【コラム】インドネシアにおける男性用美容製品・サービスの需要の高まり

近年、インドネシアでは男性の身だしなみやセルフケアに対する認識が大きく変化しています。従来、美容やセルフケア製品は主に女性用のものがほとんどでしたが、現在「外見への投資」の重要性が男性の間でも広く認識されるようになり、その結果、男性に特化した製品やサービスの需要がインドネシアにて急増しているのです。

このトレンドを後押ししている主な要因のひとつは、ソーシャルメディアの影響力の高まりと、男性美容インフルエンサーの台頭です。インスタグラムやYouTubeといったプラットフォームは、最新の美容・トレンドや製品を紹介する強力なツールとなっており、多くのイ男性インフルエンサーがフォロワーを獲得しています。美容分野において知名度の高いインドネシアの男性インフルエンサーには、Jovi Adhiguna(@joviadhiguna)、Alpha Makeup(@andreaslukita_)、Richard Leo(@richarddleoo)、Endi Feng(@endi_feng)などがいます。こうしたインフルエンサーは、男性の美容やセルフケアという考え方を正常化し、これまで美容に無頓着だった男性にもさまざまな美容法を試してもらう上で重要な役割を果たしています。

男性用美容製品の需要増加のもう一つの要因は、社会規範やジェンダーロールの変化です。インドネシアでは、近代化とグローバル化が進むにつれ、伝統的な男性的固定観念が覆されつつあります。社会全体が男性の外見を通じた自己表現に寛容になり、個人が美容習慣に時間とお金を投資することを厭わなくなっています。このような考え方の変化により、男性が偏見を恐れることなく、美容やセルフケアを享受しやすい環境が整いつつあるのです。

また、新型コロナウイルス感染症の流行も、インドネシアの男性美容業界にも予期せぬ影響を与えました。オンラインミーティングに参加する機会が増えたことで、画面上に映る自分を見て、身だしなみを見直す人が増えたのです。マスクの着用や在宅勤務の増加に伴い、ダウンタイムの発生する美容医療を受けることへのハードルが下がったことも、美容需要の急増に拍車をかけました。

こうした需要の高まりを受けて、インドネシア市場では、男性に特化した美容・セルフケアブランドが急増しています。『Norm(@norm.id)』や『Himistry(@himistry)』のようなローカルブランドが登場し、インドネシア人男性のニーズや好みに合わせた様々な製品を提供しています。これらのブランドは、男性の美容に対する関心の高まりにいち早く着目し、洗顔料、化粧水、ヘアスタイリング製品、さらにはメイクアップ製品に至るまで、幅広い商品を展開しています。国際ブランドもまた、インドネシアの男性美容市場の可能性に注目しています。

L’Oreal(ロレアル)、NIVEA(ニベア)、Garnier(ガルニエ)のような世界的大企業は、男性に特化した製品ラインを立ち上げ、マーケティングキャンペーンや地元のインフルエンサーとの提携を通じて、インドネシアの消費者を積極的にターゲットにしています。これらのブランドは、インドネシア独自の文化的・社会的背景に合わせて製品やマーケティングメッセージを適合させることの重要性をしっかりと認識し、インドネシア市場で成功を納めています。

製品だけでなく、インドネシアでは男性専用の美容サービスの需要も高まりを見せています。男性専用の理髪店やサロンの人気が高まっており、理髪や髭剃りから、フェイシャルやマッサージ、トリートメントまで、様々なサービスを提供しています。こうした店は、男性がセルフケアに没頭するだけでなく、同じく美容に気を遣う仲間と情報交換するための、安全かつ快適な交流の場としての役割も果たしています。

インドネシア独自のeコマースやデジタル・プラットフォームの台頭も、男性の美容製品やサービスへのアクセスを容易にしました。TokopediaやShopeeのようなECプラットフォームでは、男性用美容製品の販売が大幅に伸びており、多くのブランドがオンライン限定のお得な情報や割引を提供しています。これによって、美容製品の対面購入に未だ抵抗がある男性も含め、全ての購買層が手軽に様々な美容製品を試し、個々のニーズや好みに最適なものを見つけることが容易になりました。

Tokopediaの男性用スキンケア商品(https://www.tokopedia.com/search?q=perawatan+wajah+pria&source=universe&st=product&navsource=home&srp_component_id=02.02.02.01

インドネシアにおける男性用美容産業には、その有望性の影に、いくつかの対処すべき課題が残っています。主な課題のひとつは、インドネシア人男性のセルフケアと美容の重要性に対する認識と教育が限られていることです。多くの男性はまだ美容を女性的なものと捉えており、製品やサービスに投資することを躊躇う傾向が残っています。そのため、ブランドやインフルエンサーは、こうした固定観念を打破し、男性のセルフケアのメリットを広める上で重要な役割を担っているのです。

もうひとつの課題は、インドネシアの地域によって所得水準や購買力が異なることです。男性の美容製品やサービスに対する需要は、ジャカルタやスラバヤのような都市部では旺盛ですが、小都市や農村部では依然として限定的です。ブランドはこうした地域差を考慮し、より幅広い消費者が製品をより入手しやすく、手頃な価格で購入できるような戦略を立てる必要があると言えます。

インドネシアの男性用美容業界は、まさに今、急成長と変革の時期を迎えています。社会規範の変化、ソーシャルメディアの影響、パンデミックの影響に後押しされ、インドネシアではより多くの男性がセルフケアの概念を取り入れ、外見に投資するようになっています。

日本のブランドにとっても、この高まる需要を取り込み、インドネシア人男性特有のニーズや嗜好に応える製品やサービスを生み出す大きなチャンスです。弊社インドネシア総合研究所では、日本の企業様のインドネシア進出サポートにおける豊富な実績がございます。BPOM(インドネシア国家医薬品食品監督庁の販売許可)取得から販売に至るまで、BPOM専門家でもある現地アドバイザーと共に、着実なフォローをさせていただきます。インドネシアへの商品販売(輸出)、及び弊社サービスにご関心をお持ちの日本企業の皆様、是非お気軽に弊社インドネシア総合研究所へお問い合わせくださいませ。

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