【コラム】進出企業にとってのインドネシア特有リスクとは何か?

日系企業がインドネシアに進出するに当たり、考慮すべきリスクは沢山ありますが、今回は、法的不安定性と人材の二点に絞ってご説明いたします。

1997年のアジア経済危機において生じた経済上の大混乱が、32年間続いたスハルト政権を終焉させる契機となってからもう20年が経過しました。

この間、インドネシアは驚くべき短期間で民主化を達成した国として注目された時期もありましたが、今回紹介する事例は、スハルト時代からの大きな変化と共に、同国に根強く残っている習慣を知っておくことも、必要であると示唆しているように思います。

インドネシアにおける法 〜法律と実務が違う?

インドネシアでは、法律について、「条文と運用の乖離」のような言い方が平然となされることがありますが、これはいったいどういうことなのか。例から見ていきましょう。

日本からインドネシアに行く場合は、2015年6月以降、観光旅行や親族の訪問などであればビザが免除されるようになりましたが、商談などを行う場合はビザが必要になります。

(注:ただし、ビザが免除されるのは滞在期間が30日以内の場合に限られます。)

では、商談の場合、どのビザを取得すればよいのでしょうか?すぐに思いつくものとしては、「到着ビザ(VOA)」、「インデックス番号B211のシングル・ビザ」、「インデックス番号B212のマルチプル・ビザ」があります。

シングルとマルチプルの違いは、一回の入国だけなのか、有効期間中に何度も入国できるのか、という違いだけですので、ここではVOAとB211の違いは何か、という点に絞ってご説明させていただきます。

実のところ、B211は厳密には三種類に分かれますが、「B211A」に限って言えば、その目的は「商用(工場訪問は除く)、又は社会文化訪問」ですので、VOAと基本的には同じで、その違いは滞在可能日数に求められます。

VOAの滞在可能日数は、発効後30日で、一回だけ延長できて最大60日までとなりますが、B211Aの場合、初回60日で、最大6か月まで延長可能ということですので、この点には確かに違いがあります。

ただし、実務的に考えると、出張者の滞在期間が30日を超えることは稀でしょうから、滞在期間が30日以内だと違いがない、ということにもなります。少々わかりにくい例だったかもしれませんが、「存在理由のわからないカテゴリーが存在する」ということが、インドネシアではよくあります。

さらに言えば、「B212」のマルチプル・ビザについて、2017年1月25日以降、ジャカルタの入国管理局が発行する「VTT(査証発給許可証、通称テレックスビザ)」が必要になりました。

このVTTは、インドネシア側の受け入れ企業(ビザを取る人をインドネシア側で受け入れる企業)がインドネシアの入国管理局に申請するものですが、申請にあたり「外国人雇用計画書」をインドネシアの労働移住省に提出して、同省から推薦状をもらわないと入国管理局に申請できない、という代物になっています。

B212は所謂「就労ビザ」ではありません。就労しないのに、どうして「外国人雇用計画書」を、その外国人を雇用するわけでもない現地企業が提出する必要があるのでしょうか?

また、当初はVTTに基づくビザの発行には、在日本インドネシア大使館におけるインタビューが必要、と決められていました。しかし、ビザを申請する人は非常に多いので、インタビューをするスペースや、人材が足りない、ということでこの規則の実施は「延期」された状態にあります。これは「法律に書いてあることが実際に行われていない事例」の一つになります。

どなたにもわかりやすく身近な例、という観点からビザの問題を取り上げましたが、インドネシアでは「条文と運用の乖離」と呼ばれる事柄が山のように存在し、それらが「行政手続きが非常に不透明で分かりにくい」と言われてしまう理由の一つになっています。

インドネシアにおける人材の確保

インドネシアの経済成長と連動して、日本企業のみならず、海外企業の進出が増加している状況の中で、優秀なインドネシア人、特に中間管理職人材を確保するのが非常に難しい状況が続いています。
「終身雇用制」は本家日本でも崩れつつあるのかもしれませんが、インドネシアにおける「ジョブ・ホッピング」の激しさはつとに有名です。

インドネシアで仕事をしておりますとよく聞くお話として、上司が部下に「何か問題はないか」と聞いても、多くの場合「問題はありません」という回答が返ってきます。そして、その直後に問題が発覚してビックリ、という事例が多数ございます。

わかりやすさのために単純化して述べておりますが、インドネシアでは「上司は問題を報告されると機嫌が悪くなる」と考えられ、基本的には上司には問題を報告しない、という風土があります。日本で言うところの「報・連・相」が、相当な努力をしないと成り立たないのです。こうした環境の中で、小まめに連絡してくれる人材は大変に貴重なのですが、そういう人材に限ってすぐに他社に引き抜かれたりするものです。

さらに厄介なのは、インドネシアではキックバックが当たり前の世界であり、非常に真面目で非の打ちどころのないスタッフでも、平然と仕入れ業者からキックバックをもらっていることがあります。これは、個人の問題というよりも、文化の問題であり、彼らにとってキックバックがあまりにもナチュラルで、誰も悪気がない、という状況になると、キックバックが発覚した際に真面目な日本人駐在員ほど、「怒っていいものやら、どうすれば」と悩むことになります。

いずれにしても、長い期間で培われた慣習を持つインドネシアの人々に対し、雇用したからといって短期間で自社に合った人材に変更することは、並大抵なことではありません。また、育成が難しいからと少数の人材に依存した経営を行っていると、その人材が抜けた時にさらに困難な状況を迎えることになってしまいます。

インドネシアにおける人材確保ならインドネシア総研に

インドネシア総研では、これまでインドネシアに進出した日系企業の人材確保をサポートしてまいりました。非常に高度な人材をご採用いただいたケースもあります。

インドネシアでの人材確保、特に特殊人材の探索はネットワークがなければ難しいものです。ぜひ検討段階からでも弊社にご相談いただくことをおすすめいたします。

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-5302-1260



 

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