インドネシアで人材政策のカギを握る3つの省庁とは?-労働・教育・海外就労の全体像

インドネシアにおいて人材(特に労働力育成・配置・海外就労など)を担う主要機関となるのは、「労働省(Kemnaker)」、「教育・文化・研究・技術省(Kemendikbudristek)」、および「インドネシア海外労働者保護庁(BP2MI/旧名:BNP2TKI)」の3つとなります。

インドネシアにおいて「人材の育成・活用・保護」に関する政策は、以下の3つの政府機関が中心となって担っています。それぞれの省庁が担う役割と連携のあり方を理解することは、現地での人材採用や育成、送り出し事業を行う上で非常に重要です。

今回のコラムでは、それぞれの役割・管轄・代表的なプログラムを、分かりやすく整理して説明します。

目次

労働省(Kementerian Ketenagakerjaan/Kemnaker)

■主な役割:雇用政策の立案と国内労働市場の管理

労働省は、インドネシア国内における労働政策の立案・実施を担当する省庁です。以下のような業務を担っています。外国企業との協業や、LPK(職業訓練機関)認可などにも関与しており、日本への人材送り出しに際しても重要な窓口機関です。

主に以下のような役割を担っています。

  • 国内の労働政策全般の策定・実施
  • 雇用創出、雇用機会拡大
  • 職業訓練・スキルアップ推進(職業訓練所(BLK)の管轄)
  • 労働者の保護(賃金、労働条件、労災など)
  • 外国人労働者(TKA)の許可・管理

■所管内容

  • 労働法・雇用関係(労働契約、解雇、最低賃金など)
  • 求職者と企業のマッチング支援(SIAPkerja等)
  • 産業界のニーズに合わせた人材育成政策

■主なプログラム

  • Kartu Prakerja(プラケルジャカード)
    → 失業者・非正規労働者を対象とした職業訓練・スキルアップ支援プログラム。eラーニング形式+現金支援付き。
  • Balai Latihan Kerja(BLK)近代化プログラム
    → 地方自治体や宗教団体と連携し、最新設備による実践的スキル訓練を実施。
  • Green Jobs 推進
    → 再生可能エネルギー・環境分野に対応した新職種育成。

インドネシア労働省WEBサイト
https://kemnaker.go.id

教育・文化・研究・技術省(Kementerian Pendidikan, Kebudayaan, Riset, dan Teknologi/Kemendikbudristek)

※2024年末より再編され、「基礎教育・中等教育省」「高等教育・科学・技術省」などに分割

■主な役割:基礎教育から高等教育・職業教育までを統括

この省は、教育に関する包括的な政策を担っており、人材の「育成」段階を支える中核的な機関です。日本との高専連携や、大学における送り出しプログラム(留学型・就職型)にも関与。人材の「基礎力・専門力」をつかさどる省庁です。

主に以下のような役割を担っています。

  • 初等教育~高等教育までの学校教育の管理
  • 職業教育(SMK/ポリテクニック)強化
  • 大学・研究開発・技術イノベーション政策
  • 人材の育成と産業界とのリンク形成

■ 所管内容

  • カリキュラム設計と教育政策
  • SMK(Sekolah Menengah Kejuruan)と産業界との連携
  • 大学と企業を結ぶインターンシップ・研究連携

■主なプログラム

  • Merdeka Belajar – Kampus Merdeka(自由な学び・開かれた大学)
    → 学生が大学外(企業・自治体・海外)で最大2学期分学べる制度。実践的教育を促進。
  • SMK Link and Match 5.0
    → 職業高校(SMK)と産業界との連携強化。現場実習や企業人講師制度など。
  • Magang dan Studi Independen Bersertifikat(MSIB)
    → 学生向けの有給インターンシップおよび企業主導のリスキリング。

教育・文化・研究・技術省 公式WEBサイト
https://www.kemendikbudristek.com

インドネシア海外労働者保護庁(Badan Pelindungan Pekerja Migran Indonesia/BP2MI)

■主な役割:海外で働くインドネシア人労働者(PMI)の送り出しと保護

BP2MIは、海外に送り出されるインドネシア人労働者(Pekerja Migran Indonesia / PMI)に関するすべての管理・保護を行う国家機関です。

日本の特定技能制度においても、送り出し候補者の登録や保護義務があるため、BP2MIの許認可と手続きは不可欠です。

主に以下のような役割を担っています。

  • 海外で働くインドネシア人の保護と送り出し支援
  • P3MI(人材送り出し会社)の許認可・監督
  • 労働者の登録、訓練、送り出し前オリエンテーション(PAP)の実施
  • 外国受入国との政府間協定の運用(例:日本、韓国、台湾など)

■所管内容

  • 「Pekerja Migran Indonesia(PMI)」の法的保護と福祉
  • 海外就労契約の確認・認証
  • PMIの送出前~送出後(在外支援)までのサポート体制構築

■主なプログラム

  • Program Zero Cost Deployment(送り出し費用ゼロ政策)
    → 労働者が無償で海外就労できるようにする制度。特に日本・韓国向けに重点。
  • Desa Migran Produktif(Desmigratif)
    → 労働者の出身村を対象に、帰国後の職業訓練・起業支援を行う地域開発プログラム。
  • Reintegration Program(帰国後再統合支援)
    → 帰国した労働者の再就職・起業・職業訓練の支援

BP2MI 公式WEBサイト
https://www.bp2mi.go.id

まとめ

それぞれの省庁は独立した役割を持ちながらも、インドネシアの人材育成・海外就労の実現に向けて有機的に連携しています。インドネシア総合研究所では、こうした制度的枠組みを十分に理解し、日系企業や自治体の皆様にとって最適な人材活用モデルの構築を支援しています。

インドネシア人材や、インドネシアにおける学校設立などにご興味のある方は、ぜひお気軽に弊社までお問合せください。

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