【アルビー日記】インドネシアにおいて“ワンピース”の旗が象徴する政治的亀裂と恩赦論争

こんにちは。インドネシア総研代表のアルビーです。
2025年8月初旬、インドネシアではアニメ『ワンピース』の“麦わらの一味”の海賊旗(Jolly Roger)が異例の抗議シンボルとなり、全国各地で掲揚されるという出来事がありました。これは、インドネシア国内のトラック運転手や市民による反政府運動として注目され、政府側は「国民統一の脅威」としてこれを強く警戒しています。
「ワンピースの旗」に見られる動きは、ソーシャルメディア発の「抵抗文化」であり、若年層や都市部のリベラル・モダン層の表現手段として台頭しました。インドネシア政府側はこれを「扇動行為」とみなしています。
参考動画:

「ワンピースの旗」運動の意義
インドネシアにおける最近の抗議活動において、この「ワンピースの旗」が意味するところとは何だったのでしょうか?

この旗は、SNSを中心に「表面的な愛国演出」への皮肉として活用され、特に地方都市で支持を広げました。運動のメッセージ性は、インドネシア政府の政策が国民、とりわけ低所得層に届いていないという不満の象徴となっています。一部地方では旗の掲揚が法的問題とされ、警察による旗没収や抗議者への介入も報告されています。
2024年10月にジョコウィ元大統領からプラボウォ大統領に政権交代しましたが、実は最近ジョコウィ元大統領のイメージがどんどん悪くなっています。あくまで一例ですが、背景として、ジョコウィが軍や警察の人事にも介入し、憲法裁判官の一人に親戚を入れたりしていたこと、そしてギブラン現副大統領はジョコウィの息子ですが、副大統領に就任したのは大統領就任の年齢制限(定められている最低年齢)が変更されたからと言われています。そのほか、ジョコウィは大統領就任期間中にインフルエンサーを活用して自分のイメージがよくなるような投稿をSNSで積極的に行っていましたが、プラボウォ大統領は特にそのような活動は行っていません。ソーシャルメディア監視と分析に特化したプラットフォームのDrone Emprit によると、上述のような理由などから、インドネシアの集団心理として、ジョコウィのイメージが下がってきているそうです。
プラボウォ政権の恩赦・特赦(Amnesty/Abolisi)政策
ジョコウィ政権下での元貿易大臣だったトム・レンボン氏(Tom Lembong)は、2015年から2016年にかけて商業大臣を務めていた際、砂糖の国内生産が過剰だったにもかかわらず輸入許可を不正に発行した罪に問われ、罰金7億5000万ルピア、懲役4年6か月の判決が言い渡されていました。
また、2014年から闘争民主党の幹事長を務めていたハスト・クリスティヤント氏(Hasto Kristiyanto)も同じく贈収賄の罪に問われ、有罪判決が行われました。
しかし、プラボウォ大統領は、8月17日の独立記念日前に、トム・レンボン氏にabolisi、ハスト・クリスティアントにamnestyを付与しました。AbolisiとAmnestiは以下のような違いがあります。
Abolisi
刑事事件において、まだ裁判が終了していない、あるいは刑期が進行中の個人について、訴追や判決・執行を停止させる権限です。まだ判決が出ていない場合に適用される点が重要です。
Amnesti
政府または国家が、ある個人または集団に対し、すでに確定した罪およびそのすべての法的影響を完全に抹消する権限です。たとえ刑罰が終わっていても、記録や法的結果をすべて取り消します。これは政治犯や社会的抗議者に対して、社会統合・和解の目的で用いられることが多いです
合計で1,178人が対象となった初期段階の恩赦計画は、さらなる1,668人の対象者提出も予定されています。
今回のプラボウォ大統領による恩赦の意図は「国民融和」であるとされる一方、反対派や専門家からは「司法介入」や「政治的取引」の可能性が指摘されています。
『ワンピース』と政変兆候の政治背景との関連
これについて、政治内部ではプラボウォがジョコウィ政権やその支持基盤(ギブラン、メガワティ、Anies Baswedanら)から距離を取ろうとしているとの分析があります。世間は、プラボウォがジョコウィの一族をまだ支援していると思っている節がありますので、それを絶ちたいのです。
今回参考にした動画内ホストである、政治コメンテーターのSyahganda Nainggolan氏によれば、プラボウォは恩赦を通じて「ジョコウィ派の影響力をそぐ」戦略と分析され、特にゴルカル党やPSIなどのジョコウィ依存勢力との関係解消の兆しが出ています。
まとめ
過去のコラムでもご紹介しましたが、インドネシアでは政治的な現状を表す手段としてアニメを使用することがあります。
インドネシアでのビジネスを検討する際、国民の集団心理を見る必要があります。それはインドネシアの政治がイデオロギーではなく、ポピュリズムだからです。
インドネシアにおける市場調査、進出サポートなどは、ぜひお気軽に弊社までお問合せください。
※注意
本記事はSyahganda Nainggolan氏の発言に基づく解釈と、最新の報道に基づく分析を融合したものであり、公的見解を保証するものではありません。調査・公開の際には適宜出典・表記の確認をお願いいたします。



