【アルビー日記】インドネシア政府は国産化を強化―iPhone 16輸入を制限

インドネシアでは、現在iPhone 16は海外から私的用途のための持ち込みを除いた販売用の輸入が禁止されており、物議を醸しております。世間では当初プラボウォ政権下での国内産業への引き締めであると考えられていましたが、その背景にはTKDN(国産化率)と呼ばれる製品のインドネシア国産化率を一定の水準以上に保つための規制があります。一定水準に満たない場合は教育機関の設立をするなどの条件が課されています。一体このTKDNという規制は何なのでしょうか。今回は、このインドネシアの国産化率強化に関してiPhoneを事例にご紹介いたします。

目次

インドネシアではiPhone 16の輸入が禁止されている

インドネシアでは、iPhone 16の輸入は現時点では認可されていません。販売用ではなく個人向けの持ち込みも1人2台という制限がついています。これらの個人輸入の製品をインドネシア国内で販売することは違法です。この背景には、輸入要件のひとつであるTKDN認証がまだ下りていないことが挙げられます。iPhoneをインドネシアで流通させるためには、35%の国産化率という数字を達成する必要があります。以前、Apple社はTKDNの認証を保有していましたが、有効期限が切れたため、取得に向けて動いています。

参考:https://www.cnbcindonesia.com/tech/20241013191745-37-579244/alasan-iphone-16-dilarang-masuk-ri-apple-angkat-bicara

インドネシアの規制TKDN(国産化率)とは何か

インドネシアでは、2018年から国産品優先の「P3DN」政策を実施しております。以前インドネシアでは「メイドイン・インドネシア」運動(インドネシア語:Gerakan Nasional Bangga Buatan Indonesia)が成功したということもあり、国産品および零細・中小企業・協同組合の製品の使用を奨励するために、インドネシア共和国大統領指令2022年第2号が発布されました。

  • 電子カタログ(e-カタログ)に掲載される国産品を100万品目に増やす計画などを含む、国産品、中小・小規模企業の製品、協同組合品の利用を強化するための戦略ロードマップを策定する。
  • 国内製品のTKDNと企業利益重みの合計値が最低40パーセントの場合、国産部品率(TKDN)が最低25パーセントの国内製品を使用する
  • すべての提携契約において、国産品および零細企業、小企業、協同組合/中小企業/職人の製品を使用するという要件を明記する
  • 遅くとも2023年までに、手作業による調達プロセスを電子調達プロセスに変更する

上記のようなことが定められています。(詳細は大統領令(インドネシア語)をご確認ください。https://peraturan.go.id/id/perpres-no-2-tahun-2022

また、国産化率に関しては、特定の製品に関して証明書の取得が義務付けられています。太陽光発電関連製品、バッテリー式電気自動車、携帯電話などの製品が該当します。今回騒動になっていたiPhoneに関しては携帯電話に該当しており、「携帯電話、スマートフォン、およびタブレット・コンピュータ製品の国内部品率を計算するための規定と手順に関する2017年工業大臣規制番号29/m-ind/per/7/2017」に該当します。

ディスプレイや本体、バッテリー、スピーカーなどの部品ごとにそれぞれ国産化率の義務が定められており、その他にも人材や製造機器の国内調達や国内でのアプリケーション開発にも詳細な規定がなされています。

部品や人材の要件の他にも国産化率の基準を達成する方法に、国内イノベーション施設開発への投資もあります。

投資金額に応じて国産化率の数値達成が付与される仕組みです。

上記の携帯電話の国産化率に関する工業大臣規制の第36条には以下のように定められています。

  1. 250,000,000,000ルピア(2,500億ルピア)から400,000,000,000ルピア(4,000億ルピア)までの投資は、20%のTKDNを付与される
  2. 4,000,000,000.00ルピア(4,000億ルピア)を超え550,000,000.00ルピア(5,500億ルピア)までの投資は、25%のTKDNを付与される
  3. 550,000,000,000.00ルピア(5,500億ルピア)を超え、700,000,000,000.00ルピア(7,000億ルピア)までの投資は、TKDN値が30%付与される
  4. 700,000,000,000,000.00ルピア(7,000億ルピア)を超え、1,000,000,000,000.00ルピア(1兆ルピア)までの投資は、TKDN値が35%付与される
  5. 1,000,000,000.00ルピア(1兆ルピア)を超える投資は、40%のTKDN値が付与される

携帯電話、スマートフォン、タブレット・コンピュータ製品に関連する情報通信技術分野の教育、研修、研究、技術革新開発のための施設およびインフラ設備をインドネシア国内に設置することでTKDNの値が付与されるとしています。

プラボウォ政権では法治国家を目指しており、これらの法の運用を強化して投資も呼び込むことが意図されており、今後も国産化率は強化される見込みです。

参照:https://www.trade.gov/market-intelligence/indonesia-domestic-product-spending
https://peraturan.go.id/id/permenperin-no-29-m-ind-per-7-2017-tahun-2017

Apple社はどうしたらiPhone 16をインドネシアに輸出できるのか

工業大臣によると、Apple社はインドネシアに対して1兆7,100億ルピアの投資の約束をしていましたが、実際は1兆4,800億ルピアの投資であり、不足分の2,400億ルピアをApple社は支払う必要があるとしています。また、Apple社はApple Developer Academyという教育機関をタンゲラン、東ジャワ、バタムに既に設置しており、4校目をバリに設置することに意欲的だといいます。しかし、インドネシア側はApple社には教育機関だけではなく、研究開発施設や工場の設置をすることを望んでいます。また、Apple社はベトナムでは50年間の税金の控除を受けたとされており、インドネシアでも同様の待遇を望んでいると報道されていますが、インドネシア側はこれには難色を示しています。Apple社とインドネシア側でまだ条件の合意には至っていませんが、iPhone販売にはこれらの課題を解決する必要があります。

参照:https://www.cnbcindonesia.com/tech/20241013191745-37-579244/alasan-iphone-16-dilarang-masuk-ri-apple-angkat-bicara

今回は、インドネシアにおけるiPhone販売の規制を事例にインドネシアの国産化政策に関してご紹介いたしました。インドネシアの国産化政策に関しては、今現在は太陽光発電、携帯電話、電気自動車と限られた製品に課されています。

しかし、今後の動向によっては他の製品に関しても制定される可能性もあり、インドネシアへの製品輸出をご検討されている事業者の方におかれましては、注意する必要があります。

弊社では輸出にあたって必要な法規制の調査も請け負っております。法令調査を実施されたい方はぜひ弊社までお問い合わせくださいませ。

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