介護は、もう「誰かの話」ではない――インドネシア人材と考える、これからの介護人材育成

以前は、介護施設を見かけても、どこか自分とは少し遠い世界のように感じていました。
「高齢者のための施設」
「介護が必要になった人が利用する場所」。
そんな認識だったのかもしれません。
ところが、今は違います。自分の親が、実際に介護を受けるようになったからです。介護をする家族として、介護に携わる方々と接し、施設で働く方々の姿を目にする機会も増えました。
- 車椅子を押す人。
- 食事を介助する人。
- 利用者の方に声をかけながら、日々の生活を支える人。
以前なら何気なく見過ごしていた光景が、今は少し違って見えます。介護は、決して「誰かの話」ではなく、すでに自分の家族の生活の一部になっています。
そして、親が介護を受けるようになって初めて、改めて感じることがあります。介護を必要とする人がいるなら、当然、その人を支える人も必要だということです。
では、その「支える人」は、これからも十分にいるのでしょうか。
高齢化する日本と介護人材不足
日本が高齢化社会であることは、誰もが知っています。「少子高齢化」という言葉も、すっかり日常的なものになりました。けれども、自分の親が介護を受けるようになってみると、その言葉の意味を以前とは違う形で考えるようになりました。
高齢者が増える。
介護を必要とする人も増える。
その一方で、少子化によって働く世代は減っていく。
つまり、介護を必要とする人が増えていく一方で、その介護を担う人は減っていく。これは、介護業界だけの問題ではないのだと思います。介護施設で働く人が足りなければ、必要なサービスを維持することが難しくなります。そして、その先には、介護を必要としている一人ひとりの生活があります。
- 毎日の食事を支えてくれる人。
- 入浴や移動を手伝ってくれる人。
- ちょっとした変化に気づいてくれる人。
実際に介護を身近で経験するようになって、私は「介護人材不足」という言葉を、単なる業界の人手不足として考えられなくなりました。その先には、私たちの親や家族の暮らしがあるからです。
仕事柄、私は日本とインドネシアの人材や教育について考える機会が多く、その中で地方の介護現場について考えることも増えてきました。
人口が減少している地域では、若い世代そのものが少なくなっています。
「求人を出しても応募が少ない」
「若い人が地域に残らない」
「介護職員を確保することが難しい」
こうした課題を抱える地域もあります。でも、こうした問題を単純に「採用が難しい」という一言で片付けてしまうと、少し違うように思います。
介護施設で職員が一人足りない。その先には、介護を必要としている人と、その人を支える家族がいます。だからこそ、介護人材の問題は、介護業界だけでなく、これから私たちがどのような社会で暮らしていくのかという問題でもあるのだと思います。
これから誰が日本の介護を支えるのか
もちろん、まず考えるべきなのは、日本国内で介護の仕事をする人を増やすことです。
- 介護という仕事の魅力を伝えること。
- 働きやすい環境をつくること。
- 介護職員が安心して長く働ける環境を整えること。
こうした取り組みは欠かせません。一方で、人口そのものが減少している地域では、国内だけで必要な介護人材を確保することが難しくなるケースも考えられます。
そこで、外国人材という選択肢があります。
日本でも、介護分野で外国人材が働くことは、すでに珍しいことではありません。ただ、もう一歩違う考え方があってもよいのではないかと思っています。
外国人介護人材を、「足りない人数を埋めるための人材」として考えるだけではなく、「これから地域の介護を担う人を、時間をかけて育てる」という考え方です。
インドネシアで「必要な介護人材を育てる」
インドネシア総研では、これまでインドネシアで日本語教育や職業訓練、人材育成に取り組んできました。その経験を介護分野につなげる中で、可能性を感じているのが、「必要な介護人材を、海外で育てる」という考え方です。
例えば、ある地域の介護施設が、「こういう人に来てもらいたい」という人材像を持っているとします。
- 日本語はどの程度必要なのか。
- 介護について、どのような知識や技能を身につけていてほしいのか。
- どんな仕事を任せたいのか。
- どんなコミュニケーションを大切にしているのか。
- どんな人に、この地域で長く働いてほしいのか。
こうしたことを先に考える。
そのニーズをもとに、インドネシアで日本語や介護の知識・技能、日本の職場文化などを学ぶ。必要な試験や評価を経て、日本の介護現場で働くことを目指す。この流れには、一つの可能性があると考えています。
「日本で働きたい人を探して、あとから仕事を探す」のではなく、「この地域で必要な人材を考え、その人材をインドネシアで育てる」。介護人材の確保について、発想を変えてみるということです。
介護人材の教育で重要なのは、インドネシア側の教育だけではありません。むしろ、最初に必要なのは、日本の介護現場の声だと思っています。
- 日本語はどの程度必要なのか。
- 介護について、何を知っていてほしいのか。
- どんな仕事を任せたいのか。
- どのような接遇やコミュニケーションを大切にしているのか。
- 地域で暮らす上で、どんなことを知っておいてほしいのか。
こうしたことは、施設や地域によって違います。だからこそ、教育内容を先に決めるのではなく、「実際に働く場所」を見据えて人材育成を考える。これが大切なのではないかと思っています。
「いつか日本で介護の仕事をするために勉強する」のではなく、「この地域、この介護施設で働くことを目指して、日本語や介護を学ぶ」。そうすれば、教育する側にとっても、学ぶ側にとっても、目指すものがより明確になります。そして、日本の教育機関とも連携しながら、実際の介護現場に必要な教育内容を考えていくことができるのです。
地方の介護人材不足と外国人材
このテーマについて考える中で、私が特に気になっているのが地方です。
大都市には、人も仕事もさまざまな選択肢があります。一方、人口減少が進む地域では、働き手そのものが少なくなっています。そして、介護を必要とする高齢者は地方にも暮らしています。
人は少なくなる。
でも、介護を必要とする人はいる。
そして、その人たちを支える人が必要になる。
この状況を考えると、地域の外から人を迎えることは、単なる「採用」の問題ではなく、地域の介護を維持していくための一つの方法になるのではないかと思います。
海外から来た人が、その地域で働く。
そこで暮らす。
地域の人と接する。
そして、長く働き続ける。
それは、単に「一人分の人手が増える」以上の意味を持つかもしれません。
外国人介護人材を「受け入れる」から「育てる」へ
親が介護を受けるようになって、私自身の見方も変わりました。
以前は、「介護」という言葉から、介護施設や介護職員を思い浮かべていたように思います。今は、その向こう側にいる一人ひとりの生活を考えるようになりました。
介護を受けている親。
その親を支える家族。
そして、家族だけではできないことを支えてくれる介護職の方々。
介護は、そのどれか一つだけで成り立つものではありません。だからこそ、介護人材について考えることは、「介護業界の人手不足を解決する」だけの話ではありません。自分の親が安心して介護を受けられる社会を、どう維持していくのか。その問いから考える必要があるのではないでしょうか。
もちろん、外国人材の受け入れは、簡単なことではありません。
- 日本語の問題があります。
- 介護の知識や技能を身につけてもらう必要があります。
- 生活面での支援も必要です。
- 職場の側にも、受け入れるための準備が必要です。
だから、「外国人材を受け入れれば介護人材不足が解決する」という単純な話ではありません。
むしろ、「どうすれば、この地域で長く働いてくれる人を育てられるのか」というところから考える必要があるのだと思います。そのためには、日本の介護施設だけでも、インドネシア側だけでもできません。
- 介護現場
- 日本の教育機関
- インドネシアの教育・職業訓練機関
- そして、そこで働く本人。
それぞれがつながって、初めて成り立つ仕組みです。
ただ、最初から完成した答えがあるわけではありません。これから実際の介護現場の声を聞きながら、考えていきたいと思っています。
「こういう人材が必要だ」
「こういうことは、働く前に学んでおいてほしい」
「この地域で働くなら、こういうことも知っておいてほしい」
「こういう人なら、地域で長く働いてほしい」
そうした現場の声が、これからの介護人材育成を考える上で重要です。施設や地域によって、必要な人材は違います。だからこそ、どこにでも同じ人材を送り出すのではなく、その地域、その施設に合った人材をどう育てるのか、そこから考えていきたいのです。
インドネシアと日本をつなぐ、これからの介護人材育成
もし今、
「介護人材が足りない」
「この先、今の体制を維持できるのだろうか」
「外国人材についても考えてみたいけれど、どこから始めればいいのかわからない」
そんなことを感じている介護事業者の方がいらっしゃれば、まずは一度、お話を聞かせていただければと思います。すぐに採用や何かを始めるためではありません。
- その地域で何が起きているのか。
- どんな人材が必要なのか。
- これからどんな介護の現場を残していきたいのか。
そこから一緒に考えることが可能です。
親が介護を受けるようになり、介護は以前よりずっと身近な問題になりました。実際に現場を見ているからこそ、介護を必要とする人だけでなく、支える人をどう確保するのかも考えずにはいられません。人口が減少する地域では、これまでと同じ方法だけでは人材確保が難しくなるかもしれません。
だからこそ、「人を探す」だけではなく、「必要な人材を育てる」。そんな選択肢について、今から考えてみることにも意味があるのではないでしょうか。
私たちは、インドネシアでの日本語教育や職業訓練、人材育成の経験を生かしながら、日本の介護現場とインドネシアでの人材育成をつなぐ可能性を、これからも考えていきたいと思っています。
介護人材の確保や外国人材の受け入れについて、「何から始めればよいかわからない」「自社・自施設に合った人材育成の方法を相談したい」という方は、ぜひ一度インドネシア総研までご相談ください。
インドネシアでの日本語教育・職業訓練・人材育成の経験をもとに、地域や介護施設ごとの課題を伺いながら、必要な人材像や育成方法を一緒に整理いたします。
日系企業向けのインドネシア人材マッチングWebプラットフォーム「バンクオラン(Bank Orang)」はこちら。弊社がインドネシア現地で運営する日本語学校で育成された、特定技能や技能実習、技術・人文知識・国際業務ビザに対応する優秀な人材を直接検索・採用できるサービスです。
▼バンクオラン(Bank Orang)公式サイト
https://indonesia-hr.jp/




