インドネシアにおいて急上昇する私立校人気とその裏にある教育格差の現実

近年、インドネシアのジャカルタでは教育参加率が向上し、私立校への進学を希望する家庭も増加しています。
しかしその一方で、貧富の差による教育格差が依然として大きな課題となっています。
本コラムでは、ジャカルタにおける教育格差と私立校ブームについてご紹介します。
ジャカルタの教育参加率
2023〜2024年のインドネシア社会経済調査(Susenas)によると、ジャカルタでは全ての教育レベルで教育純参加率、教育総参加率がともに上昇しました。
小学校教育では、2024年の教育純参加率が98.39%に達し、ほぼ全員が年齢に応じた教育を受けていることが示されています。
中等教育の純参加率も、2023年の84.95%から2024年には86.67%に上昇しました。
さらに高等教育では、2023年の60.81%から2024年には64.85%へと改善しています。
高等教育においては、これまで社会的・経済的要因による中退者が多い傾向にありましたが、今回の参加率の改善は非常に喜ばしい成果といえるでしょう。
今回の教育参加率の向上の要因としては、教育施設へのアクセスが拡大したこと、学校運営の支援、保護者の教育への意識向上など様々な点が挙げられます、
また、新型コロナウイルスによるパンデミックを経て、オンライン学習が定着したことも教育機会の提供に大きく寄与しました。
*教育純参加率…特定の年齢層の子どもたちのうち、その年齢で学校に通っている子どもの割合。例えば小学校の場合、小学校の就学年齢(通常6歳)の子どもたちのうち、小学校にかよっている子どもの割合。
教育総参加率…特定の年齢層の子供のうち、教育機関に在籍している子どもの割合。留学や飛び級などで本来の年齢以外の年齢の子どもも含まれる。
ジャカルタにおける私立校ブーム
ジャカルタ地域人民代表評議会(DPRD)の委員長であるドウィ・リオ・サンボド氏によると、現在ジャカルタでは公立学校ではなく私立学校を選ぶ保護者が増加していることが明らかになっています。
この背景には、以下のような要因が挙げられます。
- 私立学校の方が子どもの学習意欲を高めやすいこと
- 公立学校の教育の質が低下していること
DPRDはこの状況を問題視しており、教育の質を改善するために 教室環境の向上や学校施設の整備が必要だと指摘しています。
ジャカルタにおける教育格差とジャカルタ州政府の対応
教育参加率が上昇している一方で、ジャカルタでは依然として教育格差が課題となっています。
ジャカルタ州政府はこの問題に対応するため、低所得世帯の生徒を支援する「ジャカルタ・スマートカード(KJP)」プログラムを展開しています。
このプログラムは6歳から21歳の低所得者家庭の学生を対象にKJPカードを配布し、以下のような支援を提供しています。
- 教科書代や制服代など教育を受けるうえで必要な費用の無償化
- 通学時のトランスジャカルタ(公共バス)無料利用
こうした取り組みにより、個人レベルの教育格差はある程度解消されつつあります。
しかし、学校施設自体の格差は依然として残っています。
例えば、ジャカルタ中心部では実験室やデジタル図書館の充実、優秀な教師陣など恵まれた教育環境がありますが、郊外やスラム街では学校設備が十分でなく、質の高い教育を受けることが難しいのが現状です。
教育格差を解消するためには、学校建設の見直し、教師の質向上など、包括的で持続的な対策が求められます。
ジャカルタのEdTech企業の成長
教育格差を減らす手段として、スマートフォン1台で学習ができるオンライン学習サービスが注目されています。現在、ジャカルタには 251社 のEdTech(教育×テクノロジー)スタートアップ企業が存在しています。
以下は、ジャカルタを代表するEdTechの主要スタートアップです。
Ruan guru
設立:2014年
資金調達:2億500万ドル
インドネシア最大の学習アプリプラットフォーム
Cakap
設立:2015年
資金調達:2,050 万ドル
多言語学習を提供するプラットフォーム
Co Learn
設立:2019年
資金調達:3,400万 ドル
オンライン個別指導を提供
Gredu
設立:2016年
資金調達:400万 ドル
教育機関向けの学習管理システムも提供
Zenius
設立:2004年
資金調達:6,000万 ドル
学校教育向けのコースを提供
これらのオンライン学習アプリは、個人向け学習用 や 教育機関向け など、さまざまなニーズに対応しています。こうしたサービスの活用により、教育格差の縮小にもつながることが期待されています。
今回のコラムでは、ジャカルタの教育格差と私立校ブームについてご紹介しました。
インドネシア・ジャカルタでは、教育参加率が高まる一方で、学習格差が大きな課題となっています。
こうした背景の中、EdTech市場が急成長しており、今後も拡大が見込まれます。
EdTech分野はもちろん、高品質な教育コンテンツやICTインフラ整備、教師向け研修プログラムといった領域でも、日本企業にとって大きなビジネスチャンスが広がっています。
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