエネルギー単位で、ペタは10の15乗、1ジュールは0.24カロリーの熱量を表しています。
(出典:国際エネルギー機関「World total coal production, 1971-2020」より弊社作成)
世界各国の石炭産出量でみるとロシアが第1位の産出国であり、インドネシアは第2位です。最近では、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で各国がロシア産の石炭の輸入を制限している中、インドネシア産石炭の需要が高まっており、各国へ輸出されています。インドネシアは生産量・消費量ともに世界屈指の石炭大国となっています。
参考:https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/world-coal-consumption-1978-2020
https://www.iea.org/data-and-statistics/charts/world-total-coal-production-1971-2020
インドネシアにおける石炭産出事情
(出典:国際エネルギー機関「World total coal production, 1971-2020」より弊社作成)
インドネシア鉱物資源省によると、2022年時点でインドネシアの石炭の埋蔵量は388億トンであり、近年は毎年約6億トンの石炭が産出されています。埋蔵量の多くはスマトラ島とカリマンタン島に集中しており、それぞれ約120億トン(34%)、約140億トン(39%)となっています。
(出典:インドネシア共和国エネルギー鉱物資源省「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2021」より弊社作成)
インドネシアにおける産業別石炭消費量を見ると、主に火力発電所の燃料として使用されているため、大半は電力用の消費ですが、産業でみてみるとセメント・繊維・肥料や鉄鋼産業などで石炭の使用が多いことがわかります。
参考:https://www.cnnindonesia.com/ekonomi/20220405153905-85-780608/esdm-cadangan-batu-bara-ri-317-miliar-ton-per-januari-2022
https://www.esdm.go.id/assets/media/content/content-handbook-of-energy-and-economic-statistics-of-indonesia-2021.pdf
https://www.esdm.go.id/assets/media/content/content-buku-road-map-pengembangan-dan-pemanfaatan-batubara.pdf
インドネシアにおけるエネルギー政策
(出典:インドネシア共和国エネルギー鉱物資源省「Handbook of Energy & Economic Statistics of Indonesia 2021」より弊社作成)
現在インドネシアの一次エネルギー供給源は石油と石炭で7割以上を占めており、二酸化炭素排出量の多い化石燃料への依存度の大きさが課題となっています。
【国家エネルギー総合計画(Rencana Umum Energi Nasional : RUEN)】
インドネシアにおける二酸化炭素削減に向けた具体的な計画や再生可能エネルギー導入に関しては、2014年に策定された国家エネルギー総合計画(Rencana Umum Energi Nasional : RUEN)に規定されています。
(1)都市ガスネットワークの強化
インドネシアでは現在、都市ガスよりも二酸化炭素排出量の多いLPガスを利用している世帯が多いですが、二酸化炭素排出量がより少ない都市ガスの導入世帯を増やすことを目標とし、以下の2点を定めています。
①2024年末までに250万世帯に都市ガスを導入する。
②2050年末までに都市世帯の50%を都市ガスネットワークに組み込む。
(2)電気自動車の利用増加
インドネシアでは、石油輸入を減らすための代替手段として電気自動車の利用を増やすことを目標とし、以下の2点を定めています。
①2025年までにインドネシアの総自動車販売数の20%を電気自動車にする。
②2040年までには従来の内燃エンジン(ICE)車の販売をゼロにし、インドネシア国内の車の50%を電動自動車とする。
この2点を補足して、二輪車に関しても2025年までに1900万台の電動二輪車の利用、2050年にはすべての二輪車が電動化され累計2億1900万台に達すると予測されています。
(3)バイオ燃料の使用促進
インドネシア政府は石油燃料の使用抑制のため、バイオ燃料の使用を促進しています。軽油にバイオ燃料を30%配合したB30の使用を2020年から、バイオ燃料の割合が50%のB50を2021年から、そして将来的にはバイオ燃料100%のB100の使用を2030年から開始することを求めています。
(4)石炭火力発電所開発の停止と再生可能エネルギーの導入
インドネシア政府は新規の石炭火力発電所の開発を原則禁止し、再生可能エネルギーを導入することを定めています。石炭火力発電所の耐用年数を30年とし、2025年以降は新規の石炭火力発電所を原則開発停止とします。再生可能エネルギーの導入目標は2025年までに23%としております。また、その電源の構成は地熱 7.2GW、大規模水力 17.9GW、小規模水力 3GW、バイオマスおよびバイオガス 5.5GW、太陽光 6.5GW、風力 1.8GW、その他 3.1GW で合計 45.2GW としています。インドネシアは赤道直下ということもあり、太陽光エネルギーにも期待されています。
参考:https://iesr.or.id/download/national-energy-general-plan-ruen-2020
今回のレポートでは、世界の石炭生産・消費動向やインドネシアにおける石炭生産・消費動向、そしてインドネシアにおける今後のエネルギー政策に関してお伝えいたしました。インドネシアは石炭や石油など天然資源が豊富であるため、自国でもそれらの消費が盛んでした。しかしながら、国際的な脱炭素化への取組動向を踏まえ、インドネシアも化石燃料以外の燃料の活用に関して対策を講じていることがわかりました。
インドネシアにおいては、環境にやさしい燃料、自動車の開発、都市ガスなどのインフラの整備が急務となっています。優れた環境技術を持つ日本の製品は、インドネシアの環境市場において非常に魅力的であることは間違いありません。日本からインドネシアへ最新の環境技術移転や製品輸出をご検討の事業者の皆様、ぜひ弊社のアドバイザリーサービスのご活用をご検討ください。
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