【コラム】自然の恵みと文化が息づくボヨラリ:インドネシア・中部ジャワの穴場スポット

インドネシア中部ジャワ州に位置するボヨラリ県は、ムラピ山(2,930m)とムルバブ山(3,145m)という三千メートル級の二つの壮大な火山に挟まれた戦略的な立地と、豊かな農業・畜産業で知られ、「コタ・スス」(牛乳の街)という愛称でも親しまれています。肥沃な火山性土壌と独自の気候に恵まれたこの地は、地域の食料安全保障に貢献するだけでなく、魅力的な文化や多様な景観も持ち合わせています。本コラムでは、ボヨラリ県が持つ自然の恵み、文化的な豊かさ、そして今後の発展の可能性についてご紹介します。

目次

「牛乳の街」ボヨラリ:自然に抱かれた中部ジャワの要衝

ボヨラリ県は、活火山であるムラピ山と休火山であるムルバブ山という二つの雄大な山々に囲まれた独自の地理的環境を有しています。これらの山々がもたらす肥沃な火山性土壌は、ボヨラリ県を中部ジャワ州有数の農業地域とし、また、酪農を中心とした畜産業も盛んで、「コタ・スス」(牛乳の街)という愛称で呼ばれるまでになりました。地理的な利便性も相まって、ボヨラリ県は中部ジャワにおける主要な地域としての役割を担っています。

肥沃な大地が育む豊かな農畜産物の恵み

ムラピ山とムルバブ山からの火山性土壌は非常に肥沃であり、ボヨラリ県が「ルンブン・パンガン」(食料庫)と呼ばれるほど強力な農業・畜産セクターとなる基盤となっています。主要な農産物としては、米、キャッサバ、サツマイモ、カリフラワー、唐辛子、マンゴーなど多岐にわたります。トウモロコシは中部ジャワでもトップ10に入る生産量で、街中にはユニークな銅製のトウモロコシのモニュメントがあって、乳牛のモニュメントと合わせて目を引きます。また、微気候(地表面に近い大気層の気候で、地表の状態や植物群落などによって局地的に変化する気候)の影響を受ける山の斜面ではクローブなども栽培されています。

畜産業においては、特に乳牛と肉牛の飼育が有名で、最新の統計では乳牛約60,000頭、肉牛約95,000頭の個体数が報告されています。この「コタ・スス」という強力なブランド・アイデンティティも、投資、観光、そして市場における価値を創出する上で大きな可能性を秘めています。

絶景と食を巡る:アグリツーリズムの新たな可能性

ボヨラリ県の標高は海抜75メートルから1500メートルまでと変化に富み、低地の平野から丘陵地、山岳地帯まで多様な地形が広がっています。ムラピ山とムルバブ山の斜面が織りなす棚田などの風光明媚で多様な景観は、観光資源としての大きな魅力を持っています。

肥沃な土壌と多様な気候は、豊かな農産物や酪農品を生み出すだけでなく、これらの生産現場を訪れる「アグリツーリズム」の可能性も感じさせます。「コタ・スス」として、また、「ルンブン・パンガン」として、そのアイデンティティを活かした牧場体験や農産物の収穫体験、食と自然を組み合わせたユニークな観光体験を提供することで、新たな観光客を呼び込むことができるでしょう。

彩り豊かな伝統芸能と手工芸が息づく文化の里

ボヨラリ県は、ユニークで様々な伝統舞踊や社会に深く根付いた儀礼、世界的に有名な手工芸品、歴史的遺跡など、多様な文化遺産を有しています。

伝統舞踊:ムラピ山とムルバブ山の斜面発祥の伝統舞踊「タリ・トペン・イレン」は、羽飾りの頭飾りやカラフルな衣装、ダイナミックな動きが特徴です。イスラムの影響を受けた「タリ・アングック・ロダット」は、動き、音楽、イスラムの賛美歌が融合した舞踊で、古くから文化的なアイデンティティと宗教的表現として受け継がれてきたものです。さらに、ジャワ、バリ、パプアなど様々なインドネシア舞踊の動きを融合させた現代創作舞踊「タリ・ジャティ・ディリ」は、多様性の中のインドネシアの統一を象徴するものです。

儀式や芸能:ムラピ山とムルバブ山の斜面では、人間と自然の調和を保つため、山の恵みへの感謝と将来の繁栄を願って「セデカ・グヌン・ムラピ」と呼ばれる伝統的な儀式が毎年行われます。そこでは、世界無形文化遺産にも登録されているワヤン・クリ(影絵芝居)といったジャワを代表する伝統芸能が演じられることもあります。

世界に誇る工芸:チェポゴ郡のトゥマン村とクンバン・クニン村は、銅と真鍮の工芸品が特に有名です。鍋やフライパンといった家庭用品から、レリーフやモスクのドーム、花瓶などの装飾品まで、伝統的な技法を用いて作られた高品質な製品は、地域の経済に大きく貢献しています。

これらの文化遺産は個々に地域のアイデンティティや経済と密接につながっており、観光客にとっても魅力的な体験となるでしょう。

優れた交通アクセスが拓く未来の扉

ボヨラリ県は、ジャワ島の有料高速道路網「トランス・ジャワ」が通り、交通インフラが整っているため、スマラン、ソロ、ジョグジャカルタ、スラバヤといった主要都市への接続性がとても高い立地です。世界遺産として知られるボロブドゥール寺院やプランバナン寺院群といった観光地へのアクセスも容易です。また、アディ・スマルモ空港に近接しており、空港からボヨラリ中心部へは30分も掛からずにアクセス可能です。これにより、国内外からの旅客と貨物の両方にとって優れた航空アクセスが提供されています。

アクセスの容易さは、物流コストと移動時間を削減し、投資先としてのボヨラリ県をより魅力的なものにします。さらに、既存の観光地だけでなく、アグリツーリズムや、儀式や芸能、工芸品を中心とした文化観光といった新しい分野を開拓することで、観光産業を大きく後押しする可能性を秘めています。

弊社インドネシア総研では、インドネシアの観光産業、文化観光、インフラ開発に関する調査分析やコンサルティングを行っております。インドネシアにおけるこれらの分野にご興味ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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