インドネシアの果物漫遊記(連載②)「サラック」とはどんな果物か ―インドネシアの果物から見える栄養学と自然―

💡 3分でわかる!この記事のポイント

ビジネス・旅行での活用: インドネシア出張や視察の際に現地市場やスーパーで実際に見かけるサラックについて、基礎知識として押さえておくと、現地の方との会話や食文化の理解に役立ちます。農業・食品分野での市場調査やスタディツアーの事前知識としても活用できます。

「スネークフルーツ」サラックの基本: 蛇の鱗のような外皮を持つことから英語で”Snake fruit”と呼ばれるサラックは、ジョグジャカルタやバリ島など特定の産地によって品種も異なります。市場・スーパーで身近に手に入る一方、日本ではほとんど流通しない希少な果物です。

食べ方・味・栄養の解説: サクッとした独特の食感と程よい甘さ、軽い渋味が特徴。ポリフェノール・フラボノイド・食物繊維・ビタミン類を含む栄養価の高い果物として、現地では胃腸の不調時にも親しまれています。

環境・産業分野での可能性: 食品としての利用にとどまらず、サラックの種子粉末が重金属除去能力を持つことも報告されており、環境技術資源としての研究も進んでいます。

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インドネシアの市場や果物屋をのぞくと、不思議な見た目の果物を見かけることがあります。サラック(Salak)です。

外皮が蛇の鱗に似ていることから、中国語では「蛇皮果・蛇果」と呼ばれ、英語では“Snake fruit“と呼ばれています。

外皮は茶色で鱗状の模様をしており、一見すると少し変わった見た目の果物です。しかし皮をむくと、中から淡いクリーム色の果肉が現れます。果肉はニンニクの片のように細長く分かれ、その一片一片に食べられない硬い濃い茶色の種が隠れています。   

インドネシアのフルーツ、サラック。

果実は水分が少ないため、「サクッ」とした独特の食感があります。味は通常の南国フルーツのように強烈に甘いタイプではなく、程よい甘さとややさっぱりした風味が特徴です。軽い渋味が混ざるため、食後でも食べやすい果物です。

外皮は固いのですが、手で剥くことができます。ただし、縁が鋭いため、剥く際には注意が必要です。うっかり手を引っかけて傷つけることがあるので、慎重に剥くようにしましょう。

サラックはホテルの朝食ビュッフェに並ぶこともあり、筆者は食べきれなかった分を後で軽食代わりに食べることもあります。

目次

サラックはどこで取れるのか

サラックはヤシ科の植物で、学名を Salacca zalacca といいます。

主な栽培地域は

  • インドネシア
  • マレーシア
  • タイ
  • ブルネイ

などの東南アジアの熱帯地域です。

特にインドネシアでは広く栽培されており、

  • ジョグジャカルタ(サラック・ポンド)
  • バリ島(サラック・バリ)
  • 西ジャワ

などが代表的な産地として知られています。

サラックの木と実のなり方

サラックはヤシ科です。しかし、ココナッツのように高く伸びる木ではありません。背が低いヤシのような見栄えです。

一般的には

  • 高さ:2〜6メートル
  • 葉:長い羽状の葉
  • 実:地面近くに密集

という形状をしています。

サラックの葉柄や幹には硬いトゲが多数生えており、収穫作業では注意が必要だと農家の人から伺いました。筆者もかつてジャワ島のサラック林を訪れたことがあります。低いヤシが密集しているため、一見すると穏やかな林のように見えます。

しかし近づいてみると、葉や幹には鋭いトゲがびっしりと生えていました。うっかり触れてしまい、トゲに刺さって痛い思いをしたことがあります。農家の人たちが収穫の際に慎重になる理由がよく分かります。

サラックの実が地面近くに生る様子。幹には鋭いトゲがある。(筆者撮影)

サラックは実の生り方も少し変わっています。多くの果物は枝の先や木の高い位置に実がなりますが、サラックは幹の根元近くに房状に実がつきます。そのため、サラックの実は地面に近い位置にぶら下がるように生えているのです。

サラックの健康への効用

栄養面でも、サラックは興味深い果物です。研究レビューによると、サラックには

  • ポリフェノール
  • フラボノイド

いった抗酸化物質が含まれていることが報告されています。

ポリフェノールは抗酸化作用を持ち、細胞のダメージを防ぐため、老化防止に効果があるとされています。特に赤ワインに豊富に含まれており、赤ワインの健康効果がよく話題に上ります。

一方、フラボノイドも抗酸化作用を持つ成分で、免疫力強化に貢献します。フラボノイドは、特にお茶(緑茶や紅茶)や柑橘類などに多く含まれており、血液の循環を助け、炎症を抑える働きがあります。

サラックはこれら強力な抗酸化物質を含んでおり、体内の有害なフリーラジカルを除去し、細胞の酸化ストレスを軽減することが報告されています。

さらにサラックは、体内でビタミンAに変わるベータカロテンというプロビタミンAを多く含んでいます。その他にも、ビタミンC(アスコルビン酸)、チアミン(ビタミンB1)、ナイアシン(ビタミンB3)、リボフラビン(ビタミンB2)、葉酸に加え、消化を助ける食物繊維も豊富に含まれていることが報告されています。

食物繊維は消化管の働きや満腹感と関係する栄養素として知られており、サラックは食物繊維が豊富なため満腹感が持続し、食べ過ぎを防ぐのにも役立ちます。 

インドネシアのフルーツ。サラックとオレンジ。
サラックとオレンジを少し遅めの昼食代わりに。(筆者撮影)

筆者はインドネシア滞在中、お腹の調子がゆるくなったとき、よくサラックを食事代わりにすることがあります。実際、インドネシアでも、お腹の不調を感じたときにサラックを食べるとよいと言われることがあります。

これはサラックに含まれるポリフェノールの一種であるタンニンが、渋味を生む「収れん性」の成分であることと関係していると考えられます。ただし、この点については医学的に確立された治療効果として証明されているわけではなく、あくまで伝統的な食習慣として知られているものです。

またサラックには炭水化物も含まれているため、食品として摂取すればエネルギー源として利用されます。脂質が少ないため、軽い間食として食べるのに適しています。

環境技術資源として

さらに、サラックの種子粉末には、重金属除去能力があることも分かっており、環境に優しい水処理のための新たな道を開く可能性があります。

このようにサラックは自然療法、機能性食品、さらには環境技術における重要な資源としての可能性を秘めており、今後の研究によってその利用がさらに広がることが期待されます。

まとめ

 サラックは蛇の皮のような外見を持つ少し変わった果物ですが、インドネシアでは非常に身近な存在です。東南アジアの熱帯地域で栽培され、低いヤシの木の根元に房状に実るという特徴的な植物でもあります。

また、ポリフェノールや食物繊維、ビタミンCなどを含む果物として栄養学的にも研究が進められています。もっとも、現時点の研究では、サラックが特定の病気を治療する食品として医学的に確立された効果を持つわけではありません。

それでも、程よい甘さで軽く食べやすい果物であり、インドネシアの果物文化を知るうえでも興味深い存在です

スーパーマーケット「パサリナ」。
スーパーマーケット「パサリナ」。果物コーナーの中ほどにサラックが並んでいる。

サラックは、市場やスーパーでは普通に売られており、ジャカルタ中心部であれば、サリナデパート地下のスーパーマーケット「パサリナ」などで販売されています。

一方、サラックは、日本ではあまり見かけない果物です。インドネシアを訪れた際には、伝統市場やスーパーマーケットでこの不思議な果物を探してみるのも面白いかもしれません。

日本とインドネシアに拠点を持つ弊社は、農業・食品・地域経済・サプライチェーン分野では、一次産業から加工、流通、輸出までを対象とした調査・コンサルティングを行っています。例えば、現地企業や関係機関へのヒアリング、制度・規制の分析、ビジネスモデルの検討を通じて、日本企業のインドネシア展開を支援しています。

また弊社は、中央政府・地方政府、大学、金融機関、産業団体などとのネットワークを活用し、現地調査やフィールドワークに基づく一次情報を重視しています。このようなデータを利用して、市場構造やリスク、成長分野を整理し、企業の意思決定に役立つ実務的な分析と提案を提供しています。

さらに近年は、ドリアンやマンゴスチンなど、インドネシア各地の果物文化や地域経済を体感するスタディツアーや、市場にはあまり流通しない「希少果物」「幻の果物」を探索するツアープログラムなどの企画も行っています。これらのプログラムは、企業研修やリサーチツアーとしての実施も可能です。

その他、市場調査、FS(事業性評価)、現地パートナー探索、投資スキーム検討、法規制・認証制度(ハラール等)の調査、サプライチェーン設計など、事業立ち上げに向けた伴走型支援も行っています。インドネシアの果物市場や農業・食品分野にご関心がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

参考文献リスト
Yadav, P., Singh, A., & Sharma, S. (2025). Nutraceutical and Therapeutic Potentials of Snake Fruit (Salacca zalacca): A Comprehensive Review. Innovative Research Thoughts, 11(4), 36. https://doi.org/10.36676/irt.v11.i4.1642. Published by Shodh Sagar. Available at https://irt.shodhsagar.com.

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