【コラム】インドネシアの海洋水産消費動向と政策②

先日掲載いたしましたコラム「インドネシアの海洋水産消費動向と政策①」では、インドネシアの海洋水産消費動向に次いてご紹介いたしました。今回のコラムでは、魚介類消費量を増やし、自国の競争力を高めるため、インドネシアの海事水産省(KKP)が行っている取り組みについて詳しくご紹介いたします。

世界市場で優れた商品を提供する輸出型養殖の開発

KKPは、海洋水産物の養殖の強化に次いて、輸出向け商品の増産プロジェクトを今年初めに立ち上げました。同プロジェクトは、特に、エビ、ロブスター、カニ、海藻など、経済的価値の高い水産物の輸出目標達成に注力しています。

中でも輸出品として高い人気を誇るエビについては、2024年までに200万トンの生産量を目指すとしています。このため、KKPは、面積4万5千haを目標に、伝統的なエビ養殖池を最先端技術の導入を以てより生産性の高い集中的な池に再生させる予定です。更に、既に上流から下流まで良好な養殖方法による統合的な近代的エビ養殖池のパイロットエリアである面積1,000haのエビ養殖池のモデル化戦略を手掛けています。

この池のモデリングにより、エビ養殖の生産性は年間0.6トン/haから80トン/haへと大幅な向上が期待されています。輸出向け商品の増産は経済を回復させるための定石ですが、この政策も新型コロナウイルスによるインドネシア国内の不景気の状況からの脱却に期待が集まっています。

地域の知恵を生かした養殖村の開発

 
輸出強化に続き、KKPは、貧困削減を目的として地元の知恵を生かした淡水魚、汽水魚、海洋魚の養殖村の開発プロジェクトも立ち上げました。この政策は、養殖業者の収入増加と共に、経済的価値の高い商品を絶滅から守るために行われています。

それぞれの魚介類の養殖村は、「養殖村に関する2021年海事水産大臣令第64号」に基づき次のように定められています。コイは西スマトラ州のパサマン県、ナマズは南スマトラ州の東オガンコメリングウル県、塩性ティラピアは中央ジャワ州のパティ県、サバヒーは東ジャワ州のグレシク県、ロブスターは西トゥンガラ州の東ロンボク県、ハタハタは東トゥンガラ州のクパン県等。

KPPは、上記以外にも養殖村の開発を進め、2022年中に国内に130カ所の養殖村を新設する予定です。養殖村の存在は国の食料安全保障を発展させる目論みの一つでもあるとの見方もあり、このプロジェクトは比較的肯定的に捉えられています。

環境に配慮した近代的な漁業養殖の開発

養殖を強化する上で欠かせないのが、環境への配慮です。KKPは、上述のプロジェクト施行と同時並行し、衛星モニタリング技術を用いた持続可能な漁業天然資源管理、気候変動問題に対応するための保全地域の拡大等といった策を以て、水生生物の生態系の持続可能性を最優先しながら近代的養殖技術の開発を進めていく見通しです。

またKKPは、生産性と環境への配慮を両立させた養殖技術について、ノルウェーとの協力を検討しています。実際に、ノルウェーの外務副大臣は、同国がインドネシアとの間で、特に養殖管理技術に関する技術移転を検討していることを明らかにし、インドネシアとのパートナーシップを築くことに非常に前向きであると表明しています。

最先端養殖技術を持ち、水産養殖産業で世界トップであるノルウェーとの連携がインドネシアの養殖産業にも高い効果をもたらすことが期待されています。

今回の連載では、インドネシアにおける海洋水産事情について、魚介類消費量の分析から養殖産業強化政策を2回に渡りご紹介して参りました。世界的に食糧危機が危ぶまれる今日、利益を上げながらも資源を枯渇させず、かつ環境汚染にも配慮した持続可能な養殖技術に高い注目が集まっています。

島嶼国インドネシアは比較的水産資源に恵まれていますが、安定した食糧生産と自国の繁栄のため、インドネシア政府は今後も試行錯誤を重ねていく見通しです。

弊社インドネシア総合研究所では皆様のインドネシアでの水産関連事業の展開や豊富なインドネシアの海産物の輸入等の事業をお手伝い致します。インドネシアでの水産業ビジネスへご興味をお持ちの方は、是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問合せくださいませ。

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