ラマダンの訪れを告げるインドネシアの広告文化|インドネシアで親しまれるMarjanのCMが映す文化と消費

インドネシアでは、ラマダンの訪れをどのように感じ取っているのでしょうか。宗教行事であると同時に、生活や消費のリズムにも大きな影響を与えるラマダン。その始まりを告げる存在として知られる「MarjanのCMを手がかりに、インドネシア社会に根付く文化と経済の関係を読み解きます。
ラマダンがもたらす社会の変化
インドネシアでは、ラマダンが近づくと街の空気や人々の生活リズムが少しずつ変化していきます。イスラム教徒にとってラマダンは、日の出から日没まで飲食を控え、祈りや節制を重んじる一年でも特別な期間です。しかし同時に、断食明けの食卓を囲む喜びや故郷への帰省、家族との再会といった温かな文化が表れる季節でもあります。宗教的な行いと生活文化が自然に結びつく点が、インドネシアのラマダンを特徴づけています。
ラマダンの訪れを告げるMarjanのラマダンCM
このラマダンの訪れを、最も視覚的に知らせてくれる存在のひとつが、飲料ブランド Marjan(マルジャン)のラマダン期間中のCMです。Marjanはインドネシアにおいて断食明けに飲まれる甘い飲料として親しまれてきたことから、広告の発信時期をラマダン周辺に集中させています。特に興味深いのは、単なる商品訴求で終わらないその内容で、毎年インドネシアの多くの人が注目する“作品”として認識されている点です。
Marjan のシロップがラマダン期に特によく飲まれる理由には、いくつかの背景があります。まず、断食明けには急に大量の食事を取らず、水分と糖分を適度に補給することが望ましいとされています。甘いシロップ飲料は喉を潤し、エネルギーを素早く補えるため、断食明けの定番となっています。さらに、家族や大人数での食卓にも向いている“汎用性のある一品”として重宝されています。

物語世界で魅了するMarjan広告
MarjanのCMは、映画さながらのスケールとテーマ設定が特徴です。インドネシアの伝統文化や民話に着想を得たファンタジー仕立ての映像が放送された年があれば、最新作では未来都市やSF的世界が描かれるなど、挑戦的なスタイルが続いています。毎年テーマが変わることで、視聴者は「次はどんな世界観が展開されるのか」と期待し、SNSでは、映画シリーズの Marvel Cinematic Universe に重ね合わせて “Marjan Cinematic Universe”(MCU)と呼ばれるほど独自の文化的存在感を確立しています。
毎年変化する壮大なテーマが注目を呼ぶ
Marjanの過去のラマダン期間中のCMを一部ご紹介します。
2024:民話風の物語や伝承を題材にしたストーリー展開が採用され、映像美への評価が上がりました。
2025年:未来都市やサイバーパンク風の世界観が話題となり、従来の民族的モチーフから意図的に離れた挑戦が注目を集めました。
MarjanのCMのどの作品にも共通するのは、視覚的な迫力だけでなく、「調和」「分かち合い」というラマダンの精神をやわらかく映し出していることです。もはやインドネシア国民はCMを“見る”のではなく“楽しみに待つ”段階にあり、SNSでは考察や感想が飛び交います。
他社にも広がる“ラマダン広告文化”
Marjan以外にも、インドネシアの企業各社がラマダンの期間に印象的な広告を展開しています。
Indomie(インドミー)
断食明けに味わう一杯の温かさを象徴的に描き、日常の小さな喜びや家族の団らんをテーマにした広告が親しまれています。
「ラマダンの物語」
POCARI SWEAT(ポカリスエット)
断食中に起こりやすい脱水のリスクをユーモラスに伝えるクリエイティブで、若年層を中心に大きな反響を呼びました。
「断食中の脱水に気をつけて」
McDonald’s(マクドナルド)
家族の再会や仲間との食卓を心温まるストーリーに仕立て、ラマダンらしい共有の時間を描き出しています。
「待ち焦がれた瞬間」
Wardah(化粧品)
心のリセットや「自分を整えるという行為」をテーマに、ラマダンの精神性と女性の生活感を結びつけた広告が特徴です。
「帰省」
こうしたブランドの表現に見られるのは、ラマダンの宗教的・文化的価値を尊重しつつ、
それぞれのブランドの世界観や生活提案を重ね合わせて、インドネシアの消費者に寄り添うアプローチです。
まとめ
長い年月を経て、MarjanのラマダンCMは、宗教行事の始まりを告げる一つの「合図」として、インドネシアの国民の間に広く浸透してきました。
その背景には、インドネシアの人々が、断食明けに家族と飲み物を分かち合うという文化的価値と、毎年同時期に需要が集中するというビジネス上の合理性とが重なり合っています。
こうしたラマダン期間中のCMは、単なる広告の枠を超え、インドネシアの人々が季節の移ろいを感じ、生活の準備を整え、消費が動き出すタイミングを共有する役割を果たしているように見えます。
たとえば、家庭での飲料や食材のまとめ買い、断食明けの“レバラン”時の帰省(mudik)を意識した準備などが、この時期に一斉に始まります。
そこからは、インドネシア社会において、文化と経済が互いに支え合いながら成り立っている姿を読み取ることができます。
ラマダンをめぐる広告や消費行動は、宗教行事という枠を超えて、インドネシア社会の価値観、季節感、そして消費が動き出すタイミングを映し出しています。こうした文化的背景を正しく理解することは、インドネシア市場での企画立案やマーケティング、事業戦略を考えるうえで欠かせません。
弊社インドネシア総合研究所では、現地の文化・生活・宗教行事への理解を踏まえた
- 市場調査・消費動向分析
- コンテンツ・広告表現の考察
- インドネシア進出に向けた企画・リサーチ支援
を行っています。
インドネシア市場を読み解きたい方は、ぜひお気軽にインドネシア総研までお問い合わせください。構想段階・情報収集段階でのご相談も歓迎しています。



