【コラム】インドネシアの首都移転計画に関する最新情報〜目的・計画・経済効果〜

インドネシアの首都ジャカルタがあるジャワ島は人口密度が高く、インドネシア全体の50%以上がジャワ島に集中しています。

そのため、交通渋滞も多く、また地盤沈下も問題になっています。

このような背景から、インドネシア政府はカリマンタン島東カリマンタン州のヌサンタラ(以下IKNと省略)への首都移転計画を発表し、段階的な移転が行われています。

本コラムでは、インドネシアの首都移転についての最新情報や今後の計画をご紹介します。

目次

インドネシアの首都移転の背景と目的

首都を移転する背景、目的は以下の通りです。

ジャカルタの人口過密による交通渋滞と地盤沈下

ジャカルタおよびジャワ島には、インドネシア全人口の50%以上、1億人以上が集中しています。一方、他の島々の人口比率は10%未満の地域が多く、人口の偏りが顕著です。

また、過密による深刻な交通渋滞と地盤沈下が問題視されています。

経済の均等化

GDPへの貢献もジャワ島が大半を占めており、その他地域の経済発展が遅れています。

首都機能を他の島に移すことで、地域間の経済格差の均等化を目指しています。

水資源の不足

インドネシアの公共事業・国民住宅省(PUPR)によると、ジャワ島は深刻な水不足に直面しており、中部ジャワでは既に水不足を示す黄色信号が出されています。

自然災害の脅威

ジャカルタの土地の約50%は洪水に遭うリスクが高く、火山噴火・地震・津波のリスクも高い地域となります。

上記のような要因で、インドネシアの前大統領ジョコ・ウィドド大統領は首都移転を決定しました。

参考WEBサイト:https://money.kompas.com/read/2022/02/11/052456426/6-alasan-ibu-kota-negara-pindah-dari-jakarta-ke-kalimantan-timur?page=all

インドネシアの首都移転の5フェーズ

インドネシアの首都移転計画は、2022年から2045年にかけて段階的に実施される予定で、

以下の5フェーズで進められます。

フェーズ

2022年〜2024年

  • 政府機能(大統領官邸や各省庁)の一部移管
  • 通信・電気・水道などインフラの整備
  • エコシステム開発の開始
フェーズ

2025年〜2029年

  • 環境関連設備(ダムや排水システム等)の整備
  • IKN周辺の地域開発
  • 防衛機関(国防省・警察など)の拠点整備
フェーズ

2030年〜2034年

  • スマートシティの導入
フェーズ

2035年〜2039年

  • 3都市(ヌサンタラ、サマリンダ、バリクパパン)のインフラ整備とエコシステムの構築
フェーズ

2040年〜2045年

  • 移転最終フェーズ、交通網含む全体整備完了

上記のように2022年〜2045年約20年をかけて段階的に行う予定です。

参考WEBサイト:https://kpbu.kemenkeu.go.id/read/1142-1364/umum/orang-juga-bertanya/skema-kpbu-apa-perannya-dalam-mendukung-pembangunan-ikn
https://www.kompas.com/tren/read/2024/03/07/200000965/ibu-kota-indonesia-masih-jakarta-kapan-resmi-pindah-ke-ikn-nusantara-?page=all

インドネシア首都移転の進行状況(2025年6月時点)

首都移転の進行状況としては、当初のスケジュール通りには実施されていません。

第一フェーズとして、公務員約6,000人をIKNに移管する手続きが2024年に予定されていました。

しかし、国家機構権限強化・官僚改革省(PANRB)は、2025年1月24日に発行した文書で

公務員の移管はまだ実施できていないことを発表しています。

参考WEBサイト:https://www.liputan6.com/bisnis/read/5926510/maju-mundur-pemindahan-ibu-kota-ke-ikn-kapan-asn-hijrah?page=3

インドネシア首都移転による経済効果

ジャカルタからIKNへの首都移転は、インドネシア全土、IKNともに以下のような大きな経済的効果を与えると予想されています。

  • 投資増加
    国内外からインフラ・不動産・再生エネルギー・テクノロジー分野への投資が見込まれます
  • 雇用創出
    建設業、公共サービス、民間部門まで様々な分野で数千の新規雇用が創出さる見込みです
  • 地域開発の促進
    ジャワ島外への首都移転により、カリマンタンを含む他地域のインフラと経済が発展する可能性があります。

その他、東カリマンタンの地域総生産(GRDP)の増加や、中小企業の発展、観光分野の発展などの経済効果が期待されています。

インドネシアの首都移転に伴う環境課題

IKNへの首都移転に伴い、以下のような課題が指摘されています。

  • 都市開発による森林破壊と生き物の生息地の喪失
  • カリマンタンの希少種や固有種などの生物多様性への影響
  • 都市の建設と運営による水質汚染と大気汚染
  • 人口増加による大量の廃棄物の発生
  • 温室効果ガスの排出量増加

これらの課題を解決するには、政府、民間、地域社会による包括的なアプローチが必要になります。

参考WEBサイト:https://www.liputan6.com/feeds/read/5900988/apa-arti-ikn-memahami-ibu-kota-negara-baru-indonesia?page=9

今回のコラムでは、インドネシアの首都移転についてご紹介しました。

2045年の完了を目指す首都移転計画ですが、現時点では大きな進展は見られていない状況です。

しかし、この移転はインドネシア全体の経済構造に大きな変化をもたらす可能性があるため、インドネシアでのビジネス展開においては、今後の動向に注目し、最新情報を常に把握しておくことが重要です。

弊社インドネシア総研では、現地市場の動向調査からビジネス展開のご支援まで、幅広いサービスを提供しております。

インドネシア市場へのご関心やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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