【アルビー日記】インドネシアにタイの僧侶が巡礼する「Biksu Thudong(Tudung)」とは
皆様こんにちは、インドネシア総合研究所代表のアルビーです。
インドネシアというと宗教はイスラム教というイメージが強いですが、イスラム教が伝来する13世紀頃までは仏教文化も盛んでした。
そのため、インドネシア国内には世界遺産にもなっている、ジョグジャカルタのボロブドゥール遺跡などの仏教寺院があります。現在はイスラム教が多数派のインドネシアですが、文化としての仏教行事は残っており、インドネシアの文化の多様性を形成しています。
今回私は、インドネシアのボロブドゥール遺跡までタイの僧侶が巡礼する「Biksu Thudong(Tudung)」に関して皆様にご紹介いたします。
インドネシア版の四国遍路、「Biksu Thudong(Tudung)」とは
日本では四国は国の中心地から遠く離れた場所であったことから、古くから仏教の修行地でした。弘法大師(空海)も四国での修行をし、88か所の寺院をめぐりました。この88か所の寺院を巡礼することを日本では四国遍路、あるいは「お遍路」とも呼ばれています。
実は、インドネシアにもこの四国遍路と似た修行があり、「Biksu Thudong(Tudung)」と呼ばれています。タイのナコーンシータマラート(タイ南部の都市)からインドネシアのボロブドゥール遺跡まで徒歩で総距離2500キロメートルを移動します。2023年に関しては、タイの僧侶たちは3月25日にタイを出発し、タイ-マレーシア-シンガポール-インドネシアの順に「Biksu Thudong(Tudung)」の旅をしました。
彼らの旅の目的は、6月4日にインドネシアのボロブドゥール遺跡にて執り行われる、仏陀の生誕を祝うワイサック(Waisak)祭に参加するためでした。今年は、6月1日に一行は途中で脱落者を出しながらもボロブドゥール遺跡に到着し、ワイサック祭に参加することができました。
参考サイト:
https://www.cnnindonesia.com/gaya-hidup/20230515233424-269-949988/ritual-thudong-ini-rute-jalan-kaki-biksu-dari-thailand-ke-borobudur
https://www.detik.com/jateng/berita/d-6751100/tiba-di-candi-borobudur-biksu-thudong-merasa-terharu
https://88shikokuhenro.jp/
インドネシアの仏教行事「Biksu Thudong(Tudung)」の目的
「Biksu Thudong(Tudung)」はタイ、ミャンマー、カンボジア、ベトナムなどに広まっている上座部仏教の行事であり、主な目的は僧侶の忍耐力を高めることであるとされています。そして、禁欲的で孤独な瞑想的な生活をしながら洞窟、山、森、寺院などの神聖な地を巡ります。
「Biksu Thudong(Tudung)」の旅に出る際、僧侶たちは僧衣、サンダル、靴下を着用し食料やお金をほとんど持たずに長距離を移動します。彼らは1日1食程度で1日25-30キロメートルを歩きます。
そのため、道中で僧侶たちは各地の地域コミュニティや仏教徒たちからの支援に頼ることが重要です。このような旅の中で僧侶たちは断食、瞑想、苦行を実践しなければならず、仏教における三大罪である欲望、怒り、愚かさを取り除き、慈悲、寛大さ、知恵などの徳を養うことが期待されています。
時代や社会の変化から、「Biksu Thudong(Tudung)」の儀式を執り行うことは容易ではありませんが、現代でもこの仏教行事は上座部仏教において重要であると考えられています。
参考サイト:
https://www.beritasatu.com/nusantara/1048316/pengawal-biksu-thudong-adalah-seorang-muslim
https://www.detik.com/jateng/budaya/d-6721162/mengenal-tradisi-thudong-ritual-jalan-kaki-biksu-dari-thailand-ke-borobudur
https://www.liputan6.com/regional/read/5287165/mengenal-thudong-tradisi-biksu-jalan-kaki-dari-thailand-menuju-borobudur
今回は、イスラム教徒のイメージが強いインドネシアにおける仏教行事のひとつである「Biksu Thudong(Tudung)」に関してご紹介いたしました。タイから総距離2500キロメートルも徒歩で移動することは容易ではなく、途中で脱落者も出るなど非常に過酷な旅です。
これほど過酷な旅でありながらも、仏教の信仰における精神的修養の機会として非常に重要な意味を持つ行事なのです。インドネシアは、多民族・多宗教国家であることから、イスラム教以外のヒンドゥー教、仏教、キリスト教などの宗教行事も多く行われています。
インドネシアでビジネスを行う際はこのような多様な宗教への配慮や尊重をすることが重要です。弊社インドネシア総合研究所では、異文化理解講座の実績なども多数ございます。また、各種調査やアドバイザリーサービスを提供しています。これらのサービスにご興味をお持ちの企業様、是非お気軽にお問い合わせくださいませ。
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