【コラム】インドネシアにおけるアフターコロナの観光産業事情

新型コロナウイルスの感染拡大が収束傾向にある中で、再び活気づいてきたものの一つがインドネシアの観光産業です。
今回の記事では、昨今のインドネシアの観光産業の状況と、最新観光トレンド予測をご紹介します。

インドネシアの観光産業の現在

ビーチリゾートとして日本人にも人気のバリ島をはじめ、観光資源に富んだインドネシアには、新型コロナウイルスのパンデミック前は年間1600万人以上もの海外観光客が訪れていました。

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年、続く2021年は、インドネシアを訪問する外国人観光客の数は急激に落ち込みましたが、2022年に規制緩和が進んで以降、観光客数は回復傾向にあります。

2022年1月から12月までにインドネシアを訪れた外国人観光客は約895万人で、2021年の同じ時期の観光客数と比較して447.08パーセントと劇的に増加しました。
また、2022年12月の外国からの観光客到着数は、前月と比較しても36.19%増加しました。

図:インドネシア統計局WEBサイトhttps://www.bps.go.id/publication/2023/05/12/4dcc6b622ae0c4e7ea6a61e8/statistik-kunjungan-wisatawan-mancanegara-2022.html(閲覧日:2023年5月30日)を元に弊社作成

外国からインドネシアを訪問する観光客数はいまだ2019年の水準までは回復していないものの、回復の伸びは好調で、見通しは明るいと言えるでしょう。

世界四位の人口を抱えてなお人口増加期にあり、GDPも上昇傾向で「次期先進国」とも呼ばれるインドネシアには、まだまだ市場の成長の余地があると考えられます。
インドネシアの観光産業も、国内国外どちらからの観光客もますます増加していくことが期待されます。

観光に欠かせないホテルなどの宿泊施設の建設件数も、インドネシア国内では2020年までは大幅な増加傾向にあり、新型コロナウイルスの感染が拡大した2021年に一度落ち込んだものの、2022年には再び増加傾向に転じました。

図:インドネシア統計局WEBサイトhttps://www.bps.go.id/publication/2022/12/27/efc507a7343d35f9e0174421/statistik-hotel-dan-akomodasi-lainnya-di-indonesia-2022.htmlより弊社作成(閲覧日:2023年5月23日)

インドネシアの最新観光トレンド予測

インドネシアの観光・クリエイティブエコノミー省が発表した2022-2023年の旅行トレンド予測では、“From No Room in Hospital, to No Room in Hotel”(病院に空きがない状態から、ホテルに空きがない状態へ)という文言が冒頭に掲げられ、インドネシアの観光産業の回復に意欲的な姿勢が示されています。

同予測では、新型コロナウイルス感染拡大収束後のインドネシアにおける宿泊施設のトレンドとして以下が挙げられています。
・カプセルホテル
・客室内での娯楽
・グランピング
・ボートでの旅行
・CHSEの重視
・ホテルのコンセプトの強化

①カプセルホテル

日本発祥のカプセルホテルは2000年代からインドネシアを含む東南アジアに広がり、インドネシアでも各都市部を中心に増加してきました。
インドネシアにおいて、カプセルホテルは個人旅行者などをターゲットに新型コロナウイルスのパンデミックにおいても積極的に事業展開がなされ、価格の安さなどから今後も伸びが見込まれます。

②客室内での娯楽

客室内での娯楽の充実は、新型コロナウイルス感染拡大を受けてストリーミングサービスなどが一般化したことで、ホテル内でもスマートTVの設置やWi-Fiの完備などが進んだことを指しています。
とりわけ、これまでは設備に力を入れていなかったインドネシアの都市部の一般的なホテルであっても、旅行客の獲得のために客室内設備を改善するケースが増えています。

③グランピング/ボートでの旅行

インドネシアでは、新型コロナウイルス感染拡大を経て、ほかの観光客との距離をとりつつ旅行を楽しむスタイルを選ぶ人が増加しました。また、自然、エコツーリズム、ウェルネスといったコンセプトを旅行に求める人も増えています。
こうしたトレンドに対して、リゾートのような快適さを提供しつつ自然に触れ合うことのできる、グランピングやボートでの旅行が今後人気をさらに博していくことが見込まれます。
また、ボートでの旅行は、これまで空路でのアクセスが不自由であったことなどから観光地として十分に開発されてこなかったエリアをさらに発展させうる可能性があります。

④CHSEの重視
CHSEとは、Cleanliness(清潔)、Hygiene(衛生)、Sanitation(公衆衛生設備)、Environment(環境)の略語です。新型コロナウイルスのパンデミック下で社会の衛生意識が向上したことを受け、それに対応する形で宿泊施設の衛生面での管理をより一層強化していくことが求められています。

⑤ホテルのコンセプトの強化
ホテルの建設が進む中で競争が激しくなる中、地元のアーティストなどとコラボしてコンセプトの差別化を図る動きも進んでいます。

ここでご紹介したほかにも、インドネシアの観光クリエイティブエコノミー省は、ノマドワークなどがパンデミック収束後も続いていくといった見通しを示しています。
実際に、インドネシアでは最近長期滞在ビザ(セカンドホームビザ)の制度が2022年12月に正式に施行され、バリ島などを中心にノマドワーカー誘致の機運が高まっています。

出典:インドネシア共和国観光クリエイティブエコノミー省 WEBサイト
https://kemenparekraf.go.id/pustaka/buku-tren-pariwisata-2022-2023(閲覧日:2023年5月23日)

インドネシアでのノマドワークやビザに関しては以下の記事でもご紹介しています。

一方、インドネシアでは今年4月の刑法改正により、婚外交渉に対する取り締まりが条文化されたことで、人権侵害の批判に加え、国内の観光事業者からは観光客の遠のきを懸念する声が上がりました。

一時は法の対象に外国人観光客も含まれるとされていましたが、こうした批判の殺到を受けて、政府は外国人観光客は適応対象外であると発表しました。
現状法律の適用対象や適用の条件が限られていることなども考慮すると、すぐに観光産業に影響することは少ないでしょう。

新型コロナウイルス感染の収束を受けて活気づくインドネシアの観光産業は、今後ますます発展していくことが見込まれます。

弊社では、インドネシアの現地調査から、現地での会社設立など様々なサポートを行なっております。
ご興味がおありの方は、いつでもお気軽にお問合せ下さい。

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