【コラム】インドネシアの観光業における新型コロナウイルスの感染拡大の影響と今後の取り組み

各国の観光促進を目的とした国際連合の専門機関、国連世界観光機関(UNWTO)のデータによると、2020年の国際観光到着数は2019年の同時期と比べ、約10億人も少ないことが明らかになりました。

国際観光到着数の減少により、国際的な観光業全体の損失は9,350億米ドルに達し、世界経済危機に直面した2009年の10倍以上の規模にも相当すると言われています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により世界の観光業は非常に厳しい状況に陥っていますが、インドネシアの観光業界ではどうなっているのでしょうか。

今回のコラムではインドネシアの観光業における新型コロナウイルス感染拡大の影響についてご紹介致します。

参考WEBサイト:https://unwto-ap.org/topics/baro201217/

 

新型コロナウイルスがインドネシアの観光業に与えた影響について

下図は2019年(新型コロナウイルス流行前)と2020年(新型コロナウイルス流行後)の1月〜6月にかけてインドネシアへ訪れた観光客数の比較です。

出典:https://voi.id/ja/news/10277/readを基に弊社作成 (閲覧日:2021年9月2日)

 

新型コロナウイルス流行前の2019年の1月〜6月において、インドネシアへ訪れた観光客数は772万人なのに対し、新型コロナウイルス流行後の2020年同時期における観光客数は309万人と、463万人も減少していることが分かります。割合にすると59.96%の減少となります。

続いて、下図は2019年の6月中のインドネシアのホテルにおける客室稼働率と、2020年の同月中の客室稼働率の比較です。

出典:https://voi.id/ja/news/10277/readを基に弊社作成(閲覧日:2021年9月2日)

 

新型コロナウイルス流行前のホテルの客室稼働率は、2019年に52.27%だったのに対し、新型コロナウイルス 流行後の2020年のそれは19.07%となり約32%もの大幅に下落していることが上図から読み取れます。

参考WEBサイト:https://www.bps.go.id/pressrelease/2021/02/01/1796/jumlah-kunjungan-wisman-ke-indonesia-bulan-desember-2020-mencapai-164-09-ribu-kunjungan-.html

 

新型コロナウイルスがインドネシアの観光名所であるバリ州に与えた影響について

観光地として有名なインドネシアのバリ州では、地域内総生産の54%を観光業が占めています。

バリ州の観光業における、新型コロナウイルスの影響はどのようになっているのでしょうか。

バリ州では今までにも、バリ島爆弾テロ事件(2002年、2005年)やアグン山噴火(2017年)などによる経済的な危機がありましたが、新型コロナウイルスによる観光業界に及ぼした影響は現時点で既に歴史上最大と言われています。

2019年12月単月でバリ州に訪れた外国人観光客の数は55万人でしたが、2020年8月単月では僅か22人となり、バリ州の観光業界は単月あたりRp9.7兆(約746億円)の外貨収入を失った計算になります。

バリ州の副知事は、今回の新型コロナウイルスにおける観光業への影響を踏まえ、今後はバリ州における農業の強化により観光業への依存度低下を図る方針であると述べています

また、新型コロナウイルス収束後の外国人観光客受け入れに備え、ワクチン接種の強化や健康プロトコル厳守強化を行う地域として、ウブド、サヌール、ヌサドゥアの3地域を「グリーン・ゾーン」と定め2022年までに外国人観光客の受け入れの増加を目指しています。

参考WEBサイト:https://www.merdeka.com/uang/pariwisata-terpukul-pandemi-covid-19-bali-kehilangan-devisa-rp97-triliun-per-bulan.html
https://www.merdeka.com/peristiwa/selama-pandemi-covid-19-bali-kehilangan-54-persen-kontribusi-sektor-pariwisata.html
https://thehoneycombers.com/bali/bali-borders-re-opening-plan-2021/

新型コロナウイルスがインドネシアジャカルタ首都特別州に与えた影響について

インドネシアのジャカルタ首都特別州の観光業界における、新型コロナウイルスによる影響は以下の通りです。

新型コロナウイルス流行前の2019年に、年間を通してジャカルタを訪れた外国人観光客数は240万人でしたが、新型コロナウイルス流行後の2020年に年間を通して訪れた外国人観光客数は、3万9千人(約98%減)と大幅に減少しています。

また、観光客の減少により、ジャカルタにあるホテルの客室稼働率も新型コロナウイルス流行前は60%でしたが、新型コロナウイルス流行後には39%へと減少し21%も下落しました。

新型コロナウイルスによる観光業界への影響を受けて、ジャカルタ首都特別州政府は、新型コロナウイルスの感染者を隔離する施設としてホテルを利用するなどの観光業界への支援を行っていますが、その効果は未だ限定的です。

その様な中で、依然としてインドネシア国内で1日の感染者数がインドネシア国内で感染者が多いジャカルタにおいては、新型コロナウイルスのワクチン接種を加速することが急務とされており、本格的な観光業への対策や支援は州民のワクチン接種後になると考えられます。

参考WEBサイト:https://sdgs.jakarta.go.id/opini/vaksinasi-kunci-pemulihan-pariwisata-di-jakarta

インドネシアの観光業界における今後の取り組み

インドネシアの観光省である観光クリエイティブエコノミー省では、新型コロナウイルス収束後の観光業の回復のために以下の4つの戦略を掲げています。

(1) 5つの観光地、ボロブドゥール遺跡(中部ジャワ)、マンダリカ(ロンボク)、ラブアン・バジョ(フローレス)、トバ湖(北スマトラ)、リクパン(北スラウェシ)に焦点を当てたインフラ開発

(2) インドネシア国内におけるイベントを掲載したイベントカレンダー(KEN)の作成

(3) 清潔、健康、安全、環境の改善等長期持続性を重視したインドネシアの観光対策を実施するための指針=CHSEの推進

(4) デジタル技術を活用した新しい雇用の創出

観光クリエイティブエコノミー省の大臣は、上記の戦略を達成するためには、インドネシア警察との連携が不可欠であると主張しています。

また日本人観光客のあいだで有名な観光地だけではなく、マンダリカやラブアン・バジョなど日本ではあまり知られていない観光地のインフラ開発の進展が今後日本からインドネシアへの旅行者の訪問先の選択肢増加につながる可能性もあります。

新型コロナウイルスによる影響はまだ続きそうですが、新型コロナウイルス収束後の観光需要に備え、インドネシアにおける前述の観光業4つの戦略を着実に進行させることは重要であると言えます。

参考WEBサイト:https://pedulicovid19.kemenparekraf.go.id/strategi-pemulihan-sektor-parekraf-pascapandemi-covid-19/
https://kemenparekraf.go.id/ragam-pariwisata/Tren-Pariwisata-Indonesia-di-Tengah-Pandemi

 

弊社では様々な分野でインドネシア進出のサポートや、調査などを行なっております。

セミナーの開催や講師派遣なども行っておりますので、ご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。

 

株式会社インドネシア総合研究所
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