【コラム】インドネシアの2021年のラマダン期間中の広告事情について
インドネシアでは、今年もイスラム教の宗教行事であるラマダン(断食月)並びにレバラン(断食明けの大祭)が行われました。
日本で言うお正月のように、レバラン時には毎年多くの人が故郷に帰省し、親族や友人と集まったりします。
また、レバラン手当(THR)、いわゆるボーナスも支給され、久々の集まりのために多くの人が衣服を新調したり、食料品を多く調達したりします。
ラマダンからレバランにかけて人々の購買力は大幅にアップする傾向にあり、毎年インドネシアではラマダンからレバランにかけて企業が様々な広告を打ち出します。
新型コロナウイルス感染拡大防止策として、2020年と2021年はレバラン時の帰省禁止となっていましたが、それでもやはりラマダンとレバランが、イスラム教を信仰する人々にとって1年に一度の特別な行事であることは変わりありません。
今回のコラムでは、今年のインドネシアにおけるラマダンからレバラン時期の広告事情についてご紹介します。
インドネシアにおけるラマダン期間のテレビ広告について
インドネシアでは、新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が増えたことがテレビの視聴者増加を促し、テレビ業界は、今年のラマダンの最初の週に4.4兆ルピアの広告費を得たことが調査会社Nilsen mediaによって明らかになりました。
去年の広告費1.889兆ルピアと比較してもラマダンの最初の週の時点で2倍以上増加していることが分かります。
テレビ広告費増加の要因として、上述の通り外出自粛や在宅勤務などの増加により人々のテレビ視聴時間が増加傾向にあるため、ラマダン期間中のスフール(断食間の夜明け前の食事)、タラウィーフの祈り(ラマダン月の間夜遅い時間に行われる祈り)の後の視聴者数が増加したことが挙げられます。
また、テレビの視聴に費やす時間の長さは、中間層以下の方が富裕層より長いことが分かっており、これは富裕層の人々はテレビの他にもインターネットなど他の様々な情報源へのアクセスが可能であるためと考えられます。
新型コロナウイルスの影響が、ラマダン期間中のテレビ広告事業には追い風となっていることが分かります。
https://infobrand.id/belanja-iklan-tv-capai-rp44-triliun-di-minggu-pertama-ramadhan.phtml
インドネシアにおけるラマダン期間のオンライン広告について
インドネシアにおけるオンラインショッピングの広告費は通常時より増加傾向にあり、特にラマダン一週間目の広告費はラマダン前の一週間と比べ2倍近く増加しています。
インドネシアでオンラインショッピングを利用する人はラマダン期間中大幅に増加する傾向にあり、日用品の購入のための最も利用される手段としてもオンラインショッピングが挙げられます。
また、オンラインショッピングの利用率の割合をテレビ視聴者数に変換すると、テレビ視聴率が14%増加したことと同じ割合となります。
ECサイトへのアクセスが増える時間帯としては、テレビ広告と同じくスフール(断食間の夜明け前の食事)、タラウィーフの祈り(ラマダン月の間夜遅い時間に行われる祈り)の後となることが分かっています。
近年はラマダンからレバランにかけてECサイトの利用が増加傾向にありましたが、特に新型コロナウイルスの影響で外で買い物をする機会が減ったことが後押しとなり、更にオンラインショッピングの需要やオンライン広告の市場が拡大していることが分かります。
TIkTokのよるインドネシアのラマダントレンドレポート
ショートムービープラットフォームSNSのTikTokは2021年のインドネシアのラマダン期間におけるユーザーのトレンドについてのレポートを公開しました。
レポートによると、ラマダン中にTikTokをより積極的に利用したいと考えているユーザーはインドネシアのTikTokユーザー全体の96%の割合を占めていることが分かっています。
コンテンツとしては、ラマダンの月に家族や友人と一緒にいる時間などを投稿する予定と回答しています。
また、去年のラマダン期間中における1日の平均の*エンゲージメントは、通常時より29%増加しており、今年もラマダン期間中のTikTokの利用の増加が期待されています。
*エンゲージメント:投稿に対して反応したユーザーを図る指標。
TikTokを利用した広告
インドネシアにおいては近年TikTokを利用した広告が多く活用されています。
中でも、”ハッシュタグチャレンジ”は様々な企業で行われています。ラマダン期間中もハッシュタグチャレンジは様々な企業によって行われました。
以下はハッシュタグチャレンジを行なっている企業のPR画像です。
引用: TikTok公式サイト より
引用: TikTok公式サイト より
ハッシュタグチャレンジの方法としては、企業側が指定のハッシュタグを決め、チャレンジ動画を作成します。
その動画をみたユーザーは動画を元に各自個性的な動画をTikTok上で作りハッシュタグとともに投稿します。
ユーザーが楽しみながら動画を投稿することで、企業の宣伝に繋がっている新しい広告スタイルと言えます。
このような、ユーザが楽しんでいるという側面も影響しているのか、TikTok上で表示される広告について広告を見た後、広告を見た90%の人が製品の詳細リンクへアクセスしたり、ブランドアカウントをクリックするなど、何かしらの行動を起こしていることが分かっています。
また、TikTokはラマダン期間中の広告についてだけでなく、コロナ禍を共に乗り越えていくためのプロジェクトも行っています。
TikTokは、今年にラマダンからレバラン期間の4月5日〜5月16日で#SamaSamaBerbagiのハッシュタグをつけてラマダンを共有するオンラインフェスティバルを開催しました。
通常、ラマダン期間中は、親戚や友人など大勢集まって断食明けの食事をとるなど、普段なかなか会えない人と交流を持つ傾向にありますが、今年は去年に引き続き新型コロナウイルスの影響でそういった関わりがなかなか持てないため、ラマダン中の様子についてTikTok上で共有することで、「オンライン上でラマダンを一緒に過ごす場」を作っています。
新型コロナウイルスの影響で制限される行動が多いですが、TikTokによって新しいラマダンの過ごし方が提案されていることが分かります。
新型コロナウイルスの影響で、インドネシアでは例年のラマダンやレバラン時の人々の過ごし方とは大きく異なった点も多々ありますが、ラマダン期間中、広告業界においては追い風となっている点も挙げられることが分かりました。
インドネシアにおいて、ラマダンからレバランの期間は市場が大きく変化する時期となっています。このように、インドネシアでは宗教がビジネスに大きな影響を与えますので、インドネシア進出の際には現地の文化や風習などをきちんと理解する必要があります。
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