【コラム】バイリンガル国家、インドネシア

旅行や出張でインドネシアを訪れたことのある方の中には、「インドネシア語が話せなくて、なかなか現地の方と意思疎通が図ることができなかった」という経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ジャカルタやバリなど、国際化が進んでいる都市をはじめとして、インドネシアの大半の都市では「インドネシア語」を共通語として耳にすることができます。

「インドネシア人なのだから、インドネシア語を話しているに決まっているではないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、インドネシアには300から700もの民族がいる多民族国家と言われており、インドネシアの歴史を振り返りますと、国家として独立してからわずか70年余りしか経っていません。

「インドネシア語」は、独立の際に憲法で「国語」として定められた後に、全国に普及した言語なのです。

インドネシアでは、民族や地方によって異なる言語、文化、風習等を持っており、国家として統合される前には、現在のような政治的共同体を成すことはありませんでした。

では、これだけ多くの民族が共存している中でなぜ、インドネシアの様々な地域で「インドネシア語」が通じるようになったのでしょうか。歴史から紐解いていきましょう。

インドネシア語発祥の歴史と国家としての言語政策

オランダ統治時代の20世紀初頭、世界でナショナリズムが旋風を起こしていた中、オランダ領東インドでも自らの国家を造ろうと、エリートの間で独立への動きが沸き上がりました。

有名な1928年の青年の誓いにおいては一つの祖国、一つの民族、一つの言語を使用することが宣言されていますが、ここで統一言語として選ばれたのは、スマトラ島のマレー海峡に面したリアウ州で話されていた一方言でした。

数百年に渡り勢力を拡大し、当時のオランダ領インドネシアにおいて最も割合の高かったジャワ民族の言語を選択せず、この小規模な民族の間で話されていた方言を選択したことに、インドネシア語が全国に浸透した理由があります。

インドネシア語が全国に浸透した理由

第一に、ジャワ民族もそれ以外の民族もほぼ平等な立場で新しい言語に触れることとなったために、比較的受け入れやすかったのではないかという点が挙げられます。もしジャワ語が国家の言語として選択されていたら、他の民族にとっては別民族に支配されているような印象を受け、反発を招いていたという可能性が考えられます。

第二に、このリアウ州の方言は、元々マラッカ海峡において貿易商人の間で話されていた共通言語であった、という歴史があります。人々にとって慣れ親しみやすい言語であった可能性も大いにあります。

最後に、インドネシア共和国憲法ではインドネシア語を「国語 (Bahasa Negara)」、ジャワ・スンダ・バリなど各地方で話されている言語を「地方語(Bahasa Daerah)」、インドネシア以外の地域から流入した言語を「外国語(Bahasa Asing)」として分類し、教育・政治・メディア・法律文書などで使用される言語を国語であるインドネシア語と定めました。

このような背景から、インドネシアの人々は学校教育やメディアを通してインドネシア語を学び、若い世代を中心に、徐々にインドネシア語が浸透していきました。

人々は家族や地域コミュニティ内では昔から受け継がれている地方語を話し、フォーマルな場ではインドネシア語を話すようになったため、この国には地方語とインドネシア語が話せる「バイリンガル」が多いと言われているのです。

もし、各地方に暮す人々が、独立後も変わらず地方語のみを使用していたならば、例えば同じインドネシア人であっても、ジャカルタと他の都市を結ぶプロジェクトやビジネスを行うことなどは困難であったと想像できます。

インドネシア語という統一言語があることで、たいていの地域ではインドネシア語で直接、もしくはインドネシア語の通訳を介してコミュニケーションをとることができることから、日本企業におきましても、ジャカルタのみならず、他都市への進出が可能となっています。

近年、インドネシア全土で経済活動が盛んに行われている要因の一つは、言語政策にあったというわけですね。

ビジネスの海外展開における、成功のポイント

まず進出先の言語、歴史、文化を理解すること、理解しようと努めている姿勢を進出先の人々に見せることが、成功のポイントとなってきます。

インドネシアに進出を検討されている方や、すでに進出されている方は、インドネシアの言語、文化、歴史などを学習できるプログラムが社内で整っているかどうか、今一度確認をされてみてはいかがでしょうか?

また、弊社では、インドネシアへの進出を検討している企業様向けの「インドネシア基礎情報セミナー」だけでなく、すでに駐在がお決まりの社員様向けの「渡航前 異文化学習セミナー」など幅広くご対応可能です。社内研修などをご検討中の方は、ぜひお気軽にお問合せください。

株式会社インドネシア総合研究所
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