【アルビー日記】プラボウォ政権の内閣改造とKP2MI新大臣任命──インドネシア政治・経済への影響を読み解く

こんにちは、インドネシア総研代表のアルビーです。

2025年9月、インドネシアのプラボウォ大統領は昨年10月の就任から間もなく、早くも大規模な内閣改造を実施しました。財務大臣スリ・ムルヤニ氏の交代や、インドネシア海外労働者保護省(KP2MI)の新大臣任命といった重要ポストの人事は、政治の枠を超え、経済や社会、さらには国際的な労働力移動にも直結するテーマです。
今回の改造は、インドネシア経済の先行きに対する市場の期待と不安を同時に呼び起こしており、国民生活や企業活動に広範な影響を与える可能性があります。本稿では、内閣改造の背景と注目ポイント、そして市場や社会に及ぼす影響を整理して解説します。

目次

内閣改造の背景と人事の注目点

今回の改造では、特に次の3つのポイントが注目されます。

1.財務大臣の交代

長年インドネシア財政の安定を支えてきたスリ・ムルヤニ氏が退任し、預金保険機構(LPS)元理事長のプルバヤ・ユディ・サデワ氏が新任されました。ムルヤニ氏は国際的にも高い評価を受けていた人物であり、その退任は国内外の投資家に大きな不安を与えました。実際、発表直後に株式市場とルピア相場は敏感に反応し、急落を記録しています。市場がこの人事を「政策の不確実性」として捉えていることは明らかです。

2.KP2MI大臣の交代

もう一つ重要なのが、インドネシア海外労働者保護省(KP2MI)の人事です。これまで大臣を務めていたアブドゥル・カディル・カルディン氏(PKB)は退任し、ゴルカル党のムフタルディン氏が後任に就任しました。KP2MIは、海外に送り出される労働者の保護や制度運営を担う重要な機関であり、日本を含む各国への労働者送り出し政策に大きな影響を与えます。日系企業にとっても、新大臣の方針次第で人材獲得のスキームが変化する可能性があるため、注視が必要です。

3.新設「ハッジ・ウムラ省」

さらに今回、新たに「ハッジ・ウムラ省」が創設され、モハマド・イルファン・ユスフ氏が任命されました。ユスフ氏はこれまでハッジ実施庁の長を務めており、経験豊富ではあるものの、厳しい財政状況の中で新省庁を設置することへの是非をめぐり、SNS上では批判的な声も多く見られます。

経済への波及と市場の動揺

内閣改造の影響は即座に経済に表れました。発表後、インドネシア証券取引所総合株価指数(IHSG)は下落に転じ、一時1%を超える下げ幅を記録しました。さらに、ルピアは海外市場で急落し、1ドル=16,424ルピアまで下落。インドネシア銀行の市場介入余地は外貨準備高の減少により限られており、通貨防衛戦略は難しさを増しています。

加えて、国内では雇用不安が広がっています。たばこ大手グダン・ガラム社のトゥバン工場では大規模な解雇の噂が広がり、労働組合は400人規模の人員削減を確認したと発表。さらに、労働者団体は非課税所得(PTKP)の年間上限を現行の5400万ルピアから9000万ルピアへと引き上げるよう要求しています。これは、可処分所得の低下や生活費高騰を背景とした切実な要望であり、消費マインドを下支えする施策として注目されます。

政治と社会の緊張

一方で、政治面でも緊張が高まっています。特に、先日インドネシアで発生した大規模なデモについて、市民社会からは「17+8の要求」として、軍(TNI)の治安活動からの撤退や、警察による不当行為に関する独立調査チームの設置などが求められています。特に、警察の装甲車に轢かれて死亡したオンラインバイクタクシー運転手アッファン・クルニアワン氏の事件は、世論を大きく揺さぶりました。

プラボウォ大統領は一部の要求を「合理的」と認めましたが、軍の治安活動撤退については「議論の余地がある」と慎重姿勢を崩していません。しかしながら、今回の内閣改造は、先日の大規模なデモの国民の声が反映されており、今回国民が声を上げた成果があったのでは、という解釈がインドネシア国民の間では広がっています。

今後の注目点

今回の一連の動きから、特に次のポイントが今後の焦点となります。

  • KP2MI新大臣が示す海外労働者保護政策の方向性
  • 財務大臣交代後の市場安定策とルピア防衛戦略
  • 農地改革や大規模解雇問題といった構造的課題への対応
  • 「17+8の要求」をめぐる市民社会との対話と合意形成

これらの課題は、政治・経済の枠を超え、インドネシア全体の安定と持続的成長を左右する重要なテーマです。

まとめ

今回の内閣改造は、インドネシア政治の大きな転換点であり、同時に経済や労働政策に直結する重要な意味を持ちます。とりわけ日本企業にとっては、KP2MIの新体制が人材送り出し制度や協力スキームにどう影響するのか が大きな関心事となるでしょう。市場の不安定さや市民社会の要求をどう受け止め、インドネシア政府がどのような舵取りを行うかによって、今後のインドネシアの投資環境やビジネス展望は大きく変わる可能性があります。

弊社は日ごろから、プラボウォ政権の今後の方向性やインドネシアの動向についてなど、お客様よくご質問をいただきます。弊社では、インドネシア現地の政治情勢などを見ながらインドネシア進出のアドバイスを行う「月間アドバイザリーサービス」なども行っております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

参考:Prabowo Copot Abdul Kadir Karding Usai Viral, Bekerja saat Pengganti Dilantik, Pegawai Tinggalkan – Halaman 3 – Tribun Gorontalo

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