【アルビー日記】「5分前行動」が通じない?インドネシア人材とのミスマッチを防ぐための異文化理解の本質とは

皆様こんにちは。インドネシア総合研究所代表のアルビーです。

弊社は、インドネシア現地において、日本で就労するための人材を育成する学校「Soken School」をいくつか運営委託いただいております。日本に就労するためには、日本の文化や企業文化など、「日本で働くとはどういうことか?」を渡航前にきちんと学び、日本に渡航後に日本の企業からかわいがってもらえる人材になる必要があります。

目次

「5分前行動」が通じない? その背景にあるインドネシアと日本の価値観の違い

日本の職場では、始業の5分前にはすでに着席して作業の準備を整えておく「5分前行動」が当たり前となっています。しかし、この行動はインドネシアをはじめとする外国人材にとっては、必ずしも常識ではありません。

弊社がこれまでに多数のインドネシア人材と接してきた経験から申しますと、「5分前行動」の重要性を自然に理解している人は、全体の3割程度にとどまります。多くの方が「その5分は労働時間に含まれるのか?」「なぜ賃金が発生しないのに早く来る必要があるのか?」といった疑問を持つのが実情です。

「ほうれんそう」や「暗黙のルール」も伝わりづらい

同様に、日本の職場文化でよく使われる「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」という言葉も、インドネシア人材にとってはなじみのない概念です。日本では情報共有や上司への相談が信頼につながると考えられていますが、インドネシアでは「上司に迷惑をかけてはいけない」という意識や、各担当者に責任があるというジョブディスクリプションの考え方から、かえって自力で解決しようとする人も少なくありません。

そのため、「報告がない」「勝手に判断している」といった場面が発生することがありますが、それは悪意ではなく、「なぜそうする必要があるのか」が説明されていないことに起因している場合が多いのです。

スピリチュアルな日本人? 行動の根底にある“祈り”の精神

ここ最近、ある日本の製造企業で、長年使用してきた機械に感謝を込めて神主を招き、お別れの儀式を行ったという動画がSNSで話題になりました。

https://www.instagram.com/reel/DDHqWweSZlC

この動画は海外にも拡散され、「日本人は機械にも魂を見出すのか」と驚きを持って受け止められました。

日本は一見すると現実的で合理的な社会のように見えますが、企業に神棚があったり、節目に神事を行ったりと、実は“目に見えないもの”への敬意が根付いています。こうした精神性は、日本人の仕事観やマナーの中にも深く息づいていると考えられます。

インドネシア人に響く伝え方-「5分前行動」は“礼拝”である―

イスラム教徒が9割を占めるインドネシアでは、1日5回の礼拝(Salat)の前に「ウドゥ(お清め)」という行為を行います。これは心身を整え、祈りに向かうための準備の時間です。

弊社ではSoken Schoolの生徒に「5分前行動」を説明する際に、「仕事を始める前の準備の時間は気持ちを整える“お清め”のような時間です」と説明しています。すると、多くのインドネシア人材の方が「なるほど、そういうことですね」と納得してくれます。

さらに、「日本では、仕事そのものがibadah(礼拝)であると考える文化があります」と伝えると、生徒たちは自分たちの信仰と重ねて理解を深めてくれます。宗教的背景を尊重しながら説明することで、相互理解は一層深まります。

トラブルの多くは“無理解”から生まれる

外国人材が日本でトラブルを起こすと、「モラルが低い」「ルールを守らない」といった声が上がることがあります。近年は日本国内における外国人材の急増により、事件・犯罪の増加が懸念されています。しかし実際には、「なぜそれが悪いのか」を誰もきちんと説明していなかったというケースも少なくありません。

たとえば、ゴミの分別や時間厳守、職場での言葉づかいや態度など、日本では“当たり前”とされる行動も、文化的背景を知らなければ理解できないこともあります。だからこそ、来日前に日本文化への理解を深めることが、トラブルを防ぐために非常に重要なのです。

インドネシア総合研究所の現地日本語学校「Soken School」での取り組み

弊社がインドネシア国内で運営代行を行っている日本語学校「Soken School」では、日本語の学習に加えて、日本の文化や職場マナー、価値観についての授業を行っています。

特に、「時間を守るとはどういうことか」「上司や同僚への敬意の示し方」「報告・連絡・相談の重要性」など、現場で求められる“暗黙の常識”を、わかりやすく伝えるカリキュラムを整えています。

こうした教育を通じて、インドネシア人材が日本社会にスムーズに適応し、安心して長く働くことができるようサポートしております。

おわりに:採用の“前”こそが成功のカギ

インドネシア人材を採用するにあたって、語学力や技術力だけでなく、「日本で働くとはどういうことか」を事前に伝えることが、トラブルを防ぎ、定着率を高める上で非常に大切です。

異文化理解の教材や講習はありますが、どのように違うかを説明するだけであり、なぜそうなのか?なぜそれが大事なのか?その背景を説明するものは少ないのが現状です。

インドネシア総合研究所では、日本企業とインドネシア人材との“文化の橋渡し”として、採用前の教育から入国後のフォローアップまで一貫した支援を行っております。

日本で就職後のインドネシア人材の定着率をあげるための人事コンサルサービスもございます。

「文化の違いを乗り越える」のではなく、「価値観の共通点を見つける」ことこそが、信頼関係を築く第一歩です。インドネシア人材の採用・活用をご検討中の企業の皆さま、ぜひお気軽にご相談ください。

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