【コラム】インドネシアにおける子どもの発育と食育

子どもにとって食事は発育と健康のため欠かせないものですが、日本では乳幼児健診の際に栄養指導があったり、小学校では給食が提供されたりなど、子どもの栄養管理への取り組みが古くから行われています。インドネシアにおいても、子どもの栄養管理に関する意識が年々高まっております。

インドネシアは、近年子どもの栄養失調や肥満への問題意識が高まっており、国をあげて子どもの栄養状態改善の取り組みを行っています。今回のコラムでは、インドネシアの子どもの栄養状況をお伝えし、インドネシアにおける食育の取り組みに関してご紹介いたします。

インドネシアの子どもの発育について

インドネシアでは、子どもの栄養不良が大きな問題となっており、下のグラフに示したようにインドネシア中央統計局の2018年の調査によると、0-5歳の子どもの17.7%が栄養不足で、8%が肥満となっています。また、2021年のインドネシア栄養状態調査(SSGI)によると、インドネシアで何らかの発育不良を抱える0-5歳の乳幼児の割合は24.4%となっており、東南アジアでもミャンマーの約35%に次ぐ水準となっています。

こうした子どもの栄養状態の問題に関して政府は危機感を示しており、2024年までに5歳未満の乳幼児の発育不良を14%まで減少させることを目標として掲げています。特に栄養状態の良くない乳幼児の多い東ヌサトゥンガラ州、西スラウェシ州、アチェ州、西カリマンタン州、南カリマンタン州、中央スラウェシ州、西ヌサトゥンガラ州に対する栄養状態改善のための集中的な予算配分を要請しています。

(出典:インドネシア中央統計局データベースより弊社作成)

(出典:インドネシア中央統計局のデータより弊社作成)

参考:
https://nasional.kompas.com/read/2022/05/11/17322001/pemerintah-targetkan-angka-prevalensi-stunting-turun-3-persen-pada-2022
https://sehatnegeriku.kemkes.go.id/baca/umum/20211227/4339063/penurunan-prevalensi-stunting-tahun-2021-sebagai-modal-menuju-generasi-emas-indonesia-2045/
https://www.bps.go.id/indicator/30/1777/1/prevalensi-balita-kekurangan-gizi-menurut-provinsi-di-indonesia-psg-.html
https://www.bps.go.id/indicator/30/1761/1/persentase-balita-obesitas-bb-tb-kelompok-umur-0-59-bulan-menurut-provinsi.html
https://www.litbang.kemkes.go.id/buku-saku-hasil-studi-status-gizi-indonesia-ssgi-tahun-2021/

インドネシアにおける食育の取り組み

【全国朝食週間(Pekan Sarapan Nasional:PESAN)】
インドネシアでは、児童の栄養状態改善のために2013年以降毎年2月14日-20日の1週間を全国朝食週間と定めました。インドネシアでは学齢期の児童の約半数近くが健康的な朝食を食べていないあるいは、栄養バランスの取れていない朝食しか食べていないことが問題となっていました。

この全国朝食週間には、多くの企業が活動しながら朝食に関する啓発活動を行っています。Heinz ABC Indonesiaは子どもたちに無料の朝食を提供し、Unileverは子どもたちを朝食へ招待し、朝食に関する教育プログラムを実施しました。マクドナルドはこの全国朝食週間には1000個のチキンマフィンを無料提供しています。

参考:
https://nasional.kompas.com/read/2013/01/08/17165210/pekan.sarapan.nasional.dideklarasikan
https://www.liputan6.com/lifestyle/read/4889253/pekan-sarapan-nasional-21-ribu-paket-makanan-siap-dibagikan-untuk-anak-anak-kurang-beruntung
https://industri.kontan.co.id/news/mcd-akan-bagikan-1000-sarapan-gratis-awal-pekan-depan
https://mix.co.id/marcomm/news-trend/luncurkan-varian-baru-blue-band-manfaatkan-momentum-pekan-sarapan-nasional/

【学校給食プログラム(Program Gizi Anak Sekolah:PROGAS)】
インドネシアでは、1990年代から学校給食プログラムは実施されておりましたが、子どもたちにおやつを提供する程度のものでした。2015年に開始された学校給食プログラム(PROGAS)はこれまでのおやつの提供とは異なり、栄養バランスの取れた食事を提供するプログラムになっています。

本プログラムで提供される食事は1食あたり400-500kcalのエネルギーで10-12gのたんぱく質を含み、地元の食材を使用したメニューで朝食として提供されています。提供頻度としては年間約40回程度が朝食として提供されていますが、日本の給食の様な頻度で提供される状況には至ってはおりません。

また、朝食の提供と同時に児童への栄養教育も実施されています。このプログラムを通じて、栄養や食への知識を深め感謝の気持ちを醸成するとともに、手を洗うなどの衛生意識の向上を目指したものになっています。

参考:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi/76/Supplement/76_S86/_pdf
https://jendela.kemdikbud.go.id/v2/fokus/detail/program-gizi-anak-sekolah-untuk-generasi-sehat-cerdas-produktif-dan-kompetitif

本コラムでは、インドネシアの子どもの発育と食育に関する取り組みに関してご紹介いたしました。インドネシアは、乳幼児や学齢期の児童の栄養不良がまだまだ深刻な状況です。そして、政府主導で国民への啓発活動や給食プログラムが行われ、子どもの栄養状態の改善への取り組みが行われています。日本では乳幼児の離乳食や栄養補助食品が充実しており、市町村などによる母親への栄養指導も充実していることから、子どもの栄養状態は良好であるといえます。

こうした日本の乳幼児向けの離乳食技術や栄養補給のためのお菓子、飲料などは、乳幼児の栄養状態改善に取り組むインドネシアにおいて需要が高い可能性があります。インドネシアにおける食ビジネスに関心を持たれる事業者様は、乳幼児向けの食品市場に目を向けられてはいかがでしょうか。

インドネシアにおける乳幼児向けの食ビジネスや教育事業に関心をもたれた事業者の皆様、ぜひ弊社にお問い合わせくださいませ。

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-6804-6702

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