【アルビー日記】アルビーメソッドにおいてインドネシア人学生が身近なものから学ぶ日本語教材とは

弊社がインドネシアで運営している日本語学校(LPK)では、日本語の学習と併せて、学生の渡航先である日本について理解を深める教育に力を入れています。例えば、日本の文化や歴史、地理、政治など、インドネシア人労働者として日本人と知り合う際に役立つような「会話の引き出し」を増やすテーマを扱っています。

そこで今回は、インドネシア人学生が学ぶ題材の具体例をいくつかご紹介します。

目次

漫画・アニメから学ぶ日本語

インドネシアでは日本の漫画やアニメ作品がとても有名で、日本語学校にも学生が読めるように漫画を置いています。例えば、『黒子のバスケ』、『弱虫ペダル』、『七つの大罪』、『幽☆遊☆白書』など比較的新しい作品があります。他にも、『カイジ』、『リョウ』、『サンクチュアリ』など、1990年代に製作が開始された作品まで広く知られています。

テラコヤスクール / ボゴール

インドネシアの日本語学校(LPK)で授業を行なっていると、学生から「天照(アマテラス)」や「月読(ツクヨミ)」、「写輪眼(シャリンガン)」など、日本人ですら普段全く使用しない言葉を聞くことがあります。日本語学習歴の浅い学生が日本の『古事記』や『日本書紀』で登場する独特な言葉を知っている理由は、インドネシア人も知っている『NARUTO』という日本の漫画・アニメ作品にありました。

『NARUTO』では、登場人物が「忍術」を駆使して勝負するシーンが描かれており、数多くある「忍術名」のなかに「イザナギ」、「イザナミ」、「天照」、「月読」、「須佐能乎」など、『古事記』や『日本書紀』を元に名付けられたと考えられる忍術名があります。アルビーメソッドでは、このようにインドネシア人学生が漫画やアニメという入り口からさまざまな日本語に出会っているという特徴を、日本語の文法や漢字を知るきっかけとして利用しています。

例えば、『NARUTO』の影響で「月読」という言葉を知っていれば、「読」という漢字に関心をもつきっかけとなります。そして、「読」という漢字を「言」と「売」の二つに分解して理解するなかで、「続」という漢字にも理解を広げていくことができます。

同様に、「月読」の由来が「月読命(ツクヨミノミコト)」という神様の名前であることや、「イザナギ」と「イザナミ」の子供であること、「天照」、「須佐能乎」と兄弟であることなどを知ることで、忍術名として知っていた言葉に込められていた意味や、万物に神が宿るという日本古来の考え方、歴史にふれるきっかけとなります。

そして、漫画やアニメで知った言葉を用いて例文を作成することで、学生は日本語に対してさらに積極的な姿勢で学ぶようになります。例えば、「天照」を用いて以下のような簡単な例文を作成することができます。

「『天照』は太陽の神様と言われています。」

短い例文ですが、神話のストーリーと関連させることで、「太陽」、「神様」、「天気」、「言う」などの基本的な語彙を容易におさえることができるだけでなく、「言われている」という受け身表現も教えることができます。

インドネシアの日本語学校(LPK)で導入しているアルビーメソッドでは、学生が適切な発音で流暢に話すことのみを目標としているのではなく、漫画やアニメ、書道、空手、料理など、さまざま方法で日本語の表現や背景にある文化にふれながら、日本語での表現と学生の経験が結びつくような教育内容を提供しています。

インドネシア人学生にとって日本語を習得することは簡単ではないからこそ、インドネシア語と日本語の構造的特徴をおさえたうえで、教育方法に工夫を凝らすアルビーメソッドによって、インドネシア人学生に合わせた教材を提供しています。

地理から学ぶ日本語

弊社がインドネシアで運営する日本語学校(LPK)では、厳しい選考を通過し、日本で働くことを強く志望する学生が日々日本語習得に向けて努力しています。しかしながら、学生は日本語の習得に集中するあまり、自分たちが就職する日本の都道府県や各都道府県での暮らし方について十分な知識をもっていない傾向があります。

そこでアルビーメソッドでは、日本語の学習と合わせて日本の都道府県について学ぶことができるような授業を行っています。例えば、まずは「東京都」、「広島県」、「京都府・大阪府」、「北海道」など呼び名の違いをおさえ、「県」のなかにも細かい区分があることを教えます。以下に例文を紹介します。

「例えば、神奈川県や広島県もあります。」

Contohnya ada Kanagawa dan Hiroshima. 

「県には町や市があります。」

Di dalam Ken ada kota kecil(machi) dan kota besar(shi).

「市は町より大きいです。」

Kota(shi)lebih besar dari kota kucil(machi).

こちらの例文からは、「例えば」という具体的な情報を伝える際の重要表現だけでなく、複数の具体的情報を並列して伝える方法も習得することができます。また、基本的な比較表現も含まれているため、日本語の型を習得するうえで、簡単かつ知識としても身につく適切な文章の一つであるといえます。さらに、これらの表現を習得することで、学生が母国であるインドネシアのことを日本人に伝える際にも応用することができます。

このように、例文で日本の都道府県を扱うことにより、学生は47都道府県の存在を知り、それぞれに異なる文化や良さがあることを知るきっかけとなります。地域によって話す言葉や人柄に違いがあるという点は、同じ島国であるインドネシアでも共通することであるため、インドネシア人学生も興味をもって授業を受けることができます。

日本語学校に通い始めたばかりのインドネシア人学生のなかには、「北海道は雪が降るから北海道で働きたい」、「首都の東京で働きたい」、「どこでも良い」など、あまり日本について知らない現状があります。このような状態で日本での就労を目指し続けることは、日本へ渡航した後に直面する生活上の負担を増やす可能性があります。

日本語学校(LPK)の教育現場では、学生が働きたい場所の候補を考えることができるように、または学生が働く予定の場所の状況を事前にある程度把握することができるように、アルビーメソッドのもつ実践的かつ汎用性の高い教育方法を最大限に活かしていくことが求められています。

昔話から学ぶ日本語

アルビーメソッドでは、日本の漫画やアニメ、都道府県などの他に、日本の昔話を題材に日本語を学ぶ教材を提供しています。日本の昔話は小さな子供向けに分かりやすい日本語が使われており、日本語を学び始めて間もないインドネシア人学生にとっても適した教材の一つとなっています。

昔話を教材とするメリットは、読解に必要な日本語力が日本語を学び始めたばかりのインドネシア人学生に適している点だけでなく、日本で暮らしている人たちが当たり前のように身につけている日本的道徳や考え方、作法を物語を通して理解することができる点にあります。さらに、物語から昔の日本がどのような暮らしをしていたのかという点についても知識を得ることができます。

以下に、日本の有名な昔話である『桃太郎(ももたろう)』から学ぶことができる興味深い日本語の例をご紹介します。

「ある日、ももたろうは鬼ヶ島(おにがしま)に悪い(わるい)鬼(おに)を退治(たいじ)しに行きました。」

Suatu hari, Momotaro pergi ke Pulau Oni dan mengalahkan para setan jahat.

例えば、「鬼ヶ島」という言葉自体は物語以外の場面で使用しないので重要ではないように思われやすいですが、実は「鬼ヶ島」の構造に大切なポイントがあります。

「鬼ヶ島」と似ている表現に「千駄ヶ谷」や「関ヶ原」、「霞ヶ関」などがあります。

このように「〇〇が島」や「〇〇が関」という表現は、「〇〇+”が”+場所」という構造に分解することができます。主に場所に使われる表現ですが、見た目が似ている言葉は他にもたくさんあります。例えば、「我が子」、「我が家」、「我が物顔」、「君が代」、「誰が為」などは現代でも時々耳にする言葉です。しかし、先ほどの「鬼ヶ島」の「が」とは意味が異なります。

インドネシア語で考えようとすると、「鬼ヶ島」は「Pulau Oni」、「我が子」は「anak aku」というように同じ構造になりますが、日本語では「が」という言葉に多くの役割があることを理解できます。弊社がインドネシアで運営する日本語学校(LPK)では、このように一つの言葉から派生して多くの日本語表現にふれることのできる教材を作成しています。

また、昔話は一文が比較的短いため、助詞の基本的な使い方を学ぶことができます。インドネシア語と日本語は語順が異なるだけでなく、インドネシア語にはない「助詞」の使い分けを習得する必要があるため、昔話を基にした教材で簡単な単語と重要な文法をおさえることは学生にとって大変役に立っているようです。

また、単発的な例文とは異なり、物語では感情の描写も多いため、読解が楽しくなるだけでなく、音読する際にも学生が気持ちを込めることで体験を通して日本語の表現を身につけることができます。例として、弊社が運営する日本語学校(LPK)では、インドネシア人学生による昔話の劇を披露しています。

スエナミスクール / バンドン

このように、劇の発表を企画することで、自然と学生同士のグループワークを促し、昔話の表現に動作をくわえて日本語を習得するというアクティブラーニングの流れをつくることができます。

アルビーメソッドが教材として利用している漫画やアニメは、インドネシアでもインターネットで詳しい情報を調べることができます。日本の都道府県に関しても、今はSNSで簡単に日本の今を知ることができます。そのため、授業を通して知識の引き出しを身につけた学生は、授業以外の時間でも興味の幅を広げていくことができ、学生にとって「知れば知るほど楽しい授業」になります。

今後も、インドネシア現地の学校の様子を発信してまいります。

インドネシア人材や、インドネシアにおける学校の運営にご興味のある方は、ぜひお気軽にお問合せください。

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