【アルビー日記】インドネシアとカンボジア間のオンラインギャンブル問題が深刻化

皆様こんにちは、インドネシア総合研究所代表のアルビーです。本日は、インドネシア国内で急増するオンラインギャンブルの現状と、それがカンボジアとの関係にどのような影響を及ぼしているかについて皆様にお伝えいたします。この記事では、インドネシアとカンボジアのオンラインギャンブルなどの違法性のある問題に関する規制や両国の関係についても深掘りします。
インドネシアにおけるオンラインギャンブルの現況

インドネシアではイスラム教が主流であり、ギャンブルは「ハラム(禁忌)」とされています。このため、多くの宗教指導者や教育機関がオンラインギャンブルを非倫理的行為として否定しています。しかしながら、オンラインギャンブルに依存してしまう人は後を絶ちません。
【急増するオンラインギャンブル参加者】
インドネシアでは、オンラインギャンブルが深刻な社会問題となっています。2024年には約8.8万人がこの活動に関与しており、そのうち約80,000人が10歳未満という衝撃的なデータが報告されています。オンラインギャンブルはスマートフォンやウェブサイトを通じて簡単にアクセスできるため、幅広い層が参加しています。
【規模と背景】
2025年初頭までに、インドネシア政府は70万以上の関連コンテンツを削除したと言われています。しかし、VPNや匿名性を利用した隙を抜けるような行為が広がり、規制の効果は限定的です。さらに、インドネシアでは電子決済や銀行口座の開設が容易であることがギャンブルへの接触を容易にしています。そして、このようなオンラインギャンブルにアクセスするのは経済的にも低所得層の人が多いのが現状です。
出典:https://finance.detik.com/berita-ekonomi-bisnis/d-7742197/miris-ada-8-8-juta-warga-ri-main-judol-sebagian-anak-di-bawah-10-tahun
https://www.antaranews.com/infografik/4572470/pemblokiran-konten-judi-online-awal-2025
オンラインギャンブルによるインドネシアでの社会的影響

【個人と家庭への影響】
オンラインギャンブルは依存症や借金問題を引き起こし、多くの場合犯罪行為につながります。例えば、若者が家族所有の財産を勝手に持ち出す、公務員が予算を横領するなどの事件が報告されています。これらは家庭崩壊や社会問題につながります。
【経済への悪影響】
違法な資金流出は国内経済にも打撃を与えています。不良債権リスクや消費支出減少が経済成長率に悪影響を及ぼしており、不動産ローン審査落ちなども増加し、貸し倒れも発生しています。インドネシア総合研究所の運営するスクールでは、入学のための融資に半数が与信で落ちるほどです。
【政府の対策】
政府は国家の委員会を設立し、教育・啓発活動や通報アプリ「Aduan Perjudian Online」の運用など多角的な対策を講じています。これらは若年層への意識向上や社会全体での監視強化を目的としています。
出典:https://www.nu.or.id/nasional/pakar-jelaskan-dampak-psikologis-dan-sosial-dari-judi-online-eVdvv
https://www.tempo.co/politik/menkomdigi-siap-terbitkan-peraturan-pemerintah-untuk-tangani-judi-online-1210133
インドネシアとカンボジアのギャンブルからみた両国の関係

カンボジアにおけるインドネシア人労働者の違法労働は、オンラインギャンブル産業を中心に深刻な問題となっています。2025年現在、約5,300人のインドネシア人がカンボジアで違法に雇用されており、その多くがオンラインギャンブルや詐欺業務に従事しているとされています。これらの労働者は、主にソーシャルメディアや友人の紹介を通じて募集され、渡航費やビザ手続きが肩代わりされることで、借金を背負って労働を強いられるケースが多いです。
さらに、カンボジアでのインドネシア人労働者の増加は急激で、2023年から2024年にかけて34%増加したと報告されています。この背景には、カンボジアがインドネシア政府による公式な人材派遣先国として認められていないため、ほぼすべての雇用が非公式かつ非合法で行われていることが背景にあるとみられています。インドネシア人労働者は観光ビザで入国し、その後現地企業によって就労ビザへ切り替えられるケースが多く報告されています。このプロセスは非合法的でありながらも簡単に行われているため、不法就労者数の正確な把握が難しい状況です。彼らの多くは顧客管理やトラブルシューティングを担当し、ギャンブルサイトへの顧客誘導を行います。月収は約10万~18万ルピア(約7万~13万円)と報告されています。これらの業務は一見高収入に見えますが、多くの場合、長時間労働や厳しい監視下で行われています。例えば、一部の労働者は1日18時間以上働かされることもあり、パスポート没収や監視カメラによる行動管理が常態化しています。
カンボジアで活動するオンラインギャンブル企業は、多くの場合、インドネシア国内で禁止されている活動を国外から運営しています。インドネシアからカンボジアへの年間資金流出額は推定61億米ドル(約6,800億円)に達するとされています。この資金は仮想通貨取引所などを経由して送金されるため追跡が困難です。
インドネシア政府とカンボジア政府は、この問題解決に向けた協力体制を構築しています。2024年には両国間で「オンラインギャンブル撲滅のための協力枠組み」が締結されました。この枠組みには以下が含まれます:
【情報共有】
違法派遣業者やギャンブル企業に関するデータベースを共有し、不法就労ネットワークの摘発をする。
【被害者支援プログラム】
カンボジアで救出されたインドネシア人労働者には、一時的な住居提供や帰国支援が実施されています。2024年末までに約2,000人のインドネシア人が帰国しました。
【共同捜査チーム】
ASEAN警察機構および国際刑事警察機構の協力のもと、両国警察による共同捜査チームが設置されました。このチームは、人身売買やマネーロンダリングのネットワークの摘発にも取り組んでいます。
出典:https://penanews.co.id/ribuan-warga-kepri-kerja-di-kamboja-sebagai-scammer-hingga-operator-judi-online/
https://www.tempo.co/hukum/nama-nama-mes-pekerja-judol-asal-indonesia-di-kamboja-mirip-situs-judi-1229579
https://news.batampos.co.id/judi-di-kamboja-pekerjakan-banyak-wni-umumnya-tergiur-gaji-besar-admin-judol/
https://www.viva.co.id/berita/nasional/1814449-kunjungi-kamboja-polri-temukan-banyak-wni-kerja-di-industri-judi-online
https://www.bp2mi.go.id/berita-detail/cegah-pekerja-migran-indonesia-dijadikan-operator-judol-kamboja-wamen-christina-instruksikan-penyelidikan
https://international.sindonews.com/read/1515719/40/cerita-mengerikan-wni-dipaksa-kerja-di-judi-online-kamboja-1736748100?showpage=all

インドネシアとカンボジア間で浮上しているオンラインギャンブル問題は、単なる娯楽産業以上に深刻な社会課題となっています。両国で発生しているこれらの問題は、一国単位では解決が難しいものがあります。ASEANレベルでの連携強化、若者へのデジタルリテラシー教育、オンラインギャンブルへの依存防止策を講じるべきでしょう。皆様一人ひとりがこの問題について理解を深め、より良い未来への一歩を踏み出す契機となれば幸いです。弊社は、インドネシアの社会問題や犯罪に関する法規制や専門的な調査も請け負っております。インドネシアにおける事業進出をお考えの方はぜひ弊社までご相談くださいませ。