インドネシアの子どもを取り巻く健康課題──小児医療・栄養改善の必要性

これから社会の未来を担っていく子どもたちの健康は、親だけでなく国全体として守っていくべき重要な責任です。
インドネシアの子どもたちは現在、小児先天性心疾患や糖尿病といった深刻な健康課題に直面しています。
本コラムでは、インドネシアの子どもたちが抱える健康課題についてご紹介します。
インドネシアの乳児死亡率と地域格差
2020年の国勢調査によると、インドネシア全体の1〜4歳の乳児死亡率は1,000人あたり2.98人と報告されています。
地域別にみると、最も乳児死亡率が高いのはパプア州(1,000人あたり10.88人)であり、最も低いのはジャカルタ(1,000人あたり1.64人)でした。
これにより、インドネシア国内での地域間の大きな格差が浮き彫りになっています。
また、乳児死亡の主な原因は非感染性疾患であり、全体の約69%を占めています。
非感染性疾患には、合併症、低出生体重、未熟児の問題などが含まれており、こうした課題への早期対応が求められています。
インドネシアの子供の小児先天性心疾患
インドネシア小児科医協会(IDAI)の発表によると、生まれつき心臓や血管の構造に異常がある「小児先天性心疾患」は、インドネシアの子どもが抱える代表的な疾患のひとつです。
2024年の最新データによれば、インドネシアでは毎年約 5万人の子ども がこの疾患を抱えて生まれており、そのうち 1万2,000件が重篤例 とされています。
しかし、現在インドネシア全土の病院で治療が可能な件数は年間わずか 7,500件程度 にとどまっており、医療施設やサービスの不足、人材不足が大きな課題となっています。
この状況を受けて、IDAIは政府・専門機関・地域社会が連携し、小児心臓医療の質を継続的に向上させる必要性を強く訴えています。
子供の生活習慣病の増加
インドネシア小児科医協会(IDAI)の調査によると、2010年と比較し、2023年1月時点の小児糖尿病の症例数は約70倍増加しています。
この背景には、過剰な糖分・塩分・脂肪分の摂取といった食生活の変化が大きく影響しているとされています。
特にインドネシアでは、脂っこい料理や砂糖が多く使われた食品が日常的に消費されており、子どもの健康に深刻な影響を及ぼしています。
こうした状況を受けて、インドネシア国会第9委員会のクリニアシ副委員長は、政府に対し「包装食品や飲料への糖分含有量表示の義務化」を強く求めています。
子どもの健康を守るためには、大人が食習慣を見直し、意識的に糖分や脂肪分の摂取を制限する取り組みが求められています。
参考WEBサイト:https://www.bbc.com/indonesia/articles/clj6rene4y7o
インドネシアの小児がんに関する取り組み
がんはインドネシアにおける死因の第3位であり、治療費の高さや治療期間の長さが大きな課題となっています。
世界のがんに関する統計情報を提供しているGlobocan の2022年のデータによると、0〜19歳の小児がん新規症例は11,156件と報告されており、その中で最も多かったのは白血病(3,880件、全体の34.8%)、次いでリンパ腫・脳腫瘍(それぞれ約640件、5.7%)でした。
こうした状況を受けて、インドネシア政府も小児がん対策に力を入れており、インドネシア保健省は「2025〜2029年 小児がん国家行動計画」を策定しました。
これは、小児がんの発生抑制や医療サービスへのアクセス改善を目指した包括的な戦略です。これに沿って、インドネシア政府は今後小児がんを減らす取り組みを行なっていきます。
ブディ・グナディ・サディキン保健大臣は、国立がんセンターであるダルマイスがん病院を、全国のがん治療のロールモデルとして位置づけ、小児がん治療における医療サービスの向上を目指す方針を発表しました。
また、小児がんの早期発見が治癒率向上に鍵となるため、タイやベトナムで行われているような遺伝子検査ツールの使用を早急に行う必要があると述べています。
西ジャワ州におけるインドネシア保健省の取り組み
インドネシア保健省は2025年6月から、西ジャワ州で妊婦死亡率・乳児死亡率・発育阻害の削減を目標とした母子保健支援プログラムを開始しました。
西ジャワ州は、インドネシア全体の妊婦・乳児死亡の約17%を占めており、この州での改善が進めば国内全体の死亡率低下につながると期待されています。
プログラムの具体的な支援内容は次の通りです
- 臨床標準業務手順(SOP)の標準化
- 病院間の紹介システムの強化
- 医療従事者への継続的な研修
- 支援病院への直接的な指導
さらに、西ジャワ州での成果をモデルケースとして、インドネシア全土への展開を目指しています。
今回のコラムでは、インドネシアの子どもたちが抱える健康課題についてご紹介しました。
人口ボーナス期を迎え、子どもの多いインドネシアにおいて、子どもたちの健康課題を解決することは、同国の今後の経済発展に直結する重要なテーマです。
インドネシアでは、小児医療・母子保健・栄養改善といった分野において、政府や地域社会による改革が進みつつありまがす。
しかし、現場にはまだ多くの課題が残されており、ここに日本企業の技術・ノウハウが活かされる余地が大きく存在するのといえるでしょう。
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