【コラム】インドネシアの子供たちは十分な食事を得ているか?~地域・雇用・ジェンダーによる食糧消費量の格差~

インドネシアの生産世代となる子供たちは、国家開発において重要な基盤となる存在です。
そのため、インドネシアの子供たちが十分な食料を得て栄養を確保することは、子供や親だけではなく国全体にとって非常に大切です。
本コラムでは、インドネシアの子供の食料状況についてご紹介します。
本コラムの出典は、全て以下のインドネシア中央統計局(BPS)の報告書からとなります。
出典:Cerita Data Statistik untuk Indonesiaを基に弊社作成(閲覧日:2025年6月15日)
https://www.bps.go.id/id/publication/2025/02/27/a50c09767f862aaa52df8ec9/cerita-data-statistik-untuk-indonesia—membangun-generasi-emas-melalui-kecukupan-konsumsi-pangan.html
インドネシアの子供がいる世帯の食料摂取状況
以下は、インドネシアの7〜15歳の子供がいる世帯における食料摂取状況です。

7〜15歳の子どもがいる世帯のうち、十分な食料を得られていない世帯の割合は 6.96% です。これは、インドネシア全体の世帯平均(10.64%)と比較すると低く、子どもの成長を支えるため、子どもがいる世帯では食料確保を優先している傾向が見られます。
また、食料が十分に得られていない世帯の州別割合をみると、ジャワ州が最も多く、全体の29.89% を占めています。これは人口の多さも一因と考えられます。
都市部と地方部の比較

7〜15歳の子どもがいる世帯の食料状況を比較すると、都市部よりも地方部の方が「十分な食料を得られていない世帯の割合」が高いことがわかります。
一般的には、地方部では農業に従事する世帯が多いため、食料が確保しやすいと思われがちです。
しかし実際には、気候変動による不作や自然災害、インフラの未整備による流通の不安定さ、物価の高騰といった問題により、十分な食料を安定的に得ることが困難な地域も多く存在します。
こうした背景から、地方部の食料不安は構造的な課題であり、地域ごとの特性に応じた支援策の導入が求められます。
性別による比較

上図から、7〜15歳の子どもがいる世帯の食料状況を性別で比較すると、男性が世帯主の世帯に比べて、女性が世帯主の世帯の方が「十分な食料を得られていない割合」が高いことがわかります。
これは、女性の世帯主の多くが単身で家計を支えているケースが多く、収入や就業機会の面で不利な立場にあることが要因と考えられます。
また、社会的支援やインフラの整備が行き届いていない地域では、女性の世帯主が十分な食料を確保することがより困難になる傾向があります。
雇用形態による比較

上図から、7〜15歳の子どもがいる世帯のうち、「十分な食料を得られていない世帯」の71%が非正規雇用であることがわかります。
これは、正規雇用に比べて非正規雇用の所得が不安定であることが大きな要因と考えられます。
非正規雇用では、収入の変動が大きく、生活費の中で優先順位が下がりがちな食料への支出が制限されやすい傾向があります。
特に、食料価格の上昇や経済情勢の悪化が起きた際には、その影響をより強く受ける可能性があります。
世代別の比較

X世代:1965年〜1979年に生まれた世代
Y世代:1980年〜1995年に生まれた世代
Z世代:1996年〜2012年に生まれた世代
世代別に見ると、ベビーブーマー世代およびZ世代では、「十分な食料を得られていない」と回答した割合が他の世代に比べて高いことがわかります。
ベビーブーマー世代では、高齢化による就業機会の減少や年金収入の限界などが影響していると考えられます。
一方、Z世代に関しては、インスタント食品やファストフードの利用増加など、ライフスタイルの変化が背景にあり、家庭での食事準備や食への関心が相対的に低下している可能性も考えられます。
インドネシア政府による対策
インドネシア政府は、食料不足の問題に対応するため、貧困層を対象にさまざまな支援策を実施しています。
現金給付や食料支援を行う「KKS(Kartu Keluarga Sejahtera)」や、キャッシュレスで米や食料を支給する「BPNT(Bantuan Pangan Non Tunai)」などの制度があります。
しかし、これらの支援を実際に受給できている世帯は、食料不足に直面している世帯のごく一部にとどまっているのが現状です。
今後は、支援の対象範囲や配布体制の拡充が急務といえるでしょう。
今回のコラムでは、インドネシアの子供の食料摂取状況についてご紹介しました。
食料不足は、世帯主が女性、非正規雇用などの社会的に弱い立場である場合に起こっていることがわかりました。
また、食料不足は保険、教育、経済、金融施設などの基本的な設備が整っていない農村部や、に住む世帯でも頻繁に発生しています。
食料不足の蔓延は、ただ単に食料が不足するだけでなく、社会的、経済的、環境的な問題を反映する多面的な問題です。
また、食料不足により十分な栄養が確保できないと、人材の質の低下など人々の福祉に深刻な影響を与えます。
子供の食料不足の問題は、インドネシアの国の発展にも関わる非常に需要な問題のため、インドネシア政府も更なる対策が求められるでしょう。
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