インドネシア・OSSシステムで頻発する「NIB(事業者番号)が出ない」問題とは

―ゾーニングとKBLIが阻むインドネシア事業許認可の最前線―
OSSでの手続きが止まってしまった、KBLIが通らない、NIBが発行されず先に進めない――。
インドネシアで会社を設立しようとするとき、最初の関門になるのがNIB(事業者番号)です。最近、「法人設立のための書類は揃っているのにNIBが出ない」「OSSで手続きが止まってしまう」という相談が増えています。とりわけOSS 2025の運用下では、単なる入力ミスではなく、ゾーニング(用途地域)とKBLI(事業分類コード)の連動によって、手続きが“詰む”ケースが現場で起きています。本稿では、なぜNIBが出ないのか、その構造的な原因と実務上の注意点を整理します。
KBLIはすべての許認可の出発点
まず前提として、KBLIはインドネシアにおける許認可の土台です。KBLIが確定しなければNIBは発行されず、NIBが出なければ、その先の営業許可や業種別ライセンス、各種登録・届出へ進めません。インドネシアにおける銀行口座の開設、オフィス賃貸、従業員の雇用、顧客との契約など、事業開始に必要な実務も連鎖的に遅れます。外資法人(PMA)の場合は、投資計画・採用計画・本社稟議のスケジュールにも影響し、コストが見えないまま時間だけが過ぎる、という状態に陥りがちです。
では、なぜKBLIが処理できなくなるのでしょうか。典型例は、OSSが住所情報をもとにRTRW/RDTR(空間計画)データを参照し、当該所在地とKBLIの適合性を自動判定する場面です。システムが「不適合」と判定すると、KBLIが入力できない、または承認工程に進めないことがあります。問題は、現場の事実とシステム判断が食い違う場合です。実際にはそのエリアで同種の事業が既に運営されている、あるいはインドネシアの地方政府側の説明では許容されているにもかかわらず、OSS上は否認される、という矛盾が起き得ます。
中央システムと地方データの非同期という構造
この背景には、インドネシアの中央システムと地方データの非同期という構造があります。OSSは投資省/BKPMの枠組みで、データに基づく自動処理を前提に設計されています。一方、空間計画を所管する土地・空間計画省/国家土地庁(ATR/BPN)や地方政府側では、データの更新タイミング、デジタル化の進捗、現場運用の解釈が地域ごとに異なることがあります。その結果、地方では「問題ない」とされる事業が、中央の自動判定では「不適合」として止まる、という逆転現象が生じます。事業者にとって厄介なのは、ここから先が“入力作業”ではなく“調整業務”になる点です。
OSS時代の許認可は、オンラインで完結するように見えて、実務では「どのデータが、どのロジックで、どの判断を引き起こしているか」を読み解き、関係機関と擦り合わせる工程が必要になります。インドネシアの投資省側に問い合わせるべきなのか、土地・空間計画省/国家土地庁なのか、地方政府なのか、あるいはOSSの承認担当やIT側なのか。窓口が分散しやすく、正しい打ち手に辿り着くまでに時間がかかります。ここで判断を誤ると、同じ入力を繰り返すだけで状況が変わらず、社内では「何が問題なのか分からない」ままプロジェクトが停滞します。
だからこそ重要なのが、最初の設計です。具体的には、(1)想定事業に対してKBLIを“最も正確に”選ぶこと、(2)所在地のゾーニングを“机上だけでなく運用実態も含めて”把握すること、(3)OSS入力の前提となる情報(住所表記、活動範囲、補足説明の整合性など)を最初から整えることです。初期段階でここがズレると、後から修正しても、追加許認可や拡張フェーズで再び詰まる可能性があります。許認可は一度取れば終わりではなく、事業拡大や投資受入のたびに「過去の設計」が参照されるためです。
なぜ法務部門の関与が不可欠なのか
弊社インドネシア総研の法務部門が支援で重視しているのも、この“初期設計と調整”です。許認可の実務は、単に書類を揃える作業ではありません。規制の横断理解、中央と地方の関係性の把握、そしてシステム上の判断を現場の事実に合わせて整合させるコミュニケーションが求められます。私たちは、KBLIが処理できない、ゾーニングの読み取りが一致しない、承認が停滞して理由が見えない、といった局面で、関係機関と論点を整理し、データと実態を結び直すことで、手続きを前へ進める支援を行っています。これは近道ではなく、制度が本来意図する「正しいデータに基づく許認可」を機能させるための調整です。
現場でよく見られる“症状”としては、入力画面でKBLIが候補に出てこない、選択はできても次画面でエラーになる、所在地を変えると通るが現実の住所では通らない、承認ステータスが長期間動かない、といった形で表れます。担当者が不慣れだと「何か書類が足りないのでは」と考えがちですが、実際にはデータ参照先の問題であることもあります。その場合、申請者側でできる対策は、闇雲に再入力することではなく、論点を切り分けて原因を特定することです。
たとえば、同じKBLIで別住所なら通るのか、同住所で別KBLIなら通るのか、住所表記(番地・RT/RW・建物名)の揺れが影響していないか、事業活動の説明文がKBLIの定義と整合しているか、といった観点で切り分けると、次のアクションが見えやすくなります。また、後工程のリスクとして、NIBが出た後に「実態とKBLIが合わない」状態で運用を始めてしまうと、追加ライセンスや監督当局対応の局面で説明負担が増える可能性があります。最初の“少しの違和感”を放置しないことが、長期的な安定につながります。
まとめ
インドネシアにおいて、許認可は事業の成長曲線を支える重要なインフラです。設立時点での詰まりは一見すると小さな問題に見えても、その後の採用、取引開始、投資家への説明、拠点拡張といった局面で、累積的に影響してきます。だからこそ、KBLIやゾーニングを単なる「手続きの項目」としてではなく、「事業設計の一部」として捉えることが、OSS 2025時代の実務では欠かせません。
NIBが出ない、KBLIが通らない、OSSで手続きが止まる――。
こうした問題の多くは、入力ミスではなく、制度・システムと現場データの不整合に起因しています。
弊社インドネシア総合研究所では、KBLI選定やゾーニング確認、OSS入力の初期設計から、中央省庁・地方政府との調整を含む実務対応まで、インドネシアの事業許認可を一貫してサポートしています。すでにお困りのケースはもちろん、これからインドネシアに法人設立や進出を検討している段階での事前相談にも対応可能です。
問題が起きてから対処するよりも、最初に正しく設計することが、結果的に最も速く、最も安定した許認可につながります。インドネシアでの法人設立や新規事業に少しでも不安がある方は、ぜひ早い段階でご相談ください。


