投資家必見!インドネシア工業団地に新「国家認証制度」導入へ―2026年施行の新基準を解説

インドネシア工業省(Kementerian Perindustrian)は、全国の工業団地(Kawasan Industri)を対象に、新たな評価基準および認証制度を導入する方針です。根拠は2025年7月16日に制定された Peraturan Menteri Perindustrian Nomor 26 Tahun 2025(工業団地の基準および認証制度に関する工業大臣規則第26号)であり、施行予定日は 2026年1月23日とされています。

本規則は、上位規範である 2024年制定の「Peraturan Pemerintah Nomor 20 Tahun 2024(工業地域政策に関する政令第20号)」の施行細則として位置づけられ、工業団地を「経済成長と地域開発の均衡を担う戦略拠点」として再定義し、投資家にとっての選択可能性と透明性を高める狙いを持つものです。

目次

背景

インドネシア政府が目標とする8%の経済成長を達成するには、工業成長率を9~10%に引き上げる必要があり、その達成には製造業のより高い伸びが必要との見方が示されています。そのために必要な戦略的ステップの一つが、同規則の審議を加速させ、規制改革を進めることでした。

同規則は、投資誘致、支援インフラの強化、そして業界関係者への適切なインセンティブ提供のための戦略的ツールとして機能し、最終的には、国際市場における国内産業の競争力を高めるだけでなく、地域社会にとってより広範かつ持続可能な雇用機会を創出すると考えられています。

制度のポイント

同制度の主な特徴は以下の通りです。

団地インフラ、環境管理、運営・サービスという三大要素を対象とした評価枠組みを導入。評価枠組みは、三本柱で構成され、審査・認証が実施される仕組みとなります。

  • インフラ(infrastruktur kawasan):(配点50%)
  • 環境管理(pengelolaan lingkungan):(配点25%)
  • 地運営およびサービスの質(manajemen dan layanan kawasan):(配点25%)

評価・認証の実行主体として、団地の管理・運営者とは別に、工業省傘下に「工業団地委員会(Komite Kawasan Industri)」が設置され、同委員会が認証可否・点数評価を実施する枠組みとなります。

認証基準として、「総合得点150点以上」のスコアを満たした団地には「認証済(terakreditasi)」として証明書が交付されるという現地報道が存在します。

この認証制度は、「事業活動を支援するための許可制度(PB UMKU:Perizinan Berusaha Untuk Menunjang Kegiatan Usaha)」と連動する仕組みが想定されています。つまり、認証を取得した工業団地は、政府から「基準を満たした優良な事業拠点」として認められることになり、そこに入居する企業も行政手続きや事業許可の面で、よりスムーズな対応や優遇を受けられる可能性があります。

ハラル対応の工業団地(KIH)

例えば、インドネシアには既に「ハラル対応の工業団地(Kawasan Industri Halal=KIH)」が存在しており、リアウ諸島の Kawasan Industri Halal Bintan、バンテン州チカンデの Modern Halal Valley(Modern Cikande 内)、東ジャワ州シドアルジョの Halal Industrial Park Sidoarjo が代表例です。これらは、原材料の取り扱いから製造工程、区画分離、水処理・検査・監査の仕組みに至るまで、イスラム法に適合する運用体制を整備してきた先行事例である。インドネシア政府や公的機関の情報発信でも継続的に紹介されており、新制度の下で基準を具体化するうえで実務的な参照モデルになりやすい団地であるといえるでしょう。

また、制度の狙いについては、所管部局である国際産業アクセス・地域産業強化総局(KPAII)のトリ・スポンディ長官が、「工業団地を〈インフラ・環境・サービス〉の三面から、効率的・透明かつ持続可能性の原則で運営するための指針である」と明言しています。また、この内容を共有するための説明会が10月14日にジャカルタで開かれ、既存の工業団地の管理者が173名以上参加した実務的な場となりました。

国家優先プロジェクトに指定された工業団地の関係者をはじめ、関係各省庁や地方政府、インドネシア工業団地協会(HKI)、さらに国連工業開発機関(UNIDO)やスイス経済事務局(SECO)などの国際協力機関も参加しました。

意義および期待される効果

この制度には、次のような意義があります。

この制度によって、各工業団地の運営レベルが定量化され、投資家が立地を選ぶ際の判断材料がより明確になります。たとえば、団地ごとにインフラ、環境、サービスの水準がどの程度整っているか、また「政府認証を受けているかどうか」といった情報が公的に示されることで、国内外の企業が安心して投資先を比較・検討できるようになります。

認証を受けた工業団地は、第三者のお墨付きがある分だけ信用力が高まり、企業の入居や投資が進みやすくなります。また、国際的な調達基準に合致しやすくなるためサプライチェーンに組み込まれやすく、設備や運営水準が整っていることで物流面のトラブルや環境面のリスクも抑えやすいといえるでしょう。

国内産業政策の焦点を「量」から「質」へ切り替える意義があります。工業団地を単に数多くつくる段階から、一つ一つの質を高める段階へ軸足を移し、その結果として各地域・各島嶼に産業が行き渡るようにし、地域間の偏りをならし、産業を振興していく方針への転換となります。

認証基準を満たすほど評価が上がる仕組みにより、既存の工業団地や地方自治体、運営者は道路・電力などのインフラ更新、排水処理などの環境対策、ワンストップ窓口などのサービス改善に取り組む動機が強まり、結果として団地全体の競争力が底上げされる構図となります。

留意点・今後の課題

制度運用には以下のような課題も想定されます。

既存の工業団地では、認証基準を満たすために道路や電力網などのインフラ整備を更新したり、排水処理などの環境設備を改修したり、運営サービス体制を強化したりする必要が生じる可能性があり、その分の費用負担が発生する可能性があります。

地方や島嶼部、また規模の小さい工業団地では、資金力や人材、運営ノウハウなどの面で大規模団地との差があるため、認証を取得できる団地とそうでない団地の間で格差が広がるおそれがあります。

認証取得後も、制度が「一度きり」で終わらず、定期的なチェックや評価、更新が実際に行われるかどうかが重要になります。形だけの手続きにとどまらず、実際に団地の質の維持や改善につながる仕組みとして実効性をもって運用されるかどうかが鍵となります。

評価・認証の基準が、投資家や入居企業が実際に重視する条件(物流アクセス、安定した電力、環境規制への適合など)とどれだけ合致しているかが、運用面の成否を左右するポイントとなります。

以上のように、本制度はインドネシアの工業団地を、国内外の投資・製造・サプライチェーンにとって信頼できる高品質の拠点へ押し上げるための枠組みとなるでしょう。インフラ・環境・サービスの三本柱を共通基準で評価・認証することで、団地の実力を明確に示し、運営の競争力を高めると同時に、投資判断を後押しすることをねらいとする法制度改革であると言えるでしょう。

インドネシア進出にご興味のある方は、ぜひお気軽に弊社までお問合せください。

参考
Warta Ekonomi. (2025, October 20). Dorong produktivitas, penerapan standar kawasan industri jadi langkah strategis. https://wartaekonomi.co.id/read587014/dorong-produktivitas-penerapan-standar-kawasan-industri-jadi-langkah-strategis
Neraca. (2025, October 15). Standar kawasan industri: Kemenperin berlakukan peraturan baru SKI. https://www.neraca.co.id/article/226735/standar-kawasan-industri-kemenperin-berlakukan-peraturan-baru-ski

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