【コラム】インドネシアで電気炊飯器50万個を無料配布、プロパンガス輸入削減狙う

インドネシアは天然ガスの世界有数の産出国です。日本は現在ではインドネシア産の天然ガスの輸入割合が数%台で推移しているものの、2008年までは日本がインドネシアからの最大輸入国であったなど、日本とインドネシアは密接な関係を築いてきました。そんなインドネシアですが、電気炊飯器を50万個、一般家庭に無料配布するという政策が昨年12月末より実施され、2024年1月中には50万台すべてを配布する計画となっています。ました。この背景にはインドネシアが天然ガス産出国でありながら、インドネシア国内で家庭に供給するプロパンガスの生産力が弱いという事情がありました。

目次

インドネシア政府によるクリーンエネルギー推進


インドネシア政府は、3475億ルピア(日本円で約33億円)の予算を投じて今年中に450〜900ボルトの電圧帯を使用する一般家庭に全部で50万個の電気炊飯器(容量1.8〜2リットル)を配る方針で、12月に配布を開始しました。 インドネシア政府はクリーンエネルギーを推進する立場から調理時の電気使用量を削減することに加え、プロパンガスの輸入量を減らすことを目的としています。インドネシア国内で使用されるプロパンガスはインドネシア政府からの補助金が投入されており、3キロ容量の物に使用される23年の補助金は総額118兆ルピア(日本円で1兆1400億円)にもおよび、10年前の31兆ルピアから約4倍に膨れ上がっています。このため、インドネシア政府には、今回の電気炊飯器の無料配布により、巨額の歳出を抑制するという狙いもありそうです。

出典・インドネシア財務省
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2023/06/22/subsidi-lpg-meningkat-pada-2022-rekor-tertinggi-sedekade

インドネシア中央統計庁によると、2021年時点でインドネシア国内の約82%がプロパンガスを使用しており、インドネシアの一般家庭になくてはならないエネルギーとなっています。インドネシア政府は一般家庭で使用するプロパンガスを電気に切り替えることにより、現在インドネシア政府が推進する二酸化炭素排出量の削減を進めたい考えです。
また、配布される電気炊飯器は国産で転売を禁じており、ジョコウィ政権が掲げる工業製品の国産化を進める狙いもあるとみられます。
一方で、一部からは「炊飯器だけを渡しても米以外の調理では以前と変わらずプロパンガスを使用するので意味がなく、税金の無駄遣いだ」との批判や、2024年の大統領選挙を見越した選挙民へのサービス政策だとの見方も出ています。

インドネシアへのプロパンガスの輸入は年々増加、10年前の約3倍

インドネシアのプロパンガスの輸入量は年々増えており、2022年は670万トンと、10年前の220万トンの約3倍と急増しています。主な輸入先はアメリカ、UAE、サウジアラビア、カタールなどです。

出典・インドネシア中央統計局
https://databoks.katadata.co.id/datapublish/2023/06/15/impor-lpg-kian-meningkat-tembus-rekor-baru-pada-2022

プロパンガスは、常温・常圧で気体の天然ガスを冷却して液化させタンクに詰めた製品です。同じ天然ガス由来のエネルギーでは液化天然ガス(LNG)がありますが、LNGに比べて液化に必要な冷却温度が低く、3キロ容量などのタンクに詰めて各家庭に運べる手軽さが強みとなっています。
インドネシアは2022年の天然ガスの産出量は15位と自国でも天然ガスが産出される国ではありますが、インドネシアのエネルギー鉱物資源庁によると、2021年のプロパンガスの輸入量800万トンに対し、国内での製造能力は190万トンで、国内で使用される約8割が輸入品に頼っていると報道機関主催のイベントで語っています。

人口増加が続くインドネシアではさらに消費量が増える可能性

インドネシア政府は2045年に国内の総人口が3億2400万人に達すると予測しており、プロパンガスの消費量もそれに応じて増えると思われます。その中では国内でとれた天然ガスとプロパンガスに加工する技術が不可欠になると考えられます。弊社は加工技術を生かしてインドネシア進出をお考えの日本企業をお手伝いできるネットワークがございます。ご質問などがございましたらお気軽にお問い合わせください。

参考:
https://www.cnbcindonesia.com/news/20221007140018-4-378050/ri-impor-lpg-besar-besaran-negara-asing-ini-ketiban-cuannya
https://www.cnbcindonesia.com/news/20221010141256-4-378527/ri-kaya-gas-tapi-milih-impor-lpg-begini-alasan-pemerintah

株式会社インドネシア総合研究所
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Tel: 03-6804-6702

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