【コラム】インドネシアにおける病院と医療社会保障機関保険プログラム
2014年に国民皆保険(BPJS)が導入されて以降、民間病院が次々と設立されるなどインドネシア国内での医療に関する需要が高まり、インドネシアにおける医療業界は大きく成長を遂げています。
インドネシアの医療サービスを向上させるため、政府は2014年1月1日より、医療社会保障機関の管理する国民医療保険(Jaminan Kesehatan Nasional: JKN)プログラムの施行を開始しました。
この国民医療保険プログラムは、インドネシアで6ヵ月間以上労働する外国人を含む、全ての住民に適用されます。
国民医療保険加入者が支払う保険料は、以下の通りです。
種別① | 種別② | 保険料 | 補足 |
賃金を受け取る労働者 | 公務員 | 月給合計額の5% | 内、労働者は2%を負担 |
民間企業 | 月給合計額の5% | 内、労働者は1%を負担 | |
自営業者 | 25,500ルピア(約198円)〜80,000ルピア(約620円) | 支払能力と治療レベルによって決定 | |
貧困層 | 19,225ルピア(約150円) | 地方政府が負担 |
下記のグラフから、2014年以降、国民医療保険加入者が年々増加していることが分かります。
出典: インドネシア共和国 保健省 データ・情報局 2017
医療社会保障機関 2018
保険料ごとの国民医療保険ランク分け
支払う保険料によって、国民医療保険のクラスが分けられます。ランク1が最も高く、最良のサービスが受けられ、最も低いランク3では受けられるサービスも最低限のものになります。
ランク2 : 保険料51,000ルピア (約395円) /月
ランク3 : 保険料25.500ルピア (約198円) /月
医療社会保障機関と提携している病院
国民医療保険プログラム施行により、保健所、公的病院といった政府の所有する医療機関は医療社会保障機関との提携が義務付けられました。一方、民間病院はそれを義務付けられていません。ただし、医療社会保障機関と提携をしている、していないに関わらず、緊急の場合は全ての病院が国民医療保険加入者への初期救急医療を行う義務があります。
現時点でのインドネシア国内の病院合計数は2,845件であり、そのうち942件が公的病院、1,903件が民間病院です。実数で計測しますと民間企業の方が医療社会保障機関との提携病院数が多く、その数は876件、公的病院は667件です。出典:インドネシア共和国 保健省 データ・情報局 2017・2018
医療社会保障機関が多くの費用負担をしている病気の種類
インドネシア国民のライフスタイルの変化は、国民がかかる病気の種類にも大きな影響を与えています。
以前は感染症による死亡数が最も多かったのですが、昨今では生活習慣病などの慢性的な病気による死亡者数が多くなっています。また、2016年の保健省データによると、「重病」というカテゴリーに分類されている病気が、1.69兆ルピア、つまり予算の29.67%を消化しています。重病とは、高額医療費を要し、合併症となることで死の危険性もある病気のことです。
医療社会保障機関が最も費用を負担している重病には、腎不全、癌、心臓病、血友病、脳卒中、白血病および肝炎などがあります。つまりインドネシアでは医療費が高額な患者が多く、医療社会保障機関の予算負担を増やしているのです。
実際に、このプログラムが2014年に施行されてから、医療社会保障機関は常に赤字を出し続けています。2014年には医療赤字が3.3兆ルピアに達し、その後も2015年には5.7兆ルピア、2016年には9.7兆ルピア、そして2017年には9.8兆ルピアまで増大しています。
出典: 2017年10月5日tribunnews.com、2018年05月18日katadata.co.id
今後もこの国民医療保険制度を継続させていくためには、赤字を減らしていくことが非常に重要です。これはインドネシア政府の大きな課題と言えるでしょう。
また、購買力の高まりによって、富裕層や中間層を中心に健康意識が高まり、未病への関心も増えていることから、インドネシアには医療関連ビジネスのチャンスや日系企業進出の余地があると弊社は考えております。
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