「世界ワースト4」インドネシア・ジャカルタの深刻な大気汚染と州政府の対策とは?──現状・原因・解決策を読み解く

近年、急速な経済発展を遂げるインドネシア・ジャカルタでは、大気汚染が深刻さを増しています。
人口の増加や自動車の急激な普及、工場から排出される煙などにより、空気の質が悪化しています。
この問題は、生活を送る住民の健康を脅かすだけでなく、政府や企業にとっても急ぎの対応が必要な社会課題となっています。
本コラムでは、インドネシア・ジャカルタの大気汚染とジャカルタ州政府の対応についてご紹介します。
ジャカルタの大気汚染の現状
2025年時点で、ジャカルタの大気汚染レベルは世界第4位となり、PM2.5の濃度は43.8µg/m³に達しています。
この数値は、世界保健機関(WHO)が定める、安全基準値の約9倍に相当し、喘息や気管支炎、心疾患など慢性呼吸器疾患のリスクが非常に高いことを示しています。
ジャカルタは経済発展や都市化が進む一方で、こうした大気汚染が住民の健康に深刻な影響を与えています。
さらに、周辺の大都市であるバンドン、デポック、スマランなどでも大気汚染の問題が深刻化しています。
インドネシア・ジャカルタの大気汚染悪化の原因
ジャカルタの大気汚染が悪化している原因としては、以下のような理由が挙げられます。
排気ガス排出量の増加
自動車の急激な普及により、排気ガスの排出量が急増しています。
特に渋滞が慢性化しているジャカルタでは、アイドリング状態の車両が排出する有害物質が大気中に滞留しやすく、大気汚染の主要な原因となっています。
風の動き
6月から7月にかけて吹くモンスーン(季節風)は、乾燥した空気を都市部に運び込みます。この風の影響で汚染物質がジャカルタ上空にとどまりやすくなり、空気の質の悪化を招いています。
乾季の長期化
地球温暖化の影響により、インドネシアの乾季は以前より長期化しています。
雨が少ないため、汚染物質が雨によって洗い流される機会が減少し、大気中に滞留しやすい状況が続いています。
石炭火力発電所の使用
ジャカルタ首都圏には16基の石炭火力発電所が稼働しており、二酸化硫黄(SO₂)などの有害物質を大量に排出しています。これは大気汚染の大きな要因のひとつです。
産業活動の影響
都市部に集中する工場や産業施設から排出される産業廃棄物や煙も、空気の質を悪化させる一因となっています。
参考WEBサイト:https://iblam.ac.id/2023/11/13/polusi-udara-jakarta-penyebabnya-dan-bahaya-kesehatan/
ジャカルタの大気汚染による健康被害
ジャカルタの深刻な大気汚染は、住民の健康にさまざまな悪影響を及ぼしています。
特に以下のような症状や疾患のリスクが高まると言われています。
皮膚の斑点と喘息発作
炭化水素(HC)や硫黄酸化物(SOx)といった汚染物質が、皮膚のトラブルや呼吸器の過敏反応を引き起こします。
目の炎症
空気中の微粒子が目に刺激を与え、充血やかゆみ、乾燥などを招きます。
呼吸器官の炎症
PM2.5や塵、粒子状物質を吸い込むことで、気管支や肺が炎症を起こし、慢性的な咳や呼吸困難を誘発します。
皮膚炎
汚染された空気は皮膚にも影響を及ぼし、かゆみや湿疹などの症状を起こします。
子供の成長の阻害
汚染物質に含まれる鉛などの有害物質が、呼吸を通じて体内に入ると、子どもの発育や神経系に悪影響を及ぼす可能性があります。
肺がんリスクの増加
汚染された空気を長期間吸い続けることで、肺がんや心疾患の発症リスクが高まると指摘されています。
このようなリスクへの予防としてインドネシアの保健省は、屋外でのマスクの着用、屋外への外出を控える、室内を清潔に保ち、健康的な生活習慣の実施を推奨しています。
参考WEBサイト:https://ayosehat.kemkes.go.id/penting-pahami-ancaman-polusi-udara-pada-kesehatan
大気汚染に対するジャカルタ州政府の対応
ジャカルタ州政府は、大気汚染の改善を目指してさまざまな対策を進めています。
公共交通機関の活性化
ジャカルタの公共バストランスジャカルタなどの車両点検を定期的に行い、車両の使用が10年以上経過し、排気ガス検査に合格しない場合は運行が禁止しています。
奇数偶数制度
渋滞緩和の目的もありますが、ナンバープレートの末尾の数字が奇数か偶数かによって車両の通行規制を行なっています。
公共交通指向型開発(TOD)の実施
公共交通機関の駅を中心に、住宅、商業施設、オフィスなどを集約し、徒歩や自転車、公共交通機関での移動を促進する都市開発のことです。
自動車への依存を減らすことで排気ガス量の低下が期待されます。
低排出ゾーン(LEZ)の導入
歩行者、自転車、公共交通機関、低排気ガス車のみが通行可能な低排出ゾーンを作り、排気ガス量の低下が期待されています。
Kota Tua(コタトゥア)と、Tebet Eco Park(テベットエコパーク)がジャカルタのLEZ指定区域となっています。
緑地化計画
2022年知事規則第9号により、ジャカルタ市の30%を緑地化する計画を進めています。都市のヒートアイランド現象緩和や空気清浄効果が期待されています。
このように、ジャカルタ州政府は交通・都市計画・環境保全の各方面から大気汚染の軽減に取り組んでいます。
参考WEBサイト:https://smartcity.jakarta.go.id/id/blog/usaha-pemprov-dki-jakarta-mengatasi-polusi-udara/
今回のコラムでは、インドネシア・ジャカルタの大気汚染の現状とその影響についてご紹介しました。
ジャカルタの大気汚染は目を背けられないほど深刻化しており、国民や政府の双方にとって早急な対策が求められる重要な課題となっています。
また、都市化の加速に伴い、ジャカルタだけでなくバンドンやスマランなど他の大都市でも同様の問題が顕在化しつつあります。
これらの課題への対応は、インドネシア全体の持続可能な発展に直結するテーマと言えるでしょう。
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