【アルビー日記】インドネシアと日本のおばけ

皆様こんにちは、インドネシア総合研究所代表のアルビーです。

おばけや幽霊というと怖い存在で、人間に悪さをするという印象がありますね。一方で、夏になると日本ではおばけなどにまつわる怪談を聞くイベントが開催されたり、遊園地などのおばけ屋敷は人気があります。おばけは人間に恐怖を与える存在でもありますが、同時に娯楽や興味の対象でもあります。

日本でもおばけは古代から文化に根付いているように、インドネシアでもおばけは古くから人々に恐怖を与える存在です。今回は、インドネシアと日本の両国のおばけの比較や、おばけに対する恐怖の思想に関してご紹介いたします。

インドネシアと日本におけるおばけ思想

【起源と伝承】
インドネシアのおばけや妖怪は、インドネシアの伝統や民間信仰に深く根ざしています。インドネシアは神話などの知識が豊富です。特に神秘主義は、インド文化の影響がインドネシアに流入する前からインドネシアの人々の間で知られていました。アニミズムは、インドネシアの神秘主義信仰のひとつであり、おばけ思想に影響を与えました。これらの信仰は何世紀かにわたって変化していますが、霊や精霊の世界は今でもインドネシアの人々の間で信じられています。

幽霊もそのひとつであり、精霊や幽霊は今日でもインドネシアの人々の世界のなかで共存していると考えられています。そして、インドネシアの地域ごとに異なるおばけが存在し、それぞれ独自の物語や伝承があります。その多くは口頭伝承で受け継がれており、ジャワの伝統的な絵巻物「Kakawin Sena」においても多くのおばけが登場します。

日本のおばけや妖怪も、神話や民間伝承に由来しています。古くから口承され、文学や絵画などでも表現されてきました。特に江戸時代の絵巻物や怪談話が有名です。また、日本においては恐怖の対象として「妖怪」と「幽霊」がありますが、それぞれ異なるものです。「妖怪」は人間に退治されるような滑稽な存在で、人間とのかかわりもしばしばありますが、「幽霊」は死んだ人の霊や成仏できなかった魂の姿であり、葬送供養の大切さを説く説教の文脈で創出されたものでもあると言われています。

参考サイト:https://teapot.lib.ocha.ac.jp/record/7752/files/56_322-325.pdf
https://nichibun.repo.nii.ac.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=2166&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1&page_id=41&block_id=63
https://intojapanwaraku.com/rock/art-rock/1502/#toc-14
https://priyonugroho557.wordpress.com/2017/12/19/dhemit-jawa/

【姿や特徴】
インドネシアのおばけや妖怪は多様で、人間の姿をしたものから動物の姿をしたものまでさまざまです。インドネシアのおばけや妖怪は、しばしば人々に恐怖を与える存在として描かれており、人々を襲う、あるいは邪悪な存在として振る舞うことがあります。例えば、後述のポンティアナックという幽霊は、赤ん坊の泣き声で人々を驚かせて人の内臓を食べるとされています。

日本のおばけや妖怪もさまざまな姿を持っていますが、伝統的には人間や人間のような姿をしたものが多いです。インドネシアとは異なり日本のおばけや妖怪は、時に恐怖の対象として描かれる一方で、文化的な要素や風刺の対象となり、滑稽な姿が描写されることも多々あります。また、日本の妖怪はしばしば人間と関わることで物語が展開されることも特徴的です。例えば、河童や妖狐などが有名です。

インドネシアと日本の代表的なおばけ

【インドネシアのおばけ】

名称 背景 姿・形 行動
ポンティアナック 妊娠中に死亡した女性が霊化 長い髪
白い服
プルメリアの香りを漂わせ、男性を主に襲撃して内臓を食べる
スンデル・ボロン 婚外妊娠中に死亡し、背中から子どもを出産した女性が霊化 長い髪
白い服
背中に大きな穴
赤ん坊や子どもをさらい、生きたまま食べる
ポチョン 墓に入れる時の覆いの布を取り除いてほしいと思っている 布に覆われている
真っ赤な目
焦げた顔
墓から飛び出し、動き回る
ウェウェ・ゴンベル 不妊の女性が、夫の浮気を目撃し殺害、その後自殺し霊化 垂れ下がった乳房 日没前に子どもを誘拐する

参考サイト:https://kumparan.com/selidik/asal-usul-sundel-bolong/full
https://www.insertlive.com/hot-gossip/20191030110236-7-64486/asal-usul-wewe-gombel-hantu-yang-suka-culik-anak-kecil
https://buku.kompas.com/read/2595/10-jenis-hantu-indonesia-paling-seram-dan-terkenal

【日本のおばけ】

名称 背景 姿・形 行動
雪女 雪の精、雪の中で行き倒れになった霊など諸説あり 白い服
白い肌
白い息を吹きかけ凍死させる
ろくろ首 夜中に首を伸ばして行灯の油をなめていたのが由来 長い首
遊女
首を長く伸ばす、あるいは抜くことで人を驚かす
河童 間引きされた子どもが水辺に捨てられて変態したと言われている 頭頂部の「皿」
背中の甲羅
緑色の体
人間や動物を川などに引きずり込み、内臓を食べる
ぬりかべ タヌキが化けたと言われている 白い犬のような姿
三つ目
(諸説あり)
夜道で人々の目の前に立ちはだかり、歩行を阻む

参考サイト:https://www.rekishijin.com/17952
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%8D%E3%81%8F%E3%82%8D%E9%A6%96
https://ehon.space/?p=30825#:~:text=%E7%94%B1%E6%9D%A5%E3%82%84%E5%8E%9F%E4%BD%9C%E4%BD%9C%E8%80%85%E3%80%81%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%82%82%E8%A7%A3%E8%AA%AC,-2021.08.26&text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E4%BC%9D%E6%89%BF%E3%82%92%E3%82%82,%E7%9D%80%E3%81%A6%E7%8F%BE%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%A6%96%E6%80%AA%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
https://intojapanwaraku.com/rock/culture-rock/11103/#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%9C%89%E5%90%8D%E3%81%AA%E5%A6%96%E6%80%AA,%E5%90%8D%E5%89%8D%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b02505/
https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/62265

【日本とインドネシアのおばけの類似性】

悪戯や脅威:日本とインドネシアのおばけは、人々に対して悪戯をしたり、脅威を与えたりするとされています。日本の「鬼」や「雪女」、インドネシアの「ポンティアナック」やなどは人々を驚かせたり、不安を引き起こす存在として描かれています。

女性がおばけとなることが多い:日本とインドネシアの代表的なおばけを見てみると、女性が何らかの理由でおばけとして変態し、復讐心やこの世への未練などから人間に脅威を与えたり悪行をすることが多いです。


今回は、日本のおばけとインドネシアのおばけに関してご紹介いたしました。日本のおばけもインドネシアのおばけも、どちらも超自然的な力を持ち、恐怖の対象ともなるおばけという存在が古くから社会で伝承されてきたことが分かります。そして、両国のおばけには相違点も多い一方で、脅威であることや女性がモチーフになっている点でも類似性があることがわかりました。

Demonologyとは悪魔学を意味しますが、ある社会が怖がるもの・心配する何かをおばけ化する傾向があり、おばけを体系化することで社会の実態を理解する学問です。
このように、インドネシアと日本のおばけの違いからそれぞれの社会が怖がるものを読み解くのもおもしろいですね。

弊社インドネシア総合研究所では、異文化理解講座の実績なども多数ございます。また、各種調査やアドバイザリーサービスを提供しています。これらのサービスにご興味をお持ちの企業様、是非お気軽にお問い合わせくださいませ。

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