【アルビー日記】プラボウォ政権下で強まるインドネシアの国家の役割―2026年のインドネシア進出戦略を読み解く

こんにちは。インドネシア総研代表のアルビーです。

プラボウォ政権となってから早1年が過ぎました。インドネシアはいま、「インフラ国家」から「戦略国家」へと移行する転換点にあります。
ジョコウィ政権からプラボウォ政権への移行は、単なる政権交代ではありません。インドネシアが国家として経済と社会にどう関与し、どこまで介入するのか、その基本思想が変わりつつあることを意味しています。

目次

インフラ国家としてのジョコウィ時代

ジョコウィ政権期のインドネシアは、高速道路、港湾、空港、鉄道といった物理的インフラ整備を成長の中核に据えてきました。インドネシアは国家として大型プロジェクトを束ね、予算・許認可・用地取得を一体的に調整する「インフラのマネージャー」として機能してきました。この結果、インドネシア国内の物流効率は改善され、インドネシア国内市場の一体化も進みました。日本企業にとっても、インドネシアの工業団地や港湾へのアクセス改善は進出判断を後押しする重要な材料となりました。

しかし同時に、インドネシアにおけるインフラ整備の限界も明確になりました。道路や港が整っても、人的資源の質や生産性が自動的に高まるわけではありません。インドネシアの地方と都市の格差、教育水準のばらつき、栄養状態の問題など、社会構造そのものに起因する課題は依然として残っていました。インフラは「成長の前提条件」ではあるものの、「成長の保証」ではなかったのです。

プラボウォ政権が示す国家モデルの転換

プラボウォ政権下で見られるのは、インドネシアの国家としての役割をより前面に出す姿勢です。国家はもはや市場の背後に控える存在ではなく、社会と経済の方向性を設計する主体として振る舞い始めています。これは「国家モデルの転換」と呼ぶべき変化です。

プラボウォ政権で象徴的なのが、人間中心の政策へのシフトです。栄養・健康、教育の標準化、貧困層家庭への直接介入、次世代人材の計画的育成といった分野が政策の中心に据えられています。プラボウォ政権下で始まった無償給食(MBG/Makan Bergizi Gratis)に代表される施策は、単なる福祉ではなく、将来の人的資本を国家が意図的に形成する試みといえます。

ここで重要なのは、国家が「結果」に踏み込んでいる点です。教育水準や健康状態といった社会的アウトカムを、市場や家庭任せにするのではなく、政策によって直接形づくろうとしています。これは「道路を作る国家」から「人を作る国家」への明確な転換です。

国家と市場の関係はどう変わるのか

ジョコウィ政権は比較的市場に友好的で、規制緩和やOSS(オンライン申請)を通じて民間投資を積極的に取り込んできました。ただし実態を見ると、多くの大型案件は国有企業(BUMN)がリスクを引き受け、国家が裏側で支える構造でした。市場は自由に見えても、国家資本主義的な枠組みの中で機能していたのです。

プラボウォ政権は市場を否定しているわけではありません。むしろ、市場を国家戦略に沿って「より強く方向づける」姿勢が明確になっています。これは反外国投資ではありませんが、「国家戦略と整合しない投資は成立しにくくなる」ことを意味します。今後は、単に収益性が高いという理由だけではなく、国家目標との整合性が投資判断の重要な基準となっていくでしょう。

外交姿勢の変化と歴史的文脈

外交面でも変化が見られます。ジョコウィ政権は、外交を制度・官僚に委ね、国内経済を最優先する実務的なスタンスを取ってきました。一方、プラボウォ政権では、大統領自身が国際舞台に立ち、地政学・安全保障・経済を一体で語ります。

この姿勢はインドネシアの歴史を振り返ると理解しやすくなります。スカルノが国際的な発言力を持ちながら国内基盤の不安定さに悩んだのに対し、スハルトは国内統治の安定を優先し、結果として国際的影響力を獲得しました。プラボウォ政権は明らかに後者の教訓を意識しています。外交力は国内統治力の延長にある、という考え方です。

2026年以降のインドネシア進出:変化する成功条件

これまで多くの日本企業は、規制緩和、OSS、巨大な国内市場を前提にインドネシア進出を検討してきました。しかし国家の役割が強まる局面では、成功条件が変化します。

重要なのは「許可の速さ」ではなく「国家戦略との整合性」です。最大の市場は消費者だけではなく、国家が設計する需要、制度、調達の枠組みそのものが市場になります。国家を理解せずに進出することは、長期的な事業リスクを高めることにつながります。

長期志向、品質や安全へのこだわり、官民連携に慣れた日本企業は、インドネシアのこの新しい環境と相性が良いといえます。特に教育、栄養、インフラ運営、人材育成といった分野では、単なる商取引ではなく、国家と共に価値を作る姿勢が評価されやすくなるでしょう。

まとめ

プラボウォ政権下のインドネシアは、「市場が主導する国」から「国家が方向を示す国」へと移行しています。この環境において重要なのは、政治を経済の障害と捉えないことです。政治こそが経済のインフラであるという前提を理解し、国家を正しく読み解くことが、2026年以降のインドネシア進出成功の鍵となります。

国家が主導的役割を果たす時代には、政府の論理や政策言語を理解する支援機関の存在が不可欠です。その点で、弊社インドネシア総合研究所は他社と明確に異なります。

弊社は、公開情報の整理にとどまらず、政策運用の実務や意思決定構造を踏まえ、日本企業の事業構想をインドネシア政府の政策フレームへ翻訳してきました。私が卒業した軍付属Taruna Nusantara高校出身者のネットワークを含む官僚・国有企業・政策決定層への理解と接点を活かし、インドネシア進出時の政治・制度リスクの低減を支援しています。

詳しくはぜひ弊社までお問合せください。

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