【アルビー日記】インドネシア無償給食プログラムの最新現場レポート~拡大するMBGとその舞台裏~

こんにちは、インドネシア総研代表のアルビーです。

先日のコラムで、インドネシアにおける無償給食プログラム(MBG)の最新情報をご紹介いたしました。MBGはインドネシア国内外から注目を集める一大プロジェクトです。

先日、インドネシアの国家栄養庁の方、並びにインドネシア国内においてすでにMBGの取り組みに参加している財団の一つと情報交換を行う機会がありましたので、その内容をご紹介させていただきます。

目次

財団について

今回情報交換を行った財団は、Bentang Banyumas Sejahtera財団と、Cakrawala Permadani財団です。この財団は、現在インドネシアの中部ジャワ州バニュマス地域で、14のキッチンを運営しています。近々、更にキッチン数を増やして19まで拡大したいそうです。ただし、先日のコラムでも触れた通り、MBGの取り組みに参加するためには国家栄養庁(BGN)への登録が必要となり、登録の上限は1財団あたり最大10の栄養充足サービスユニット(Satuan Pelayanan Pemenuhan Gizi、以下SPPG)までとなっています。

各SPPGは、1日あたりおおよそ3,000~3,500食を製造・配布することになります。

当初、MBGでは財団が日々の経費(原材料、労働力、運営費など)を負担していましたが、現在では国家栄養庁が2週間ごとに運営費および原材料費の前払いを行っています。

MBGの目的

弊社の過去のコラムでも何度か触れてまいりましたが、MBGは就学児(幼稚園~高校生)、幼児、妊産婦といった脆弱層を対象にした国家的な取り組みとなっています。

大きな目的としては以下が挙げられます。

  • 発育阻害(スタンティング)および栄養失調の削減
  • 学校での集中力と出席率の向上
  • 地域の食料安全保障と自立の促進
  • 地元中小企業(UMKM)や農家の関与による雇用創出と経済活性化

現在は就学児向けの配食が主となっていますが、妊婦・授乳中女性・幼児向けの給食についても現在準備中となり、将来的にはプログラムが益々拡大予定となっています。

経済効果・社会的インパクトとして、主婦や地域住民の雇用創出、地元農産物の継続的な調達、子どもの欠席減少と学習成績の向上、年利最大20%の投資リターン、全国30,000のMBGキッチンを設置し将来的に対象者が8,300万人に上ること、などが挙げられます。

キッチン組織・運営構造

以下はSPPG運営のために必要となる人材・スタッフです。

  • キッチン責任者/SPPI:全体管理を行います。
  • プロフェッショナルキッチン責任者:各キッチンに約5名配置されます。
  • サポートスタッフ(調理、運転、物流):各キッチン最大50名(うち3名は国家栄養庁から派遣されます)
  • 栄養士と会計担当:栄養バランスと財務の透明性確保を行います。

メニューとコスト

給食メニューは、炭水化物(米など)、動物性/植物性たんぱく質、野菜、果物、牛乳または代替品(ケーキ、卵など)から栄養を考えたバランスの良い食事となります。給食メニューは栄養士が2週ごとに作成します。

給食のコストの目安は以下の通りとなります。

  • – 幼稚園〜小学校3年生:小ポーション Rp 8,000/食
  • – 小学校4年生〜高校:フルポーション Rp 10,000/食
  • – 妊婦・授乳婦:Rp 10,000/食

給食の配送は月~金、7:00~12:00に実施されます(学校時間に応じて変動)。

国家栄養庁による必要資金の提供は以下の通り行われます。

  • 1. 原材料費
    – 幼稚園〜小3、幼児:Rp 8,000/食
    – 小4〜高校、妊婦・授乳婦:Rp 10,000/食
  • 2. 運営費(電気、ガス、人件費、水道等):Rp 3,000/食
  • 3. 設備・建物の賃料:Rp 2,000/食

SPPG事業への投資について

今後SPPG事業を展開したい場合、現時点ではインドネシア陸軍駐屯地に建設された10棟の建物があるそうです。この建物は国家栄養庁規格に準拠しており、面積は約400㎡です。

投資家、パートナーは、設備と引継費(Rp 1.8億/棟)を負担することで事業開始が可能となります。建物代に加え、キッチン設備や食器トレー、システムなどを考慮すると、初期投資額の目安としては約30億ルピア、日本円で約3,000万円程度となります。

↓スキームのイメージ

SPPGとして事業を開始したい場合、SPPGそのものは財団、株式会社、協同組合、個人などの形態が可能となります。ただし国家栄養庁との契約母体は「財団」形式である必要があります。SPPG用の施設については、新規に建設、または既存施設の引継(takeover)を行うことも可能です。

↑実際のキッチンの様子

すべてのSPPGは国家栄養庁の技術・運用基準(JUKNIS)を順守する必要があります。基準に沿っているかどうかの検証プロセスは以下の4段階となります。

  • 書類・動画を国家栄養庁に提出
  • ビデオ通話で確認
  • 現地訪問
  • 配食能力の認定(2,000食/日想定で事業開始し3,500食へ拡張することも可能)

インドネシア軍施設を利用する場合、上記の検証プロセスが省略可能です。

現在は、西ジャワ、中部ジャワ、ランプンなどで利用可能な軍の施設があるそうです。(25年5月時点)

リスクと対策

今年インドネシアの一部地域より開始されたMBGですが、一部地域で食中毒なども発生しています。

実際のところ、今年1月にMBGが開始されてから、インドネシア全土でMBGの取り組み内での食中毒が17件発生しています。

最近の事例では、今年5月、西ジャワ州ボゴール市でMBGのプログラムで提供された給食を食べたことによる食中毒が発生しました。食中毒が疑われる児童・生徒の数は合計で214人にも上ります保健局は現在、詳しい調査を行い、原因の特定に取り組み、学校側および関係機関と連携しながら、対応・サンプル採取・地域住民への啓発を進めているそうです。

MBGにおける食品安全対策はまだ改善が必要な状況であり、今後の対策として、食材の保管方法、原材料の安全管理強化、SPPGと財団による直接運営などが必要となってきます。

サービス不備があった場合、最大30日以内に是正しなければ事業者として契約解除な仕組みとなっています。

まとめ

MBGは教育・保健・地域経済を統合した国家プロジェクトであり、その社会インパクト(雇用創出、地域活性)と経済性(年利20%水準の投資リターン)にも注目が集まっています。

弊社は定期的にインドネシア大統領特別補佐官機関を訪問し、意見交換を行っています。その中で、日本の取り組みや

インドネシアにおける無償給食プログラム事業参画にご興味のある方は、是非お気軽に弊社までお問合せください。

関連コラム

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事のシェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次